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四、

 村役場までは徒歩で十五分ほどだった。レンガ造りで、割と立派な建物だ。


(役場なんてあるんだな)


 よく考えてみれば、当たり前だ。

 おかしな村だ、役場もどんな不可思議なことがあるのかと思ったが、何の変哲もない、普通の役場だった。何だか拍子抜けだ。


(怪異って、一体何を調べればいいんだ?)


 碧斗は霊感があるわけではないし、こうして役場に来てみたけれど変わったところはない。住民課の窓口があり、数人の職員たちがパソコンに向かっている。


 普通というものが、こんなにも安心感があってありがたいことだとは。


 しばし普通の心地よさに浸りつつ、役場内を歩く。すると、渡り廊下が続いているのが見えた。ガラス張りで、とても明るい。


 進んでいくと、開けた場所に出る。図書館になっているようで、丸く形どられた空間に図書棚がセンスよく並んでいる。


「へぇ。結構新しいのかな」


 人の姿は見えない。碧斗は、ガラスの扉を開けた。

 何となく棚を見て回り、とある一角で碧斗は足を止めた。郷土資料が並ぶ棚だ。


「鬼隠し村の歴史……」


 気になり、中を開いてみる。

 鬼隠し村はその昔、地図にない村だったらしい。江戸時代より、特殊な能力を持ち、鬼の子と呼ばれ蔑まれた人々が逃げ延びる地だった。


 鬼隠しの巫女は彼らを束ね、鎮める役目を担う者として代々村人から適任を選出するようになったという。


 巫女は、二年ほど不在だと言っていた。そのせいで怪異が起こりやすく、統制が取れないのだと。


(厄介な村だと思っていたけど、悲しい歴史のうえで成り立っていたんだな)


 しみじみと思っている時だった。背後から声がかかる。


「あの~」


 ぎくりとして振り向くと、ふわりとした茶色がかった髪の、見知らぬ青年が控えめに立っていた。私服に、青い紐の名札を首から下げている。役場の職員らしい。


「もしかして、一ノ瀬さんのところの新人さんですか? 深世さんの元カレで、未練たらたらで追ってきたけど、結局振られてしまったっていう」


 油断しきったっところで、いきなり大砲が飛んでくる。しかし悔しいかな、本当のことだった。


「はい、そうです」


 碧斗は開き直って返事をする。が、内心この野郎と思っていた。


「あ、すみません。みんな噂しているのでつい。怒らないでくださいね」

「はぁ」


 碧斗は本を棚に戻す。もしかして感情が顔に出てしまっていただろうか。相手は一切悪気を感じさせないやわらかい雰囲気だった。


(というかみんな噂してんの……?)


 村の世間は狭い。

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