第六話 バイクの扱いには気をつけろ
前回までが短かったんで今回は長めにして見ました。
楽しんで頂けたら幸いです。
盗賊団X……。その言葉に怯えるマッシュ。バイクの「KILLYOU」を見つめる俺。ポテチを食う海星。!? ちょ、そのポテチどっから持ってきた!
「盗賊団Xといえば、世界最強にして最凶、ついでに最狂の組織ですよ! まさかこんな序盤から出てくるとは……」
最強なのか最凶なのか最狂なのかは知らんけれども、とにかくヤバい組織らしい。
っつーか、お前主人公の味方役なのにコイツがどこに出るとか把握してねーのかよ。
……いや、コイツの場合把握してねーっつうより知らされてねーだけみてーだな。性格的に。
「Xだぁ? 何そのネーミング。ガキ並みじゃん。マジ製作者何考えてんだよ死ねよ」
「おま、スタッ、フゥーに謝れよォォォ! きっとそれしか思いつかなかったんだよォォォ! ってかそうであってほしいよね」
最後の方は別にスルーしても構いません。
で、肝心のこのお方。
バイ人さんは、なんかめっちゃイラついている。多分リアクションが大きかったくせに自分そっちのけで会話しているからだろう。あ、睨んできた。でも童顔だから全然恐くねぇ。
「てんめーらァァ! この俺様を無視すんじゃねェェ! 幹部だぞ!? Xの、幹部だよ?」
「……なんで最後説明口調? しかも無駄に間ァ空けてるし」
「流月の言うとおりだよこの糞ボケ。ホントマジこういう調子こいてるヤツ見ると本気で殺したくなるわ。あーうぜぇ」
凄い暴言ラッシュだね海星。多分君は将来誰かに殺されるよ?
あ、でもその前に誰か殺すかもね。まあ元はといえば俺のせいなんだけど。
「まァそういうワケですんで死んで下さい」
「どういうワケだァァァァ!」
バイ人さんがマッシュを轢いた! バイクで! ヤバいよ、コイツまた死ぬぞ?
と思っていたら、海星がマッシュにダッシュ……駄洒落じゃないよ? とにかく、マッシュに向かってマッ……ダッシュして、薬草を無理やり口に突っ込んだ。もうこれ復活させることが目的じゃないよね、完全に。
……え? いや、ダッシュをマッシュって言おうとなんてしてないから! 誤解だって。
「てめーも始末してやるぜ」
あ、バイ人(敬称略、ってか何でさん付けしてたんだろ?)が俺に向かって猛スピードでつっこんできた。だけど、身体能力が跳ね上がっている俺はこんなもの軽々と避けれるさ!
俺はバイクを避け、すれ違い様にバイ人の背中に渾身のチョップを食らわす。
バイ人は「いて」とだけ言った。……マウンテンゴリラより絶対防御高いよね? この人。
「油断しないで下さい! この人には数々の伝説があるんです!」
「で、伝説!?」
海星がオーバーリアクションをする。伝説かぁ。どんなもんなんだろ。
「例えば、顔を石鹸で洗っているとき、ふと鏡を見たら、顔面真っ白になっている自分を見て気絶したり、バスに10分乗り続けてエチケット袋10個消費して降りる瞬間気絶したり、体育館の裏でメチャメチャブスなヤツに告られて気絶したり、なんやかんやで気絶したり」
「いや下らねェ事で気絶しすぎだろォォォォォォォ!つーかなんやかんやって何だァァ!? 3番目はわからんでもないけど」
たまらず声を上げてしまった俺。
でもさ、無理はないでしょ。伝説どころか自慢にすらならないからね。つーかこんなどうでもいい情報より弱点かなんかつけてくれよスタッ、フゥー! ……そろそろ飽きた?
「ククク、どうだ凄ェだろ」
何で得意気なの? しかも海星も「おおーッ……!」とか言っちゃってるし。
なんで? 誰か理由をテル・ミー!
「……さて、この俺の凄さが分かった所でもう遅い。そこのキノコや少年はまだ許せるが、さっき俺にチョップしてきたそこのお前! お前は、死、確定だ」
「……あ、そースか。……やれるもんならやって見やがれァァァァァ!」
ヒャッホー! と奇声を発しバイ人にダッシュする俺。
海星も、「あ、そういうノリで行く?」とか言って、着いてきてくれた。やっぱり持つべきものは仲間だよね!
マッシュは見物してるだけだけど。寝転んで。……殴るよ?
「フン、命知らずが。てめーらがこの直也様に勝てると思っているのか?」
テンション上がったり冷静になったり忙しい人だなこの人。
つーか名前直也だったんだ。普通すぎるだろ!?
「死ねやぁぁぁぁぁ!」
直也がバイクで突っ込んでくる。のを、俺たち二人は余裕でかわす。ついでにいうと、マッシュは再びはねられた。かわす努力をしよう!
俺はバイクがカーブを描き突進してくるそのスキを利用し、攻撃をしかけた。
海星もしかけた。うん、やっぱり気付いてくれたみたいだ。俺たちはほぼ同時に拳を出す――。
が、甘かった。直也はバイクから飛び降り、俺たちの攻撃を回避したのだ。そして、海星の腹にパンチを叩き込む。しかし、咄嗟に腹に力を入れてダメージを最小限に減らしたようだ。まだへらへら笑っている。ホント腹立つなーアイツ。まあ頼もしいっちゃ頼もしいけど。
「フン、普段から教室でケンカしてる俺にとっちゃ、あんなヘボパンチ何発食らっても耐えれるぜ! ほらほらどうした? おしりペンペン!」
「いやガキかァァァァ! おしりペンペンなんて最近言うヤツ初めて見たわ!」
俺が(見事な)ツッコミをしていると、突然直也が叫んで突進してきた。バイクには乗っていない。
「てめーのそのツッコミがうぜぇんだよォォォ!」
「何で!?」
突然そんな事を言われた俺はショックで攻撃を回避出来なかった。だって、ツッコミがウザいって……。
腹にローキックを食らった俺は、マッシュの元へ吹っ飛ぶ。マッシュは「危ねーだろ!」といって俺を避けた。俺は岩にぶつかった。
……受け止めてくれても良かったんじゃない?
「あー判るわ。俺もたまにうぜぇな、って思う時あるもん」
「だろ?」
お前は何意気投合してんだァァァ!
海星、俺たちは親友じゃなかったの!? 俺の勝手な思い込み?
「でもさー直也、俺もっと嫌いなヤツがいるんだよねー」
? 誰だ? そんな話聞いたことねぇ。
ってか聞く気もねぇ。アイツ自分以外の人間全部カスだと思ってるって俺思ってたし。
「へぇ。あのクズよりうぜぇヤツが。誰の事?」
「てめぇだよ糞野郎!」
「――」
顔面を殴られた直也。
地面にツバを吐く海星。
絶句する俺。
ポケットから何かを取り出したマッシュ。……カプセル?
「おい、マッシュ、それ何?」
俺はマッシュに訊いた。直也が吹っ飛んだので少し余裕ができたからだ。
まあさっきも下らねー会話してたけど。
「これですか? これは四次元カプセルと言って中が四次元になってるカプセルで、このスイッチを押したら中身の物が出て来ます。まあ平たく言えば某猫型ロボットのお腹に付いてるアレ的な物ですね」
とにかくデカいものでも持ち運びできる便利な物らしい。……さっきのポテチもここから出したのか? 蹴るぞコイツ。
でもま、一応訊いてみるか。
「それ何が入ってんの?」
「"鋼の槍"という槍です。文字通り鋼並の硬さですよ」
「最初から出せやァァァァァ!」
「やァァァァァ!」
俺がシャウトしてマッシュの顔面を蹴った後、海星がきれいにリピート。そして同じく顔面を蹴る。
「この腐れキノコ! てめっ手助けする気ゼロじゃねーか! 焼いて食うぞ!?」
「ホラてめーのせいで海星怒ってる! さっさとその槍渡せ!」
こうして海星は鋼の槍を手に入れた。
と、同時に直也が今度はバイクにのって突っ込んで来た。
「フン、そんな槍圧し折ってやるぜ! 死ねェェェェェ――」
「槍投げ」
突っ込んで来た直也のバイクに向かって、海星は鋼の槍を投げた。
それは直也のバイクの「KILLYOU」の文字の「L」と「Y」の間くらいに突き刺さった。
途端にバイクは爆発した。
「いけね、やっちった」
「やっちったじゃねェェェェェ!」
草原中に俺の言葉が響き渡った。と思う。