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十七、

「かわいかったね、二人とも」


 神楽と吉野の二人と別れた後、碧斗は深世と二人で一ノ瀬家までの静かな道を歩いていた。深世はうれしそうに笑う。なんだか深世のそんな表情を久しぶりに見た気がした。


「……深世はすごいな。吉野さんを助けてしまうんだから」


 あの美しい舞は、一朝一夕ではできない。きっと努力に努力を重ねた結果だろう。


「鬼隠しの巫女だから、当然だよ。でも、お姉ちゃんはもっとすごかった」


 深世と姉の歌世のことは、少しだけ伊冴耶から聞いていた。二人は、仲が悪かったのだろうか。深世の言葉からは、尊敬さえ感じるけれど。


「お姉ちゃんはね、もっと言霊を上手に操っていたし、舞も上手だった。私なんかよりもずっと霊力も高かった。村の人たちも、お姉ちゃんに鬼隠しの巫女を務めてほしかったんだろうなぁって思うよ」

「そんなことないよ。深世だってじゅうぶんすごいよ。さっきは、かっこよかったし」

「ありがとう。でも」


深世は言葉を切り、真剣な顔をする。


「もう私になんて優しくしなくていいよ。伊冴耶さんに聞いて分かったでしょ? 私は、碧斗に想ってもらえるような人間じゃないんだよ」


 突き放すように、深世は言う。


「お姉さんのこと? 誰にでもそういう感情はあるだろ」


 歌世が死んじゃえばいいと言ったことを、深世はずっと悔やんでいるのだ。しかし、嫉妬や嫌いという感情は、何も特別なことではない。


「誰にでもあるほど、軽くないんだよ。私の言葉には言霊が宿るから。私はあの時、知っていて言葉に霊力を託してしまったの。だからお姉ちゃんの死期が早まってしまった。花迎ノ儀だけで、命を落とすことはなかったかもしれない。――わだかまりだけはずっと消えなかった。心の中にずっと残り続けてた。どんなに二人で時を重ねても、消えるどころか、罪の意識がずっしりと重くなるの。私が幸せになってもいいのかって。でもそれを知られるのが怖かった。みにくい私の心を知られるのが嫌だった」


 碧斗は今まで深世のことを知らなかった。知った気になっていただけだ。姉のことや、村のことを、一人で苦しみながら抱えていたことを。


「でも、やっぱり罰は受けないといけなかった。私が鬼隠しの巫女として右京さんと結婚するのは――幸せにならないため。幸せになってはいけないから」

「どうして……そこまで。なんで深世がそこまで罪を被らないといけないんだ。歌世さんがそのせいで亡くなったなんて、俺は思えない!」


 深世はうつむいた後、空を仰いだ。まるで涙をこらえているかのように。


「……駄目だなぁ、私。碧斗を遠ざけておいて、こうしてそばにいると離れたくなくなっちゃう。メールも、実家に帰る、なんて、いかにも追ってきてほしいって言ってるようなものだよね。ほんと、嫌な女だよね」


 碧斗が声をかけるよりも早く、深世はくるりと振り向く。


「もう、秘密にしておくのはやめる。全部話すよ。私とお姉ちゃんのこと。そして右京さんとのこと」


 深世は切なげに、儚く微笑んだ。


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