世界環境デー
五月三十日は、ゴミゼロの日です。
本日より六月五日の世界環境デーまでの一週間を環境週間として、美化運動や廃棄物減量に取り組む期間とされています。
また六月は環境月間として「事業者及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高める」期間です。
ゴミゼロ、ゴミ削減の方法としては「3R」と言われていました。
・リサイクルrecycle:排出された資源(またはエネルギー)を再度回収して利用すること。
・リユースreuse:一度使用した物資を再利用すること。
・リデュースreduce:ゴミを増やさないこと。
以上の取り組みの内、リサイクルやリユースについては世の中で浸透しつつある概念でしょう。
問題はリデュースですね。
リデュースの最も簡単な方法は過剰包装を取り止めることでしょう。諸外国では商品を包むのは一重、多くても二重までです。
衣類や日用品などは包まず、そのままで渡されます。食品や飲料であれば保存容器に入ったままの姿で渡されます。
こうした取り組みを「素っ気ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、環境保護や省エネ対策と考えて頂けると抵抗感は弱まるでしょう。
私は更に踏み込んで、全ての物資は注文販売で良いと思っています。衣類は最新技術では個人を撮影した画像を用いて3Dモデルを構築し、衣服のデザインを重ねてオーダーメイドに近い製品を販売するところまで来ています。
不要な包装の撤廃と、オーダーメイドで製造することにより、廃棄物を減らすのが理想です。
こうして環境に配慮した物流や製造を突き詰めてゆくと、江戸時代の生活様式が参考になるでしょう。
江戸時代の生活はリユースとリサイクルで、徹底的に物品を使い倒す社会です。落語などではケチな紙の使い回しが語られています。
紙に限らず、布の使い回しも現代とは感覚が違いました。例えば、衣服を新調する時は反物屋で生地を購入して、それを仕立屋に持ち込んで誂えます。現代でいうオーダーメイドの販売方法です。
そうして新調された衣服を本人が着古すと、弟妹や親戚・近所の年少者へ「お下がり」として渡されます。つぎはぎした衣服を着用する習慣は昭和三十年代までは、ごく当たり前でした。
丈直しや仕立直しなどを経て衣服として使えなくなると、次は座布団へと転生します。
その座布団もすり切れて使い物にならなくなれば、今度は雑巾へと華麗な転身を果たします。雑巾として隅々まで清掃に使われ、用を為さなくなると、最期は燃え盛る炎の竈に放り込まれて生を全うしました。
少ない資源を有効活用する精神こそが、大江戸百万都市を支えていたと言っても過言ではないでしょう。
江戸の人口が百万人を迎えた十八世紀半ば、ロンドン(ハノーヴァー朝ジョージ二世治世)は七十万人弱、パリ(ブルボン朝)は六十万人弱と、江戸は世界最大の都市でした。
近代化が進んだ十九世紀半ば、明治維新の前にはロンドン(ハノーヴァー朝ヴィクトリア女王治世)が二百万人を超え、パリも百万人超、江戸が百五十万人前後と推定されています。
このように循環型社会として発達した江戸城下も、明治維新と戦災を経て、更に二度のオリンピックを開催しました。この間にアメリカ型の大量生産大量消費の経済が浸透し、少ない資源で多くの人口を賄う循環型社会は退化してしまいました。
現状、東京都は太陽光発電パネルの設置を新築家屋に義務化する条例案を発出していますが、私は愚策だと思います。
新築家屋の屋上に太陽光発電パネルを設置するよりも、路上へ屋根として設置すれば夏場の日陰、雨天時の雨よけとして機能するでしょう。仮に突風や台風などで破損するおそれがあるとするならば、それは新築家屋の屋上でも同じことです。
私有地に設置を義務化する前に、公用地に普及させるのが確実かつ迅速な対応が可能となるでしょう。
しかし私は太陽光発電パネルの設置について、不愉快な事例も見ています。それは森林破壊や環境破壊を伴う設置の仕方です。温室効果ガスとされる二酸化炭素を吸収する森林を切り拓いて太陽光発電パネルを設置するのは本末転倒の暴挙です。太陽光発電パネルを設置しても良いのは人工構造物の上であって、環境破壊や森林破壊を許すような現在の施策には反対の立場です。
太陽光発電パネルよりも高い発電効率を持ち、温室効果ガスを全く排出しない発電方法としての原子力発電や水力発電を基幹発電所として整備し、太陽光発電パネルは建築物などの人工構造物の上にのみ設置を許可して、不足する発電量を補う形態が理想です。当然ながら火力発電所は全廃するか、新技術を用いる石炭火力発電所のみの稼働とします。
太陽光発電パネルが補助施設にしかならないのは、豪雪地帯などでは冬場の発電が全く期待できず、積雪などによる損傷が懸念されるからです。私も太陽光発電パネルの設置を検討しようと地域別の発電効率や減価償却に係る年数を調べたのですが、設置費用を回収するには順調に行って二十年もの歳月が必要だそうです。太陽光パネルの法定耐用年数は十七年ですから、設置費用の回収は難しいかもしれません。
それでも定期的に点検したり補修すれば二十年以上は稼働可能らしいのですが、そうした点検費用、修繕費用まで回収しようとすれば更に長い期間の稼働が必要となりますので、太陽光発電パネルの費用回収は絶望的と言って良いでしょう。
そのような費用対効果の薄いものを設置義務化する東京都の条例は異常です。現在、都庁では「六月二十四日まで」パブリックコメントを受け付けているらしいですので、忌憚のない意見をドシドシぶつけて下さい。賛否両論あるのが普通と都知事も仰っていますから、太陽光発電パネルのことを良く調べて意見を述べるのが民主主義の根幹です。
日本国民が環境問題に真剣に向き合う機会になれば幸いです。