六、
碧斗は民宿かまくらに戻ると、力なく畳に倒れ込んだ。歩いてきた道のりはまったく覚えていない。
「あらぁ、どうかしたの?」
「……」
清瀬が心配げに尋ねてくるが、何も答えられなかった。
圧迫面接もいいとこだ。もともとメンタルが弱い碧斗は打ちひしがれていた。
「どうせ……俺なんて」
駄目男なのだ。深世と付き合うに値しない、薄っぺらい男なのだ。横たわりながら、いじいじと畳を指でなぞる。
「もう、元気出して? 今晩もおいしいお料理作ってあげるから」
「食欲なんてありません……」
帰りたい。でも帰れない。深世がいない東京で生きていける気がしない。おまけに帰れば死ぬと言われているのだ。踏んだり蹴ったりである。
「ちっ」
幻聴だろうか。今、舌打ちが聞こえた気が……。
「だらしないねぇ、男のくせにうじうじと! いいのは顔だけかい。それだから愛想つかされるんだよ」
清瀬がどすのきいた声でいきなり怒鳴り始めた。碧斗は驚き怯む。さすが、神楽の母親だけのことはある……。
「そうだよ……どうせ俺は顔だけなんだ……うう」
「あっそうかい。ならもうあきらめて、明日には荷物まとめて帰るんだね」
容赦がない。少しくらい優しくしてくれてもいいと思う。
「帰ったら死ぬんです……佑に言われました」
「それはご愁傷さま」
清瀬が去っていく気配がした。ひどい。冷たすぎる……!
「こんな村大っ嫌いだぁぁぁ!」
いろいろとショックで起き上がれず、瀕死で寝転がっているうちにうとうととし始めた時だった。
「おい、起きろ」
背中を蹴られ、現実へと引き戻される。目を開けると、禅が嫌そうな顔をして見下ろしていた。
「なんでお前がここにいるんだよ。プライベート空間だぞ。何の用だよ。笑いに来たのか。つーか、今蹴ったろ」
「ぐだぐだうるさい奴だ。……採用だ。貴様が住み込みで働く部屋に案内してやる」
「え?」
「何を呆けている。明日からさっそく働いてもらうぞ」
耳を疑った。あんなさんざんな面接だったのに、合格したのか――?
「なんで……?」
「右京様の言いつけだ。理由など俺は知らん」
「でも、俺なんかが……」
「つべこべ言わず、さっさと来い!」
禅は碧斗の襟をつかむと、無理やり引っ張っていく。あっという間に階下の食堂まで引きずり降ろされた。
「離せ! 嫌だ、行きたくない! 俺は深世を幸せにできない男なんだぁぁ!」
柱につかまる。何事かと、清瀬が食堂のカウンターから顔を出した。
「清瀬さん、助けてください! お願いします!」
「行ってらっしゃい」
清瀬は笑顔で手を振っている。駄目だ、言葉が通じていない!
「いい加減にしろ!」
禅が碧斗のみぞおちに拳を喰い込ませた。
「うっ……! なんで……こんな目に」
碧斗はがっくりと気を失った。




