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『乙女モード』全開☆のオレと、踊るプリンシパル  作者: 千園参
第1話 You can't remember 《  》 -あなたは『  』を記憶できない-
5/30

Part 5

とにかく主人公の記憶がリセットされるという展開であるため、しつこいようではありますが、見たことあるボーイミーツガールのシーンが連発します。申し訳ございませんが、お付き合いください。

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

「必ず『   』を助けろ!………を見るだ!……さえ見れば、この地獄のループから、助け出せるんだ!いいか?……だぞ!頼んだぜ!!」

 そんな声が頭に響き渡りながら、ベッドで目を覚ました。




 5月13日---

「えっと……誰を助けるだっけ? 何か……見ろって言ってたけど、何を見るんだ? やっば、何も思い出せないな」

 なぜ人間は夢を覚えていられないのだろうか。まだ、まともに動かない頭でそんなことを考えた。そんなことを考え始めた。しかし、だがしかし、忘れる程度のことなのだろうと、オレは考えるのをやめた。諦めるのが早すぎる。世界記録ではないだろうかと思えるほどに早すぎる。

 ここのところ、このところ、変な夢を見ることが多くなった気もするが、そうでもない気もする。何か意味があるのかもしれない。絶対そうに違いない。間違いない。そう思い、スマホで夢占いサイトを開き、自分が見た夢の意味を確認してみる。乙女かよ。いや、乙女なのだがと………。


『意味のわからない言葉を誰かから叫ばれる。 検索』


 最近のスマートフォンは本当に便利で、スマートフォンというよりも、このネット社会というべきかもしれないのだが、総称して現代社会ということにしておこう。現代社会のネット回線はビンビンであるためなのか、真っ白な読み込み中画面など、見たか、見なかったか、記憶に残らないほどに、すぐに答えを出してくれる。導き出してくれる。果たして現代社会のネットワークで導き出せない答えなどあるのだろうか?

そんなわけで、こんなわけで、あんなわけで、どんなわけで、導き出された画面に目を向けると、


『知るかバーカ。意味なんかある訳ねぇーだろ』


 サイトにはハッキリとしたゴシック体で、キッチリとしたゴシック体で、書かれている、書き切られている、書き抜かれている簡潔な文字列を確認すると、二度見する必要などなく、そんな必要などなく、怒りを通り越して、全てを通り越して、何故だか、どうしてだか、無性に死にたくなった。

 自分の夢の意味を占いサイトなんぞに頼ったこと自体が、それ自体が、その選択肢自体が、そもそもの間違いだったということなのか。怒りで震える手で、スマホの画面を閉じた。

 ベッドにスマホをほっぽり、洗面所に向かう。洗面所の備え付けられている鏡に映る自分の顔は、心なしか疲れているように見える。

 自分でもどうしてここまで疲れているのかは不明だが、きっと先程の夢占いサイトのせいで間違いないだろう。

 そんな冴えない気持ちをリセットするべく、顔を洗う。

 顔を洗い終え、リビングに向かうと、瀛が朝御飯と、学校へ持って行く弁当の用意を済ませてくれている。

「あ、お兄ちゃん、おはようなのです!」

「おはよう」

 挨拶を交わし、瀛と共にテーブルにつく。

 テーブルに並べられた、目玉焼き、ウインナー、サラダに納豆、味噌汁、白ご飯。これを前にして口にする言葉ただ一つ。

「「いただきます」」

 食事時に流れるテレビからは、今日の天気予報が、これまた美人なお天気お姉さんから発表されていた。

 そしてその後のジャンケンに勝利を収めた妹の凛々しき姿を見届け、学校へと足を進める。

 今日も代わり映えのしない1日が始まったと、アパートのエレベーターに乗ることで、不思議と実感を得る。

 学校に近づき、賀晴高校の学生たちの群れを目の当たりにすると、いよいよ学校モードに気持ちが切り替わる……と、いいのだけれど、そう簡単には切り替わらないからこそ、神月先生のアイアンクローを食らう羽目になるのだろう。

 もしかすると、切り替えずに学校でアイアンクローを食らうまでが、ルーティーンと言えるのかもしれない。

 一刻も早く、そんなルーティーンからは、抜け出さなくては……。


「おっす」

 このような挨拶で近づいて来るのは、オレの知り合いの中では、1人しかいない。黄滝である。

「おう。お前は朝から中の中だな」

「ははっ、なんだよそれ」

 仕草や話し方は上の上、間違いなくイケメンで、男も惚れる男とは、彼のことであろう。しかし、顔の中の中だけが唯一の欠点と言えるだろう。

 もうそこまで、イケメンを与えたのなら、神様もお顔ぐらい、おまけしてあげられなかったものだろうかと、顔を合わせる度に思う。

 その後、男同士のバカ話を展開しながら、教室へと向かい、席につく。

 それから間も無くして、チャイムが鳴り、教室に神月先生がホームルームにやってくる。

「お前らに言わなきゃならないことはっと、うーん、特にないな。今日も死ぬまで頑張れ。そして死ね。以上だ」

 神月先生は、その一言を教室に残して、教室を出ていった。

 このセリフは入学した時から、ずっと言い続けており、最初はとんでもない人が担任になってしまったと、ビクビク生徒たちを恐怖で震え上がらせたが、2年生になった今では、誰もこのセリフにツッコミを入れるものはいない。

 それにしても、『死ぬまで頑張れ』まではセーフ。『そして死ね』は、どう考えてもアウトだろう。アウト以外のナニモノでもない。これがアウトでないなら、何がアウトなのか。そんなぶっ飛び発言も、神月先生だからこそ許される発言と言って間違いない。

 そんな神月先生は女性としての人気は皆無ではあるものの、教師としての人気は非常に高いのであった。

 生徒の悩みを親身に解決してくれる、優しさを評価している生徒たちは、とても多い。過去にはオレも力になってもらった経緯もあるため、現代社会において珍しい、信頼して間違いないと、ハッキリとわかる人だ。


 今日の1限目の授業は、体育であるため、更衣室で体操服に着替え、グラウンドに集合する。

 体育の授業内容は、野球だった。

 自分自身、あまり球技は得意な方ではないので、あまり気乗りはしない。倉庫からグローブを貸し出され、キャッチボールから始めるようだ。

 自然な流れで黄滝とペアを組み、キャッチボールを行う。

「いくぞ!」

 黄滝がボールを投げる。それをキャッチし、投げ返す。このぐらいなら、まだ何とかなりそうだと、一安心、ともいかないが、このイケメンとなら、何でもできるような気がするのだ。これは十中八九、ただの気のせいだろう。この男といて不可能が可能になるはずなど、ある訳がない。

 キャッチボールをする中で内心、思うことがあるとするならば、それは黄滝がやはりイケメンだということぐらいだろう。投げる姿が、滴る汗が、格好良さを物語っている。か、カッコいい////

「お前って彼女いたっけか?」

 キャッチボールに必要なコミュニケーションというやつだ。この盾を手に、黄滝に尋ねる。

「いるよーっ」

「だよなーっ」

 お互い投げるタイミングと言葉を発するタイミングが同じになっていて、声が少し力む。

 そんなことはどうでもいい。やはり彼女がいるのか。

「お前の彼女、誰だよっ」

「3組の藤宮萌香だよっ」

「マジかよっ」

 3組の藤宮萌香、成績はズバ抜けていいわけでもないが、悪いわけでもない。彼女の特徴はそこではなく、見た目が可愛いナチュラルギャルである。

「よく射止めたなっ!馴れ初めは?」

「今年のバレンタインの時にっ!ノリと勢いだな」

 ノリと勢いでどうにかなってしまうのは、彼が内と外、どちらも押さえた抜け目ないイケメンだからだろう。

「そう言うお前はどうなんだよっ」

 今度は黄滝からこちらに話題のパスが飛んできた。

「いる訳ねぇだろっ」

「意外だなっ。てっきり華村さんと付き合ってると思ってた」

「なんでそこで華村が出んだよっ」

「いや、だってお前と華村、結構仲良さげだろうよっ」

「アイツとはそんなんじゃねぇんだよっ!」

 すると、黄滝は知らない名前を出してきた。

「なら、絵凪さんはどうだっ!」

 ボールをキャッチし、投げ返さずに答えた。

「絵凪って誰だっけ?」

「はぁ!?お前まだそんなこと言ってんのかよ。この間、教えただろうが」

 そんな会話をした覚えが全くない。

 絵凪という女子の存在を頑張って思い出そうとするが、頭の中のパーソナルコンピュータで、結論を出せず、フリーズした。

 グラウンドのど真ん中で、頭の中のマウスを矢印から考え中のグルグルに変形させ、突っ立っていると、

「危ない!!!」

 と、どこかで叫んでいる声がした。誰か暴投でもしたのだろうか、そう思っていると黄滝が、

「昊!後ろ!!」

「え?」

 後ろを見た時には、大ダメージを受けていた。というより、後ろを見たことで大ダメージになったのかもしれない。顔面に直撃してしまったからだ。

 グラウンドに鼻から血が垂れ落ちる。

「大丈夫か!?」

 黄滝と暴投した男子が駆け寄る。めちゃくちゃに痛いが、とりあえず、青ざめた男子を安心させてやることにした。

「オレなら大丈夫だ。多分鼻が切れて血が出ただけだよ。黄滝悪い、保健室に行ってくる」

「一人で大丈夫か?」

「16歳を舐めんなよ」

「ははっ、だな。気をつけてな!」

 とにかく鼻を押さえ、鼻を隠しながら、その場を立ち去る。

 なぜ鼻を隠さなかって?それは既にに鼻の怪我が治っているからに他ならない。

 これはオレ自身、異変に巻き込まれた時に手に入れた副産物というやつであり、不死身というわけではないが、死にさえしなければ、どんなダメージでも治ってしまう。鼻の怪我程度なら、一瞬で元通りである。だからといって、痛みを感じないというわけではないため、骨を折ったりする痛みも、しっかりと感じるため、極力、怪我などのダメージは受けたくないのだ。

 さて、怪我は治っても、このまま何もせずに戻ってきては、クラス中大騒ぎ、どころか学校中で有名人になってしまう。

 異変のことについては、後々が面倒になるので、基本的には関わった人以外には話さないようにしているのだ。

 そのため、保健室で鼻に詰め物をしておく。保健室の美人なお姉さん先生が不在であるため、赤い十字マークが付いている箱から、適当に道具をあさり、使えそうなものを、組み合わせて、演技を行う。

 そんなことをしていると、背後で気配を感じた。

「ん?誰かいる?」

 振り返り、後ろにあったカーテンで覆われたベッドに向けて、言葉を投げつける。言葉のキャッチボールだな。上手い。

 すると、それはそれは可愛い、黒髪ロングの容姿端麗という言葉が、よく似合う女の子が、カーテンを開けて、姿を現した。

「これは失礼」

 言葉のボールは返ってこなかったが、鋭い凍てつくような、人を殺せるかもしれないほどの、眼圧を飛ばされたことだけは、わかったので、すぐにベッドから背を向ける。

「鼻、どうかしたの?」

 しばらくの沈黙を破って、女の子が遅れて、ボールを投げ返してくれた。

「体育でヘマしちゃってね」

「痛そうね」

「大したことないさ。君はどうしたの?まさか、サボり?」

 変化球を投げてみると、

「まぁそんなところね。学校に来てても、空気みたいで、つまらないもの……」

 キャッチアンドリリースではなく、バットでホームランを打たれてしまった。

「なるほど。空気みたいって、まさか友達いないの?」

「ええ、いないわ」

 あっさりと認めてしまったではないか。オレも彼女を見習わなくては……。

「君、名前は?」

「絵凪。絵凪玲よ」

 絵凪、ついさっき黄滝が話していた答えを、まさかこんなところで合わせることができるとは、思いもしなかった。

 ひょっとすると、この伏線からの回収という流れ、ボーイミーツガールというやつなのでは!?

出会いのシーンをワンパターンではなく、色々なシチュエーションで行うというのは、意外と難しいですね。読者様を飽きさせないようなループを見せられるように頑張りたいと思います!

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ボーイミーツガールは大好物なので、読ませていただきました。 色々な出会いがあるというのは面白いですね! 応援させていただきます!
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