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『乙女モード』全開☆のオレと、踊るプリンシパル  作者: 千園参
第1話 You can't remember 《  》 -あなたは『  』を記憶できない-
7/30

Part 7

「やったれ魔法少女」の時に比べると、執筆力もかなひ上がったのではないかなと自画自賛してみたりしていますが、きっとまだまだなので、これからも頑張りたいと思います!

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

 異変、別名『掣踆せいしゅんペーシェント』なんて、呼ばれているらしい。まだ現代社会には、その名前や現象は浸透していないらしく、主に思春期などの若者が巻き込まれることが多いようだ。その症状はどれも、言葉では説明がつかない特殊な症状ばかりで、大人たちに説明しても、精神科を紹介されるのが、関の山であった。

 最初はネットの都市伝説サイトなどで、軽く扱われていただけで、それがいつから囁かれるようになったのか、いつから掣踆せいしゅんペーシェントなどという現象があるのか、誰も知らない。それらをひっくるめて、にわかには信じ難い話だと思う。

 しかし、それは突如として、オレや華村に降りかかることになった。誰も、まともに取り合ってくれない中、唯一、オレたちに手を伸ばしてくれたのが、神月先生だったのだ。だから、神月先生には頭が上がらない。

 経験した限りでは、今のところ掣踆せいしゅんペーシェントに巻き込まれたのは、自分と華村だけだと思われる。

 華村の一件は今年のゴールデンウィークに起きていたんだ。つまりついこの間の話なのだが、この話は長くなりそうなので、また今度にするとしよう。

 そしてオレ自身は、春休みに起こったんだけれど、きっと信じてもらえないから、この話もまた今度にしよう。

 全ての話を後回しにして、今、何をやっているのかというと、今日は土曜日、学校は休みである。だから、家でゴロゴロ、のんびりとしていた。


 5月14日、午前9時---

「おはよう」

「おはようございますなのです!」

 瀛はソファーでテレビを見ていた。

 今日は特別な用事など、皆無であるため、妹と共に、のんびりと過ごすことにした。

「さて、今日は何をするかな」

 と、ソファーの真後ろにある、テーブルに腰掛け、テレビに目を向ける。

 テレビには、ニュースのコーナーの中で、可愛い動物特集が放送されており、可愛い物好きの瀛は、それに釘付けになっていた。

 美崎瀛は、とにかく可愛いものが大の字がつくほど、好きであるため、部屋も動物のぬいぐるみなどで埋め尽くされている。まぁぬいぐるみはオレも好きだったりするのだが……。

 特集の中で映る動物たちは、どれも間抜けであったり、意味不明な行動とる、モノばかりだ。所謂、バカわいいというやつだろうか。すると、テレビに見入っていた瀛が突然、

「お兄ちゃん!動物園に行きたくなってきました!」

 と、言い始めた。

「動物園?」

「はいっ!動物園ですっ!」

「なんでまた動物園?普通この流れだとペットを飼いたい、とかじゃないか?」

 そう言うと、瀛は---

「うーん、ペットはさすがに気が引けるので、まだいいのですっ!今回はその下見がしたいのですっ!」

 と、元気よく答えた。

「わかった。んじゃ、支度するか。気が変わる前に、さっさと行くぜ」

 パジャマから、よそ行きの服、とは言っても、ジーンズにシャツという、適当な服に着替えた。あとは、携帯と財布を持てば、準備完了である。

 ソファーに座り、瀛の着替えを待っているが、一向に出てくる気配がない。女の子の着替えはこんなものだろうと、思いながら気長に待つことにした。

 その間にも、バカわいい動物の動画がテレビで流れている。今流れているのは、お手を空振りする犬だった。

「犬はみんな賢いと思ってたけど、こんなバカな犬もいるんだなー」

 と、ついつい目を奪われてしまう。

 すると、瀛の部屋の扉が開く。そこから可愛らしいカジュアルなワンピース姿の妹が恥ずかしそうに現れた。

「どう……かな?」

 と、顔を赤らめる。

「うんうん。似合ってると思うぜ?よし!それじゃ、出発だな」

 こうして、妹と共に動物園へと繰り出すことになった。徒歩10分ぐらいのところに駅があり、そこから電車に乗って、動物園に向かう。

「ウミ、電車なんて乗るの久しぶり過ぎて、ドキドキするです……」

 瀛が券売機の前で、モジモジしている。

「そういえば、そうだったな。まぁ専業主婦のお前が、家から出たいなんて、そうあることじゃない。頑張ってみようぜ?」

「はいです!」

 切符を購入したのなら、次はいよいよ電車である。

 軽やかなメロディがホームに鳴り、間も無く到着しますというアナウンスと共に、電車がやってきた。

 乗車し、空いている席に2人で座ることにした。

 車窓から見える空は雲一つない快晴で、まさにお出かけ日和だった。そんな日和だからか、不思議と気分も高揚しているような気がする。

 電車に乗ること1時間弱、動物園最寄りの駅に到着した。動物園最寄りだからなのか、駅の彼方此方には、動物の足跡や、動物たちのイラストが描かれている。これは動物園を楽しみにしている子供達には、テンションが上がる作り込みだと思う。

 改札を抜けると、目の前にはいよいよ、動物園が開園していた。それを見た瀛は、動物を見る前からテンションがマックスになっていた。

「動物園です!」

「だな。さて、何から見る?」

「うーん、迷いますねー」

 質問に対して、瀛は頭を抱える。

「そういえば、お前って何の動物が好きなんだ?」

「好きなのは、パンダです!」

 これに関しては、何の迷いもなく即答した。

「んじゃ、パンダからか?」

「パンダは最後のお楽しみにします!」

「ほう、なら順番に回るか」

 と、言いながら、動物園のガイドマップを手に取り、瀛に渡した。

「そうするです!」

 というわけで、まずはゴリラから。

「ゴリラですよ、お兄ちゃん!」

「ゴリラだな」

「ウホウホしてるです!」

「ウホウホしてるな」

 瀛の反応はとても新鮮味があり、動物園をとても楽しんでくれているようで、安心した。連れてきた甲斐があったというものだ。しかし、実はオレ自身もここの動物園に来るのは、初めてな筈なのだが、どうしてたが、既視感があるような気がする。正夢とか言うやつだろうか?

 一度来たことがある?いやいや、そもそも友達が数えるほどしかいないし、その友達も一緒に動物園に行ってくれるような間柄でもない。きっと頼めば行ってくれるのだろうが、そこまでする必要もなかった。

 その後も、不思議な感覚は抜けないまま、園内をまわることになった。

「キリンさんです!」

「キリンだな」

「首が長いです!!」

「首が長いな」

 今は可愛い妹とのデートに集中することにしよう。

 キリンの次は---

「ゾウさんです!」

「ゾウさんだな」

「お鼻が長いです!」

「お鼻が長いな。餌やり体験ができるらしいぞ?やっていくか?」

「やるです!」

 近くにいた飼育員さんに声をかける。

「あのすいません。餌やり体験ってできますか?」

 そう尋ねると、飼育員さんは満面の笑みで、

「はい!できますよ!こちらへどうぞ!」

 と、ゾウに餌を与えられるスポットまで誘導された。そこは少し柵が低く、ゾウの鼻が届くところから、餌をあげられるようになっていた。飼育員さんが、コップに入ったバナナを瀛に渡した。

「ゾウさんのお鼻に優しく、渡してあげてくださいねっ」

 という、説明を受け、瀛はゾウの餌やり体験に挑戦する。瀛が柵から手を伸ばし、バナナでゾウの気を引くと、ゾウは鼻を器用に使い、まるで鼻が手なのでは?と思わせるほどの、動きで瀛の手にあったバナナを受け取り、口に放り入れて、ムシャムシャと食べた。

「な、生暖かったです……」

「そうなのか。まぁいい体験ができたな」

「はい!」

 とても嬉しそうに返事を返してくれた。

 ゾウを見えると、その次は爬虫類ゾーンに入るようだが、ここで瀛は、

「ウミは爬虫類がその、苦手です……」

 と、赤裸々に教えてくれた。

「そうなのか。じゃあ、ここは飛ばすか。次はっと」

 ガイドマップに目を落とす。

 次は……。

「トラです!」

「トラだな」

「でも、ちょっと怖いです……」

「心配ないって。檻で囲われてるし、瀛にはオレがついてる」

 と、少し怯える瀛の肩に、ポンと手を置いた。

「それもそうですね!トラさん残念でしたね!ウミにはお兄ちゃんがいるです!もう怖くないですよ!!」

 と、ウミは、したり顔でトラに喧嘩を売り始めた。トラは瀛に喧嘩を売られたことに気が付いたのか、こちらに近づき、ガウッと鳴いた。それに対して瀛は、

「ひえぇぇぇ」

 ビビりまくっていた。それには思わず、フッと笑ってしまった。

 どうやら、この辺は肉食獣ブースになっているようで、トラのすぐ横にはライオンがいた。

「百獣の王ってやつですよ、お兄ちゃん!!」

「百獣の王ってやつだな」

「カッコ良くもあり、可愛くもある。不思議な魅力に包まれていますです!」

 ライオンに対して、不思議な魅力に包まれていると、表現する人を初めて見た。どうやら、瀛は特別な感性を持ち合わせているようだ。もしかすると、妹とはアーティスト気質なのかもしれない。

「トラは怖いのに、ライオンは怖くないんだな」

「なんでですかね?ライオンは不思議と怖くないですよ?」

「まぁ深く考えることでもないだろ。そろそろこのツアーもフィナーレだな。いよいよだぜ?覚悟はできてるか?」

「バッチリですよ!」

 瀛はVサインで、準備万端を表した。

 最後にやってきたのは、

「パンダです!お兄ちゃん!パンダですよ!!」

「ああ、パンダだな」

「ノロマです!思った以上にノロマです!!」

「ノロマだなー」

 パンダは、のしのしと四つん這いで歩くと、そのまま転んだ。それを見て瀛は、

「ま、間抜けですよ!」

 と、ツッコミを入れた。見事なツッコミだな。これなら、アーティストのみならず、芸人にもなれそうだ。


 それからお土産屋の前を通ると、瀛が名残惜しそうに、入口横にあるガラス張りケースに収まった、ぬいぐるみを眺めている。

「何か買っていくか?」

「いいのですか!?」

「せっかくだしな。ほら、行くぞ」

 すると、瀛の笑顔は満開になった。

 そこで妹が迷わず向かうのは、言うまでもなく、ぬいぐるみコーナーだった。

「何のぬいぐるみにするんだ?」

 と、尋ねると、買うものはもう決まっていたみたいで、

「これにするです!!」

 そう言って、オレの上半身ぐらいはある、大きなパンダのぬいぐるみを持ってきた。これは入口にも飾ってあったジャイアントパンダに因んだ、ジャイアントぬいぐるみと言ったところだろうか。

 パンダのぬいぐるみを購入すると、特典として、小さいパンダのぬいぐるみも付いてきた。オレが大きいぬいぐるみをおんぶし、瀛は小さいぬいぐるみを抱きしめた。

「お兄ちゃん、ありがとうです!」

「どういたしまして」

 お土産も購入し終わり、外に出ると、外はもう日が暮れ始めていた。なんだかんだで、丸一日を費やしていたということか。

「瀛、今日は楽しかったか?」

 夕日をバックに、改めて瀛に今日の感想を尋ねる。

「はい!とっっても!楽しかったです!!」

「うん。いい返事だ。とっても楽しめたところで、そろそろ帰るか」

「はいです!」

 こうして、無事に瀛との動物園デートが幕を閉じたのだった。しかし、電車内では、ぬいぐるみをおんぶしている姿を、めちゃくちゃ見られた。

「ママ、ぬいぐるみをおんぶしてるよ」

「見ちゃダメ!」

 いや、見ちゃダメなことはないだろ。そんな中、はしゃぎ疲れたのか、妹は空いた席で、ぐっすりと眠っていた。そんな妹の寝顔を見た時、今日は充実した1日だったと、心からそう思った。

今回は重要なようで、そんなに重要でもない回でした。私の執筆の癖として、行き当たりばったりで書いているものと、かなり練ってオチまで決まっているものとに、分かれるのですが、オチまで決まっているものは、寄り道なしで、さっさと完結させてしまう癖があります。デビュー作である「やったれ魔法少女」は、もっと盛り上げたかったのに、知らぬ間にゴールに突っ走って勝手にゴールしてしまったので、今回はそんなことのないように、ゆっくりと展開させていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

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