表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『乙女モード』全開☆のオレと、踊るプリンシパル  作者: 千園参
第1話 You can't remember 《  》 -あなたは『  』を記憶できない-
9/30

Part 9

Part 1の冒頭で書いた5月20日に向けて、物語も徐々に加速していきますが、まだ日常回です。

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

 5月16日---

 いつものように登校していて、気付くことがあるとするならば、眩しいだけだったはずの朝日は、徐々に暑さも放ち始めたということぐらいだろうか。空を仰ぎ、太陽に睨みを効かせていると、

「美崎くん、おはよう」

 華村が声をかけてきた。

「朝から太陽と睨めっこ?」

「華村か。太陽がそろそろ暑さを放ってきたから、ここいらで脅しとこうと思ってな」

「何そのおバカな発言。恥ずかしいから他の人がいる前では、そんなこと言うのやめてね……」

 と、華村は頭を抱えた。

「仕方ない。お前がそこまで言うなら、今日はこの辺で勘弁しておいてやるか」

「ちょっと待って、『今日は』って言わなかった?」

「気のせいなのです」

 妹の真似をしてみる。

 そんな至って、くだらないことをしているうちに、学校に到着することになった。

 校門を抜け、ロッカーから上靴を取り出す。簀子で上靴に履き替えていると、隣のロッカーから上靴を取り出す、どこか見覚えのあるような、ないような、そんな印象を受ける、黒髪ロングの美少女が登校してきた。

「朝から、いやらしい目ー」

 美少女に見惚れてしまっていると、華村がジトっとした目を向けてきた。

「いや、違うこれは……!」

「いい訳しなくても、わかってますよー?所詮、男の子はそういうことにしか、興味ないものねっ」

「そ、そんなことはないぜ!」

 大慌てで美少女から視線を外し、華村に目を戻す。

「お前も十分、可愛いよ」

「どうだか。ふんっ」

 別に冗談を言っているわけではなく、華村は本当に可愛い。制服でよくわからないが、胸はデカイし、眼鏡で隠されてしまっているが、実は美人であることも知っている。では、なぜ付き合わないのかって?理由は至ってシンプルかつ簡単で、彼女ような素晴らしい人に、オレのような馬鹿者が釣り合うはずがないからだ。ただそれだけのこと……。

 華村はプリプリと怒って、先に教室へと向かっていってしまった。その後を追いかけようとしていると、

「おうおう、朝から痴話喧嘩か?」

 さらに後ろから黄滝が声をかけてきた。

「誰が痴話喧嘩だよ」

「お似合いだと思うけどなー。昊と華村さん」

「そんな訳ねぇだろ……」

 どこか含みのある言い方に、黄滝は首を傾げた。

「さっさと教室行くぞ」

 黄滝を連れ、教室に向かうことにした。

「あ、芳哉ー!」

 廊下を歩いていると、また更に後ろから黄滝を呼ぶ可愛らしい声が廊下に響き渡る。

 それを誰だと後ろを確認するまでもない。そう、それは黄滝の彼女である藤宮萌香だからだ。

 黄滝に彼女がいたことは、前々からなんとなくだがわかってはいた。しかし、その彼女がまさかこの美少女だとは思ってもいなかった。

 そして走ってくるなり、腕を組み始めた。

「おうおう、朝からお熱いな。痴話喧嘩なんて人のこと言えないだろお前」

 チクリと毒を吐いてみる。

「あはは、痛いところを突くな」

 すると、黄滝は笑いながら、頭を掻いた。幸せそうで何よりだよ。

「邪魔しちゃ悪りぃから先に行くよ」

 気を使って、その場を立ち去ることにした。とは言えども、向かう先は皆、同じ教室なのだが……。強いて言うなら、藤宮は隣のクラスだが、そんなことはあまり関係ないだろう。何故なら、教室は隣同士だからだ。

 どうやら、本当に邪魔者だったようで、いなくなったことを見計らって、2人はイチャイチャし始めた。

 オレにもイチャイチャできる彼女がほしいよ……。

 そんなことを考えていると、先程の美少女のことを不意に思い出した。やはり彼女のような美少女には、当たり前のようにイケメンの彼氏がいるのだろうか。いや、そんなことは考えずとも答えは明白であろう。答えはいるに決まっているではないか。

 あんな美少女はイケメンによって、とっくの昔に美味しくいただかれているに違いない。朝からなんと品のないことを考えているのだろうか。これでは本当にお馬鹿になってしまう。とりあえず、彼女のことを考えるのをやめようと思う。


 それから午前の授業を終え、昼休みとなった。

 授業中、彼女のことを考えまいと、すればするほど、何故か頭から離れなくなってしまっていた。

 ひょっとすると、恋の病というものに感染してしまったのだろうか。いや、そんなはずはない。オレは見た目ではなく、中身重視で女性を選んでいる。これが一目惚れだと認めてしまっては、ただの面食い野郎である。そんなことあってはなるまいよ。

 そんなことを考えていると、ドンドン自分が惨めに見えてくるから嫌である。

 ため息を垂れ流しながら、屋上に向かって廊下を歩いていると、

「おいライム!モタモタしてんじゃねぇよ!」

 という、男子たちの声と共にすれ違った。それに対して、かなり離れたところから弱々しい声で、

「ま、待ってよー!」

 と、必死でついていく小柄な少年の姿が目に入った。

「らいむ?」

 どこかで聞いたことがある名前だと思った次の瞬間、近いづいてくる少年の顔を見て、確信を得ることになった。

「あ!ラーメン屋の!」

 思わず大きな声が出てしまう。すると、来夢は足を止めた。

「あなたは昨日の!」

 と、とても驚いた表情を見せてくれた。ラーメン屋の照明では、よく顔が見えなかったが、こうして明るいところで見ると、少年というよりは少女よりの可愛らしい顔立ちをしていることに気がついた。

 せっかく感動の再会を果たしたので、来夢を連れ回していた男子生徒たちに声をかけて、昼休みの間、来夢を借りることにした。

「あのさ、こいつ昼休みの間だけ借りてもいいかな?」

「うっす」

 と、さっきまでの勢いはどうした!?と、思わず言ってしまいたくなるような低いテンションで、男子生徒たちは退散していった。

 そして2人して屋上に向かう。

「まさか超人気ラーメン店の店員が、賀晴うちにいたなんてなー、驚いたよ」

「僕もまさか昨日のお客さんに、今日会えるとは思ってませんでした……」

 来夢はどこか気不味そうに言った。

 屋上に到着すると、お互い鉄格子にもたれかかるように、オレは地べたに、来夢は段差に腰掛けた。

 そしてお互いに弁当箱を開ける。

「来夢も手作り弁当なのか」

「はい。毎朝、お父さんが作ってくれるんです」

 あの強面のお父さんが!?しかし、一瞬驚きはしたが、そもそも料理屋を営んでいる時点で、弁当を作ることなど容易く、特におかしいことではないことに気がついた。それでもお父さんの意外な一面を見た気がしてならない。

「あのそういえば、まだ名前書いてませんでしたよね?」

「そういえば、そうだったな。オレは美崎昊。よろしくな」

「僕は東條来夢とうじょうらいむです。こちらこそよろしくお願いします」

 とても丁寧に挨拶を返してくれた。

「なんて呼べばいいですか?」

「なんだその質問。お前、クラスは?」

「僕は1年3組です」

 ここで来夢が後輩であることを初めて知る。

「後輩か。なら、呼び捨て以外なら、好きに呼んでくれていいぜ」

「じゃあ、昊先輩って呼んでいいですか?」

「おう」

 昊先輩、なんだかとてもいい響きである。高校生活始まって以来、部活などもしていないこともあって、こうして後輩とちゃんと話す機会がなかったため、とても新鮮で、何より先輩ヅラできるのは、正直いい気分である。

「昊先輩のお弁当も手作りですか?」

「ああ、妹が作ってくれてるんだ。うちは両親がもう死んでるからな。訳あって、家事は妹がやってくれてるんだ」

「そうだったんですね。なんかすいません。変なこと聞いてしまって……」

 来夢が俯く。

「大丈夫、気にすんな。オレも気にしてないからさ」

 そう言って来夢の肩をポンポンと叩く。

「妹さんってこの間、先輩が連れていた子ですよね」

「そうそう。しっかりしたオレには勿体ない妹だよ」

「そんなことないですよ!昊先輩みたいな人がお兄さんだからこそ、妹さんも頑張ってくれるんだと思いますよ!」

「ふふ、ありがとな」

 あまりにも真剣に励ましてくれるものだから、思わず笑ってしまった。

「僕も昊先輩みたいなお兄ちゃんがいてくれたらなー」

 来夢は、ボソリとそんなことを口にした。随分と嬉しいことを言ってくれるではないか。

「来夢は兄弟とかいないのか?」

「僕は一人っ子です。だから、兄妹とかすごい憧れるんですよねっ」

 青い空のどこか遠く、その一点を見つめながら、来夢が言った。

「でも、お前はお兄ちゃんって感じじゃないな。姉か兄って感じがするよ」

「僕もそう思います。昊先輩みたいにカッコいいお兄ちゃんをやれる自信ないですもん」

 半笑いで来夢が答える。

 最初は強張っていた来夢の顔も、話が進むに連れて、笑顔を見せてくれるようになった。何故だろうか、彼の笑顔を見ているとドキドキしてしまうのは……。

 まさか!?これは男同士の禁断の恋なのか!?ダメだ!!それだけはダメだ!!この作品が終わってしまうからダメなんだ!!!

「昊先輩、どうしたんですか?」

 悶えていたところに、声をかけてきた。

「いや、なんでもない!」

「そうですか。へへ、先輩って面白いですね」

 来夢がここで、今日一番のいい笑顔を見せる。

「今日は昊先輩と話せてよかったです!あの……もし…よかったら………、その……今後も仲良くしてくれませんか……?」

 モジモジ、クネクネしながら恥ずかしそうに、顔を真っ赤にして、来夢は言葉を腹の中から引っ張り出した。

 その姿を見て、優しく微笑み返すことにした。

「それオレも今言おうと思ってたんだ。オレはいつも屋上で飯食べてるから、空いた時はいつでも待ってるぜ」

「はい!」

 来夢は、さらに今日一番の笑顔記録を更新していく。

「それじゃあ、また……」

 来夢は名残惜しそうに、可愛く胸元で小さく手を振ると、駆け足で屋上を去っていった。最後の手の振り、可愛すぎてはないだろうか。本当に男に恋をしてしまったのか!?

 彼女が欲しいと願ったが、そんな都合よく彼女を作ることはできなかった。しかし、今日は可愛い後輩を作ることができたので、めでたしということにしておこう。


 来夢が屋上の扉を開けると、扉のすぐ側で、黒髪ロングの美少女とすれ違うことになった。来夢は「誰だろう?」と疑問に思いながらも、階段を駆け降りていくのだった。

ネタバレを言うと、東條来夢は絵凪玲編が終わった後のメインキャラにしようと考えています。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ