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鬼隠し村のあやかしな人々〜花咲かす君をさがして〜  作者: ひいろ
一、花咲かす君を捜して
3/67

二、

 深世の実家の場所は知っていた。前に、ちらっと聞いたことがある。北関東の山間部にある、鬼隠おにかくし村。変わった村名だなと思い覚えていたのだ。調べたら、ちゃんとマップに載っていた。小さくひっそり載っているばかりで、特に目立った観光スポットでないようだが、温泉があるらしい。


(温泉がわいてるのに、観光地じゃないんだな……)


 季節は二月半ば。とにかく寒さもひどい。道は凍っているし、辺りにも結構な雪が積もっている。


「ほんとこっちで合ってんのかな」


 マップを確認しようとスマホを見遣ると、なんと圏外。さっきまで見られていたのに。

 いつの間にか雪がちらついていた。あっという間に雪が景色を白く染めていく。風も吹き始めた。前も後ろも真っ白だ。


(え、なんで。ホワイトアウト?)


 極寒の中で、じっとしていては凍死だ。


(なにこれひどすぎない? とにかく、早く村を見つけないと)


 踏んだり蹴ったりとはこのことである。


 碧斗はゆっくりながら向かい風を進む。顔に雪が張り付く。このままでは本当に凍ってしまう。


 凶器のような風に耐えつつ進む碧斗の目に、赤い鳥居が映った。鮮やかな緋色が、白の景色に浮かび上がる。


(あの世の入り口かな)


 碧斗は誘われるように鳥居に向かった。屋内に入らないと、本当に死ぬ。鳥居の向こうに風雪をしのげる場所があればいいけれど。


 碧斗はやっとのことで鳥居にたどりついた。稲荷神社のようだ。狛犬ではなく狐の像が目を光らせている。


 朱塗りの拝殿がまるで救世主のようにそびえている。


(この中に避難しよう……)


 罰当たりかもしれないが、背に腹は代えられない。碧斗は拝殿の扉に手をかけた。


(鍵、かかっていませんように!)


 碧斗は祈りつつ扉を開く。観音開きの扉は、音をたててゆっくりと開いた。


「失礼いたします!」


 碧斗は一礼すると、一歩中へ足を踏み入れる。とたんに突風が外から吹き付けてきた。碧斗はすぐに扉を閉める。


「はぁ、死ぬかと思った……」


 雪の嵐だ。おさまるまでここにいさせてもらおう。


「どうなってんだよ」


 しかしここも相当寒い。拝殿内は薄暗く、がらんとしている。


(何も、ない)


 拝殿というのは、こういうものだったか。

 碧斗が首をひねっている時だった。ぼうっという音とともに、勝手に燭台に火がともった。

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