第五話 縄張りには気をつけろ
マッシュに案内され、「始まりの草原」へとやってきた俺たち。
何気に広いこの草原、どこを見渡しても草ばかり。あ、マッシュがこっち見てる。俺と眼があった。アレ? 何でツバ吐いたの?
「なあマッシュ、俺たちはどこへ行こうとしてるんだ?」
「……"アンベッグ"という街です。"始まりの街"とも言われてます」
「ふーん」
あ、ちょ、海星、自分から聞いといてそれは無いわ。
棒読み? 何そのどうでもいいよ的な受け答え。質問したのはアンタでしょーが。
その時、不意に前から何かやってきた。全身緑色の毛で覆われた、その生物。よく見ると、右手に棍棒を握っている。え、武器は反則でしょ。
謎の生物を見て、マッシュが「ヤバい! 緑地の熊だ!」と叫ぶ。それを聞いて、海星は「誰だよ」と答える。や、アンタ関心なさすぎでしょ。なに指で遊んでんだよ。小学生か。
「クマー!」
緑地の熊が鳴き声を発した。ってクマー!? 鳴き声クマー!?
「気をつけて下さい! こいつ等は緑地に住んでいる熊……普段はおとなしいけれど縄張りに入ると凶暴になります! それにしてもなんで怒ってんだろ?」
「いや此処が縄張りだからだろォォォォォ!」
「あ、そうか」
今気付いたんかいィィィィ! ほら、海星が「アホだろ、マジキモいんだけど、消え失せろよ腐れ頭が」ってブツブツ言ってる!
アイツかなり口悪いから! 超が10個付くほどの毒舌だから!
突然、脳天に衝撃が走った。
……何が起きたんだい? あ、そうか、棍棒で殴られたのか、アハハハハハ――
「なーにしやがんだこの糞グマァァァァァ!」
キレた俺は緑地の熊の脳天に踵落としを決める。上手い具合にヒットしたようで、ソッコー昇天でした。
「……意外とやるじゃないですか」
いや俺雑魚だと思われてた!? この腐れ頭が! 「腐れキノコ」にしてやろーかァァァ!
……すいません、取り乱しました。大人気なかったですね。ハイ。
アレ? ってか俺誰と喋ってんの? なんて思っていたら、前方に街が見えてきた。成程、「始まりの街」というだけあって、中々広そうで発展しているようじゃないか。
と思っていたら、再び不意に何かが現われた。今度はバイクに乗っている――人?
黒いバイクのタイヤはでかめ。後は黄色い線が何本かあり、真ん中に大きく「KILL YOU」の文字。乗り手は、まだ二十歳になっていないような顔の青年が乗っている。黒い髪はきれいに整っている。眼は薄く、鼻は低い。口はなんかアレ。……アレって何だ?
「おい、てめェら」
バイクに乗った人(省略して"バイ人と呼ぶ)が口を開いた。
「此処は俺たち盗賊団"X"の縄張りだ。入ってきたからには、死ぬ覚悟は出来てるんだろうな?」
「え……Xだって!?」
……そのXが何なのかは知らないけどさ、この草原、縄張り多くね?