八、
疲れた顔で一ノ瀬邸近くにさしかかると、大門から出てきた右京と鉢合わせてしまった。単身赴任のはずではなかったのか。
(う……)
と思ったが、いちおうは雇い主。きちんと挨拶はせねば。
「こんにちは」
笑顔がぎこちなくなってしまう。
「やぁ碧斗くん。どうだい、仕事のほうは」
優しげな微笑みだ。が、表面と心がまったく違うらしい。
「ええ、なんとかやっています。村の人たちはみんな親切ですから」
言動と心が裏腹。こちらもいい勝負だろう。
「それはよかった。がんばって。応援してるよ」
ぽんっと肩を叩かれる。
「はい、ありがとうございます。あの、一つ聞いてもいいですか」
碧斗は思い切って尋ねる。
「うん?」
「どうして、俺を雇ったんでしょうか」
碧斗は挑戦的な目を向けた。
「深世を、奪い去ってしまうかもしれないのに」
右京は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに穏やかな微笑みに戻す。
「君には、無理だよ」
短く断言した後、続ける。
「それに、君が一番印象に残ったんだ。面接は、インパクトが大事だと僕は思っている。みんな一緒ではつまらない。――話は以上かな。急ぎ仕事に戻らなくてはいけなくてね。では」
右京は微笑んで、颯爽と去った。
(ぜんっぜん余裕なところがむかつく!)
見てろよ、と碧斗は思う。宣戦布告はした。無理だといわれて、あきらめてたまるか。




