第十一話 普通の顔が気色悪い
モヒーが俺に攻撃を仕掛けてくる。
が、身体能力の上がった俺にとってこの程度の正拳やローキックをかわすことなんざ朝飯前だ。
俺は次々と攻撃をかわし、逆にカウンターでモヒーの腹を3回くらい殴ってやった。
「ぐおおおお……!」
モヒーは吐血し、呻く。
そこに海星が乱入してきた。そしてモヒーのモヒカンを乱暴に掴み、地面に叩きつけた。
……毎度の事ながら酷ぇな。
つーかマッシュの胞子消えてるし! 持続時間短すぎだろ!
心の中でツッコむと、急にマッシュが現れ、人差し指を立てながら言い始めた。
「説明しよう。田中賞受賞者のお助けキャラは極端に弱いのだ」
「ざけんなァァァァァ」
もうお前帰れば!? と思った俺は雑魚の後頭部を蹴っ飛ばした。
すると、モヒーが驚いたように目を見開く。
「田中賞受賞者だと……!?」
「それがどうしたァァァァァ」
いや酷い! 海星!
後ろから頭を思いっきり殴るな! 流石に可哀相だ!
それにしてもモヒーはなんであんなびっくりしてんだ?
「こいつらが生贄だったのか……。すぐにボスに知らせるか」
「生けッ……!?」
……モヒーは「撤退だ!」といい、ティワワを従えバイクに乗って去って行った。
それにしても、生贄だって!? 俺達が!?
「おい雑魚説明しろやァァァァァ」
「えェ!? 知りませんよ、田中賞に関してはさっき言った事がすべてだと小学校で習ったんですよォ」
習うか!
しかし、コイツは本当に知らないようだ。だとしたら生贄って一体……?
ストーリー上での演出か? そんな訳はない。実際に俺たちは元の世界に帰れなくなっている。
ピンチになったから自然な流れで撤退できるように嘘を付いたのか? 奴はそんな子供染みた性格じゃないだろう(多分)。
となると、奴は本当の事を言ったってことになる。
元々「なんでも願いが叶う」なんてドラゴン○ールみたいな漫画の世界ではともかく、現実では有り得ない。
生贄……か。
どうやら俺たちはとんでもない事に巻き込まれているらしい。俺たち″だけ″。
モヒーは田中賞の存在を知っていた。だとしたら盗賊団Xのボスの陰謀か?
……わからない。
わからないが、このストーリーを進めて行けば何かを掴めるだろう。
となれば、やる事は一つ。
前に進むだけだ。
さあ、一歩踏み出そう、元の世界へ帰るために――。
そう思い、俺は左足を前に出し――転んだ。
「なにしやがる!」
「いや珍しく真剣な顔で何かを考えてたから何してんのかなー、と思ってたら急に気色悪い顔して歩き出そうとしたからよ。びっくりして足掛けちまった」
びっくりした人がする行動か!? つーか気色悪い顔で悪かったな。
と心の中で反論(?)しつつ、俺は今まで考えていた事を海星とマッシュに話した。
*
「……成る程。よーするにゲームをクリアすりゃいいんだな」
「いや結論はそうなんだけど……。お前焦りとかないの? 一歩間違えれば死ぬかもしれないんだぜ」
「まあ、不安がないっつったら嘘になるけどよー。くよくよしてても始まらねぇだろ」
……それもそうだな。
海星はこういう時頼りがいがある。
「では、次は″マウンテンの森″へ向かいましょう」
「何処そこ?」
海星が尋ねる。
「ボクたちが最初に出会った森ですよ」
「はあァ?」
戻んの!? 此処に来た意味無かったじゃん!
俺が思ったのと同時に、海星は同じ事を聞いたらしい。
その問いかけに対する答えが返って来た。
「いあ、嘘をふいたんへはないへふ。この町によららいほ、先へは進めなかったんへふ」
何言ってるかよくわかんねぇ!
つーかなんでそんなに顔腫れてんの?
……海星が殴ったのか。騙されたとおもって。
「まあいい、行くぞ」
なんか仕切りだしたよこの人。
俺も後を追いかけようとしたが、誰かに呼び止められた。
ってこの声、どっかで――?
「おー! 天野に海星じゃん!」
「……陽太郎?」
……お前も「ぱられるくえすと」やってたのか?