五、
天沢碧斗。
すべての面接を終えた後で、右京は心の中でつぶやく。深世と付き合っていた男。
「ふっおもしろい」
扇子を手の平で弄びながら、笑いがこみあげてきた。縁からはよく手入れされた庭園が一望できた。
「禅」
後ろに控えている式神を呼ぶ。彼は右京が使役している式神だ。あまり頭はよくないが主には忠実で、命令を着実にこなしてくれる。
たとえどんなに非情なことでも、彼ならばためらわず実行してくれることだろう。従わなければ消すだけのこと。
式神とは、それだけの存在だ。情などは必要ない。ただ、人型の式神を作るのにはなかなか体力と労力、そして時間がいる。手間を省くためにも、禅にはよく働いてもらわねばならない。
「式神補助の使用人には天沢碧斗を採用する」
「しかし奴は、深世様に未練がある様子です。そんな輩を深世様と近い場所に置いてよいのですか」
うるさいと視線を向けると、禅ははっとして頭を垂れる。右京は閉じた扇子を弄びながら、雪に染まった庭園を見つめた。
「だからこそ、奴にしかできない仕事がある」
深世が本当に好いた男ならば、実に都合がいい。
「というと?」
禅がおそるおそる口を開く。
右京は口の端を上げると、扇子を一振りする。鳳凰が描かれた美しい面があらわになった。
「花迎えまで、奴が生きていることができるかどうか」
「右京様……まさか」
つと、禅に視線を這わすと、彼は真っ青な顔をしてうやうやしく頭を下げた。
右京は扇子で口元を覆う。自然と笑いがこみあげてくる。
「くく……」
禅は微動だにせず、頭を下げたままだ。
右京はぱちりと扇子を閉じる。
「恨むなよ、天沢碧斗。恨むならば、あの女を恨め」
右京は微笑みをたやさぬまま、縁を歩き出すのだった。




