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第八話 ボッたくりには要注意

 ……誰だ? 田中って。


「おい、田中って誰だよ答えねぇと木っ端微塵に吹き飛ばすぞマザコン野郎」


 ちょ、いきなり暴言かよ! 確かに気になるけどその言い方はないよ! ってかコイツマザコンだったの?

 と思っていると、マッシュ(マザコン疑惑)が口を尖らせて言った。


「失礼な! ボクはシスコンですよ」


 いやどっちにしろコンプレックス持ちかよ! マザーでもシスターでもどっちでもいいわ!

 何「全くもう」って顔してんだよ! こっちが「全くもう」だよ! 

 つーか田中について教えろ。てめーが何コンだろうがそんなの関係ねぇんだよ。……今、オッパッピーが頭に浮かんだ人、正直に手を挙げよう。……てめ、シスコン、なんで「ピーヤァ~」って言い出したんだよ!? 


「おい本当に吹き飛ばすぞシスコン」


 海星がマッシュの首を掴んで言った。マッシュは大人しく頷き、蒼白い顔で説明を始めた。


「田中……本名"田中三郎"はこのゲームの開発者です」


 そうなのか。田中は開発者かー……どうでもいい! 

 

「田中賞とは、全国で1台だけ、"本当の"ぱられるくえすと……つまり、ゲームの世界へ飛んだ気分ではなく、"ゲームの世界へ飛ばされる"ものを当てること。これが田中賞です」

「何だそれ。ありがた迷惑なんだけど。死ねよ田中。俺らが死んだらどーすんだよ」

「いえ、ちゃんと見返りもありますよ。田中賞受賞者がゲームをクリアすると、何でも願いを叶えてくれる、と聞いたことがあります。噂なので本当かどうかは知りませんが」


 ……! 何でも願いを叶えてくれる……!

 面白くなってきたじゃねぇか。田中三郎からの挑戦状、確かに受け取ったぜ!


「海星……」

「……ああ」


 俺たちは互いを見つめ、同時にゆっくりと頷いた。

 そう、俺たちの願いは――。


「「シュ億ーク万リ長ー者ムをたにらふく食なべること!」」


 ……?

 かみあって……無かったよね? 

 海星……なんて言った?

 幼稚園の時、「二人で億万長者になろう」って……言わなかったっけ?


「おい海星、今なんて言った? よく聞き取れなかったけど」

「え? "シュークリームをたらふく食べる事"って言ったけど」


 アホかァァァァァ!

 何故にシュークリーム!? 約束は!? つーか億万長者になったらシュークリームなんていくらでも食えるだろうが! 勿体ないわ!


「ハイハイ、もうなんでもいいでしょ。さっさとアンベッグに行って宿屋を探そうね~」

「てめぇ何だその口調! ケンカ売ってやがんのかああァ!? ブチ殺すぞ腐れシスコンキノコ野郎!」

「ひ、酷い! それはないんじゃないですかァ?」

「るせぇ、二度と口を開くんじゃねぇ! 口を封じられたくなかったらな!」


 ……もうその辺にしといた方が……。

 ちょ、マッシュ涙目なんだけど。

 ちょっと可哀想かなぁ。

 しかし、次の瞬間。


「も~、二度と口を開かないで下さいよ、シスコンの流月さん」

「死ねェェェェァァァァァァァ!」

 

 何で俺だァァァァァ!? ふざけんじゃねぇ! 海星はてめぇに言ったんだろうが!

 てめぇマジ調子こいてんじゃねぇぞ!? 本気でブッ殺すぞ!?




 ……さっきは取り乱してしまった俺。だがもう大丈夫だ。ちゃんと正気に戻った。

 俺たちは、今、アンベッグの宿屋へ向かっている。場所は地図に書いてあったから大丈夫だ。と、そんなことより。

 ……この街、以上に暗いんですけど。いや、光の方じゃなくて、活気がないとか、そーいう。

 住人の目は例外なく虚ろだし、店があるかと思えば、店主は死にそうだし、天井に変な縄はつるしてあるし。よく見たら街の至るところに丸く括った縄が吊るされてるし。……その中で以上に宿屋が派手だし!?


「んだよ"始まりの街"だってのに辛気臭ぇところだな。こっちまでテンション下がるわ」


 お前は多少テンション下がったくらいが丁度いいと思うぜ。

 

「まあ、暗いのは気にせず、宿屋で休んでいきましょうよ」

「ちょっと待て!」


 俺はマッシュの足を引っ掛けて転ばした。

 あ、痛かった? ゴメン。


「先に武器屋に行こうぜ。色々武器が無いと、もし敵に襲われでもしたら大変だからな」

「それもそうですね」


 というわけで、俺たちは武器屋へ向かった。海星は地面にツバを吐いた。

 ……何で?




「……いらっしゃい……」


 武器屋の店主と思われる人物が以上に小さい声で言った。

 店の店主までこんなんなのか!? どうなってんだこの街。


「……ある武器といえばこの"アイスの棒・(ハズレ)"くらいかな……」


 店主コラァァァァァァ!

 何でよりによってアイスの棒なんだよ!? せめてアタリにしろやァァァ!

 これのどの辺が武器だ!?


「え、それしかないんですか」

「店主てめぇ殺すぞ」

「……ああ、待って下さい、もう一つあったような……ああ、これだ」


 海星の脅しにも全く動じない店主。ある意味暗くて良かったかもね。

 その暗い店主が取り出したのは、一本の槍。なんだ、いいのがあるじゃないか!


「……これ、"地獄の槍(ヘル・ランス)"……ほしかったらタダで持ってっていいよ……」

「あ、じゃーお構いなく」


 海星! お前動くの早すぎだよ!?




 そして宿屋。

 赤や黄色のネオンがチカチカ光る看板。

 一応普通の宿屋っぽいけど、逆に怪しい。なんでこうも明るいんだ、ここだけ。


「おいなんか怪しくね? まぁいいか」


 妥協早いよ海星!


「……いらっしゃい」


 見た目だけかよ! 此処もめっちゃ暗ェよ!

 フロントから負のオーラが漂ってるし!


「……泊まりに来たんだろ? さっさと休みなよ……疲れているね……早く永眠(ねむ)った方がいいよ……」


 いや恐い! 漢字! 間違ってるよォォォ!


「あ、じゃあお言葉に甘えて」

「号室は444ね……」


 お前は不信感という物を抱け!

 どう考えても怪しいだろ! つーか444とか露骨すぎじゃね!?

 今気付いたけど、此処死の宿屋(デスホテル)って名前だし!





 



 ……なんだ、普通じゃん。

 444号で怪しいとは思いつつも、睡魔に勝てず眠ってしまった俺。

 しかし、何事もなく目が覚めた。なんだ、怪しんで損したよ。……名前はおかしいけど。


「いやーいい布団でしたよー」


 マッシュが受付の人に言う。


「……代金は1億円ね……」


 ……ボられたァァァァァ!

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