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第十話 女性陣の密会 閑話(インターミッション) 

 この日のイレーナは、信希と共に王都に向けた旅路に必要な食料と物資を探す買い物に出かけていた。


「信希、この保存食を買っておきましょう」

「見たこと無い食べ物だね、どんな保存食なの?」

「野菜を瓶詰めにして発酵させたものです」

「ほー、ピクルスみたいなものかな」


「…?試食もできますから食べておきますか?旅路で苦手だと分かったら大変ですし」

「ありがとう、たすかるよ」


 信希はそう言うと、保存食のピクルス?を試食する。


「どうですか?」

「ちょっと癖はあるけど、全然食べられるよ。栄養価も高そうでいいね」

「では買っておきましょう」


 こうして普通に会話している時は、とても魅力的な男性なんだけど…。

 いつも『ケモミミと女性』のことになると、途端に別人に感じてしまうような?ワタシも自分の事なのに不思議なくらい怒りの感情が込み上げてくる。


「嫉妬…じゃないよね…」

「イレーナ?」

「い、いえっ!何もありませんっ」


「そう?他に必要なものはあるかな?」

「そうですね、山岳地帯で一晩か二晩過ごすことになりますから…、防寒装備は軽くでもいいので揃えておいた方がいいかもしれません。洞窟などは道から外れていますから、その分危険が増えてしまいます」


「それは必要だね。イレーナは旅慣れてるみたいだけど、どんなのを使ってるの?」

「ん-、私の場合ですが、外套だけで事足りますから、あまり参考になりません。魔法で外気温調節できますから」


「イレーナは魔法を使えるんだね」

「ええ、強力な魔法を行使することは出来ませんけど…」

「今度でもいいから、時間がある時に魔法のこと聞かせてくれない?」

「もちろんいいですよ」

「ありがとう」


 信希のワクワクした子供のような笑顔に思わずドキリとしてしまう。自分でも顔が熱くなる感覚を覚え鼓動が早くなる。

(え…もしかして…)


「もう宿に戻る?イレーナが良かったらお茶でもしていく?」

「ひゃいっ!?」


 あれこれ考えている途中で、急に声を掛けられてびっくりしてしまう。


「だ、大丈夫?」

「だ、大丈夫です。まだ夕飯まで時間もありますし、宿屋近くの喫茶店に行きましょう!」

「じゃあ行こうか」


 そのまま喫茶店に入り、王都までの旅路の説明をする。

 これまでのことなど、少し雑談をして宿屋の夕飯が近くなってきたので宿へ戻ることになった。


 ──。


 みんなが集まって夕飯やお風呂を済ませて、信希は一人部屋に、他の女性たちは大部屋に集まって雑談をしている。


「イレーナ殿、信希と買い物してる間に喧嘩しなかったか?なんだか夕食の時はよそよそしかったが」

「け、喧嘩なんてしていません…」

「そうか?何かあったような気がするがの」

「…」


 ミィズさんは少し…、いやかなり鋭い。それによくワタシのことを見ている…。


「なんじゃなんじゃ?信希さまの話かの?」

「イレーナおねーちゃんが信希のこと気になるみたーい」

「ちょ!?レストさん、やめてくださいっ!」


「なんで?好きなら好きって言えばいいの」

「そ、それはそうですけど…」


「ふふっ、信希さまはケモミミ様には優しくしてくれるからの、心惹かれるのは当然よな」

「うぅ…みんなして…そういうつもりじゃないのに…」


 なぜか女性陣の全員が、ワタシが信希のことを好いていると思っている…。

 確かに魅力的な男性ではありますが、恋愛感情じゃないと思っている自分がいるのもまだ事実で…。


「そういえば、イレーナ殿が『信希の気になることがある』と言っていたのは何のことなんじゃ?」

「ああ、それは…御使い様の可能性があるのかと思っているのです」

「ふむ?御使い様か、本人には言わない方が良い感じか?」

「そうですね。本人には自覚がないでしょうし、普段使っている『不思議な力』からも可能性はかなり濃厚になってきていますけど」


「御使い様ぁ?」

「それってなぁに?すごいの?」

「そうじゃ、神に近しい存在って感じかのぉ。シアン、レスト、ポミナ、ユリアもこのことは信希には内密にな?」


 よく分かっていなそうな彼女たちに向けて、ミィズが説明してくれる。


「はーいなの」

「わかりました」

「了解しました」

「もちろんじゃ」


 信希本人に、この話をしない理由は他にもある。この探られているのを不快に感じられると、逃げられてしまう可能性が十分考えられたから。

 ワタシ自身の役目のためにも、もうしばらくの間、信希の近くで彼の力と能力を確認していく必要がある。


「まぁ、それはさておき…。早くアプローチしておかねば、他の女性陣に信希は取られてしまうかもしれんぞ?」

「ま、またその話…」

「幸い皆独り身じゃ、この際に全員まとめて信希にかわいがってもらえばよい」

「な、なにを言って─」


「ボクはそのつもりっ!」

「レストも信希と一緒に居るぅ」

「出来れば私も…」


「ほらほら、イレーナ殿?大変じゃのぉ」

「も、もうやめてぇ…」


 ミィズはニヤニヤと笑いながらワタシのことを冷かしてくる。


「明日は早くから出発ですから!もう寝ますよ!」

「はいはい、今はそれでもいいのかもな」


 明日は王都に向けて出発する─。

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