The impact of science on society
俺の席は3階か。
後ろから2列目のベース側の真ん中。本当に端席だ。てか、詰めすぎだろ。マスクがなければ、本当に疫病下であることを忘れてしまう。
まあ、いいや。どうしても観たいわけでもない。
これなら、座っていても別に構わないだろう。
実際、スーツ着たままで公演中は座って聴いていた。これぐらいがいい。音楽ぐらい好きに聞かせてくれ。
席の通路側には、二人組がすでに座っていた。だいぶ早く来たと思ったが、なんだか、席はほとんど埋まっている。
この二人組は今回のツアータオルを持って、主にセットリストの話をしていた。
聞こえてくる話から、男性の方がファンのようだ。
というか、以前もそうだったが、このギタリストの女性ファンってほとんど見たことがないし、会ったことがない。
まあ、間違っても「美形」ではない。歌声も、どうやっても甘さはない。「アイドル」的要素をここまで削ぎ落としたアーティストもなかなかいない。荒削り感としか言えない「尖った」感じ。
男性は、ギタリストのいわゆる出身であるバンドにとって「この場所は大切な場所だった」と女性に話をしている。だから、セットリストが変わるのではないか、と。
いや、しかし、このギタリスト。ツアー中はまず、セットリストを変えない。変えても一曲かそこらで、それもアンコールとかだ。
変えてくるのは、ギターアレンジ。
確か、同じギターアレンジがほとんどないはず。だから、同じ曲、CD曲しか興味がない観客層には人気があんまりない。
まあ、そもそもの人気が、とは間違っても考えない。
というか、バンドのギタリストでここまで来たんだ。
オリパラに2回出て、それなりにみんなが知っている曲をいくつも作って、ギタリストなのに作詞賞を貰い、昨年度の紅白には単独で、「ギタリスト」ではなく「ヴォーカリスト」として出場したのだから下手なバンドのヴォーカリストより余程、伝説級だろう。
まあ、はっきりいえば悪いスキャンダルも多い。バッシング含めて、なんだかんだで良くも悪くも話題が絶えない。見栄え含めて、identifyはバッチリ確立されている。そう、
・・・誰もがセットで、どうしても比較してしまう対象を変えれば、本当に成功した凄いミュージシャンだということに異存はない・・・
はず。「2chまとめ」まで、セットで覚えているミュージシャンでdefault扱いである。
いい加減ファンは解散後の方が圧倒的に長いことを認めたら如何か、と調べていた時は本気で思ったが、理解はする。
ファンではない俺ですら、こうして、比較することから逃れられなかったのだから。