第一話 ゲームの中へ
初めまして。朧月夜です。
主人公はこの二人ですが、メインは流月です。
海星がメインみたいな感じになってますけど、流月ですので。
「ぱられるくえすと」。それは、誰もが注目している未来型最新ゲーム。
プレイヤーがゲームの世界そのものに入り、自分が謎を解いたり敵と戦ったり出来るというものだ。
勿論敵の攻撃を受けたとき実際にダメージを感じたり、部屋でやっていてゲーム内のフィールドを動き回ったら何時の間にか台所に来ていた、なんてこともない。
とにかくプレイヤーに都合の良いゲームなのだ。
それ故、中々手に入らないのだが、夏休みのある日、海星は幼馴染の流月から
「ぱられるくえすとが手に入ったから今すぐ来い」
という内容の電話を貰ったところだった。
それを聞いて海星はレポート用紙を投げ捨て、自転車で一目散に流月の家へと向かった。
中学二年生の今でも、海星は流月と一緒に登校している。一つは勿論幼馴染だから。もう一つは、家が近いから。
海星は、自転車から降りるとすぐにインターホンを押した。
聞きなれた音が鳴り、おせーぞ早く上がって来い、と流月の声がした。
海星は全速力で階段を駆け上り、流月の部屋の扉を開けた。
「おせーよバカ。んじゃ早速始めるぞ」
待ちくたびれた、という様子で流月は言うと、海星に眼鏡のような機械を渡した。
これをつけ、電源を入れると、次の瞬間にはゲームの世界へと行けるのだ。ちなみに2P対応。
「もうキャラ設定はさっきしといたぜ。つっても名前いれるだけだけどな」
流月が楽しそうに言う。
「しっかし、こんなんよく手に入ったな。何処行っても売り切れてたぜ?」
「ああ、家の前に落ちてた」
「えっ……」
それって泥棒……と海星は思ったが、途中でその考えを無理やり中断し、電源を入れた。もとい、入れさせられた。
やがて、視界が変わり始めた。
見慣れた景色は消え、目の前には鬱蒼とした森が現われた。