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一、

 碧斗は佑を抱えながら、民宿かまくらの階下にある、食堂きつねに駆け込んだ。


「清瀬さん! 救急車を、救急車を呼んでください!」

「あらあら、一体何事?」


 厨房から出てきた清瀬は佑を見ると、思い当たるような顔をした。


「まぁ、(たちばな)さんとこの」

「それよりも……救急車を」


 呆然としている碧斗に、ふだんののんびりとした雰囲気から一転、清瀬はてきぱきと指示を出す。


「救急車なんて必要ないよ。二階の部屋に布団をしいて寝かせてあげてちょうだい。親御さんには私が連絡しとくから」

「え……はい」


 碧斗は言われるがままに従った。

 



 しばらくして佑は目を覚ました。間もなく迎えにきた母親とともに、彼は元気に帰っていったのだった。何事もなくてよかったのだが、慌てていただけに拍子抜けした気分だった。


 清瀬によると、村には能力者と呼ばれる人々が何人もいて、佑もその一人なのだという。佑はまだ中学生なので、能力を使えばそれだけ体力を消耗し、突然眠ってしまうことが多いそうだ。彼の能力は、近いうちに死ぬ人が分かる能力だ。


(つら……)


 そんな能力持っていたら、人に会うのが嫌になりそうだ。なのに、佑は平然としている。苦労も多いだろうに。


 そう思ったら、佑に尊敬さえ抱いてしまうし、碧斗のために必死で引き留めようとしてくれたのにも感謝しなければならない。


 碧斗は、もうどんな人が出てきても驚かないと心に決めた。

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