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鬼隠し村のあやかしな人々〜花咲かす君をさがして〜  作者: ひいろ
四、八尾比丘尼の薬
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三、

「鈍い男ね」


 黒髪を艶っぽくかきあげながら、ため息まじりに謎の美女は言う。


「俺を引きずり込んだのはあなたですか」

「そうよ」

「そうよ、じゃないですよ! 死ぬところだったんですからこっちは!」

「だから助けてあげたじゃない。私の歌声を聞いていいのはイケメンだけ。故に、君のことは生かしてあげたの。喜びなさいな」


 にっこりと笑む仕草も美女なので妙に色っぽい。


「喜べと言われてもうれしくないですし」

「何ですって? 私の術を解いてあげてもいいけれど?」

「すみませんでした」


 おじぎ九十度。まだ死にたくない。溺死とか本当に嫌だ。


「あの。もしイケメンじゃなかったらどうなってたんですか?」

「沈んでいたかしらね」


 相手はこともなげに言ってのけた。やっぱりこの村、こわすぎる。碧斗はイケメンでよかったと胸をなでおろす。


「しかし君、顔はいいのに、何だかいまいちよね。もったいないわ」


 その台詞、この村に来てから何度言われただろう。鬼隠し村の人たちは、なぜか碧斗に冷たく当たる……。


 もう碧斗のガラスのハートは割れかけていた。


「もしかしてあなたが、伊冴耶さんですか?」

「そうよ。苗字は八尾やお。君は、この村の人間じゃないわね。なぜ私の名を知っているの?」

「知り合いを訪ねて来たのですが、わけあって少しの間この村に逗留することになりまして。右京さんのところの式神の手伝いをすることになったんです」


 かなり簡単に説明をした。


「ああ、あなたが……」


 熱っぽく、伊冴耶はつぶやく。知っているのかもしれない。この村ではなんでもかんでも筒抜けなのだ。


「それで、私に何の用?」

「薬をもらってきてほしいと言われました」


 何の薬かはきいていなかったけれど。


「そう」


 伊冴耶は興味なさげに返事をしてから、碧斗をじっと見つめた。


「な、何ですか?」


 だんだん寒くなってきた。息ができるとはいえ、ずっと水の中にいれば体も冷えてくる。


「君は、私のことがどう見える? 人魚だと思う? それとも――」


 伊冴耶は甘えるように問う。


「妖怪」


 碧斗が即答すると、伊冴耶は無言で指を鳴らした。するとたちまち口の中に水が入ってきて――碧斗は気を失った。

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