四、
よくよく話を聞くと、佑は深世と小さい頃から親交があるらしかった。
近所ということもあって、可愛がってもらっていたらしい。年上のお姉さん受けしそうな、かわいい顔をしているが、言うことは割と辛辣である。
辺りは本当に静かだ。民家がぽつりぽつりと建っているが、人一人歩いていない。まるで雪景色の中に世界が閉じこめられているようだ。
「深世さんは今大事なときだから、忙しいんだよ。僕も深世さんが帰ってきてから、あんまりお話してないな」
「忙しい? 何で」
「決まってんじゃん。巫女なんだから」
「またそれか」
深世が村の大切な巫女様だということは分かった。特別な能力を持っていることも。
「巫女って神事を行うって、民宿の清瀬さんにきいたけど。結局何をするの?」
「えーお兄さん知らないの? 恋人だったのに?」
ぐさっと地味に刺さる。
「う、うん。知らないんだ。だから教えてくれる?」
笑みがぎこちなくなる。とにかく、この少年の機嫌を損ねないようにしなくては。せっかく深世の居場所を知っているのだから。
「かわいそうだから教えてあげるよ。三月のはじめにね、花迎ノ儀っていう神事が始まるんだよ。季節ごとに神事があって、その時に鬼隠しの巫女が舞を披露してくれるんだ」
「へぇ」
深世の舞、かなり見てみたい。
「村ではずっと昔から、巫女様がいるんだ。でも、ここ二年間は不在で、みんな不安がってたんだ。だけど、今回深世さんが選ばれて、みんなほっとしてる。花迎ノ儀で、初めて巫女舞を披露するんだ。深世さんはそのために、毎日御神木にお祈りをしに行ってるんだよ」
知らない人の話を聞いているみたいだった。深世はそんな話少しもしなかったから。
「それってさ、すごいことなの?」
「もちろんだよ! 誰でもなれるものじゃないもん。舞が一番上手で、霊力が高くないと。村のみんなの憧れなんだ」
佑の目はきらきらと輝いていた。
「もし、僕が女の子に生まれていたら、巫女様を目指していたかもしれないよ」
知らなかった深世の一面がどんどん増えていく。深世の巫女舞は、それはさぞ美しいだろう。ふと見ると、佑がじと目でこちらを見ていた。
「な、何だよ」
「いやらしい顔してるなぁって思って」
「そんなことはないぞ!」
碧斗は真顔を作る。なんて勘のいいガキだ。しばし歩いて、佑は足を止めた。
「ここだよ。この小道を行くと、大きな御神木がある。深世さんはここで祈っているはず」
人が一人通るだけの幅の道だ。きちんと除雪されている。それだけ大切にされている場所なのだろう。




