第二話 ふざけんじゃねぇスタッ、フゥー!
ゲームの中へ入り、森へ着いた俺と海星。
うわぁ凄い、本当に自分が森へ来たみたいだ〜。
……なんて言ってる場合じゃない! しまったぁぁぁぁ!
「ああああああああああ!?」
「ど、どうした流月!?」
俺の突然の叫びに驚いた海星が声をかける。
心配してくれて有難う、遅刻したけど君は親友だ! なんて言ってる場合じゃない!
……二回目?
「と、トイレぇぇぇ!」
「トイレかよ! 紛らわしいわ!」
「ち、ちょっとタンマ!」
俺はすかさずポケットに手を入れる。
実はゲームを開始すると同時に、さっきの眼鏡っぽい機械がリモコンになり、勝手にポケットに入ってくれているのだ!
え? ポケットの無い服を着ていたらどうするんだって?
んな事知らん。ってかそんな服パジャマくらいでしょうが。
と心の中で一人芝居する俺。虚しい。
っていうかおかしいぞ? リモコンが無い。ああ、反対のポケットか。
「……無い」
「は?」
「リモコンが無いィィィ!」
やばい。リモコンが無いとポーズはおろか、ゲーム終了する事だって出来ないよ!
一生ゲーム暮らし? そんなのイヤだ!
「ってかもうギブ!」
俺は颯爽と……とは掛け離れたヨタヨタ歩きで草むらへ行き、用を足す。
畜生、トイレくらいするんだった。コーラ飲みすぎた。待ちくたびれて。
……って海星! お前が遅いからだよ!
なんて事を思いつつ、俺は草むらから出る。
「リモコンあったら元の世界……っつうか人間界へ帰れんの?」
「人間界って……まあ、帰れる。一時中断でトイレに行くのも、勿論可能」
「それすりゃ良かったじゃん」
人の話聞いてた!?
「いや……リモコンが無いんだってさっきも言ったじゃん」
「なんで?」
「知るか!」
んなこと俺に訊かれても困るっつぅに!
つーかコイツ危機感ゼロ?
なんかボケーっと突っ立ってるし。
「じゃあ俺等ゲーム止めれなくね?」
「そうなるな」
「ええええええええええええ!?」
遅い! 気付くの遅い!
「フザけんなこの野郎ォォ!」
「ぐぼろ!」
何で俺を殴る!? 俺のせいじゃないでしょ!
……俺のせいか。1Pは俺なんだし。
「ま、まあ落ち着けよ」
自分で言っときながらんな事できねぇよなと思う。
ダメだ、危機感が脳を支配して思考回路が回らん。
「そうだな、落ち着こう」
お前は危機感無さすぎだから!
どれだけマイペースだ!
と、その時。
辺り一帯に「ウホォォォォォォォ」と奇声が響き渡る。
ウホ? ゴリラ? ってか泣き声ベタだね、なんて思っていると、俺たちの目の前に5メートル程のゴリラが突然現われた。んで殴られた。
あはははは……いくらゲームでもさぁ、こっちに来る音くらい再現しようよぉ……こんなに凄いゲームなんだからさぁ……労力使いすぎてこの辺手抜きしたの? 教えてスタッ、フゥー!
結構古いギャグを言いつつ、俺は木に激突。
今更だけど
「痛いィッ!」
「いや遅くね!?」
「……と思ったけど痛くない」
「……?」
ああ、忘れてたよ。
このゲーム、主人公の身体能力が5倍くらいに跳ね上がるんだった。
つまり100メートル16秒だったら5分の1の3,2秒。速すぎだよね! 移動速度だけなら車とまではいかないけど、自転車くらいには勝てるね!
「おい流月」
不意に海星が声をかけてきた。
「コイツ、もしかしてボスキャラじゃねぇ?」
「あ、そうかも」
怒った顔して追いかけてくるゴリラを見ながら、海星が言う。
俺たちは今逃げてるんだよ? 後ろを見ながら走ったら若干だけどスピード落ちるよ?
それでも負けませんね、はい。
「あ、ボスキャラの音楽的なの流れてきたぜ?」
そういえばそうだね。ってかこの音楽、どっかで聞いたような……。
俺が考えていると、海星が閃いたようで、口を開いた。
「これ、"サライ"じゃん!」
24時間走れと言うんですかスタッ、フゥー!