Part 4
バトルものよりは書きやすいのですが、キャラクターの詳細を文字列で伝えるのはなかなか難しいものですね(汗)
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
その日の放課後、立ち話で、その場の話で、その場凌ぎで、二、三分で、光の巨人が帰る時間で、解決できる尺ではなさそうなので、どう考えてもダメそうなので、誰もいない教室まで移動し、絵凪の口から彼女が、今まで抱えてきた問題について聞くことになった。
事の始まりは4月まで遡るらしい。遡るとは言ったものの、これは先月の話であるため、そう遠い遠い昔、はるか彼方の銀河系のような昔の話ではない。
絵凪玲、高校2年生、彼女の可愛さは説明するまでもなく、いまさら補足する必要もなく、補填する必要もなく、男であるならば、彼女を視界に捉えると、そこからは自然と目で追いかけてしまうほどの可愛さが彼女にはあった。
可愛い以上に可愛い美少女。どこから見ても美少女、見ているだけで幸せになれる美少女、全方位美少女、絵に描いたような美少女、美少女の擬人化、美少女が服を着て歩いている、服を着た美少女、美少女を着た服、棚から美少女、二階から美少女、高嶺の美少女、転ばぬ先の美少女、美少女も積もれば美少女、石橋を叩いて美少女、仏の顔も美少女、一寸先は美少女、馬の耳にも美少女、そんな美少女。美少女ビショウジョびしょうじょ。
さらに、彼女の魅力はその見た目だけでは止まらない。止まるところを知らない。絵凪は勉強もでき、成績は常に学年上位をキープし、運動もできるハイスペック女子というやつだった。なんということでしょう。
もうこれだけでも、お腹いっぱいなのだが、絵凪は性格も明るく、温厚で、人当たりの良い、今のように凍てつく、氷のような性格とは真反対だったという。この辺の話はどうに信じられない。信じ難いところではあるのだが………。
そんな誰にでも優しい彼女だったため、彼女のまわりには自然と友達が多く集まっていたのだという。それこそ、絵凪に言い寄ってくる、やましい事を考えた男たちからも、その友達が守ってくれていた程に、それは仲が良かったのだという。これまた信じられない話である。何故かって? 今の彼女にお近付きになりたい人がいるだろうか? 逆に問いかけたいところだ。
しかし、だがしかし、それは突然起こった。突如起こった。唐突に起こった。突発的に起こった。起こった、起きてしまった。
それはある日の朝のことだったという。彼女がいつものように登校し、教室で友達に話しかけた時のことだ。朝の挨拶をした時のことだ。他愛もない、何もない、意味なんてない、ただの友人との会話。その友達の第一声は、
「あなた、名前なんて言うの?」
だったという。最初は揶揄われているのだと思い、
「もうヤダなー!そんな冗談やめてよ!」
と、友達と戯れるように、肩を叩いたという。それこそ、この流れだって友人ならば普通のことだと思うわけなのだが、すると、そうすると、その友達は、冷めるような冷ややかな目で、
「ちょっとやめてよ。何?馴れ馴れしく叩かないでよ。友達でも何でもないのに……」
初対面の相手にいきなり肩を叩かれた怒りと、何故そうまで馴れ馴れしく接してくるのかという恐怖の、入り混じった声で、そう言い放った。そう言い放ってしまった。そう言い切った。そう言い切ってしまった。
友達の嘘のない顔を見た時、ふざけた様子のないその顔を見た時、何かがおかしいことに気がついた絵凪であったが、気が付いた時には、既に皆、自分のことを綺麗さっぱり、さっぱり綺麗に忘れており、忘れ去っており、どうすることもできなかった。
それでも絵凪は諦めず、忘れてしまったのなら、もう一度、友達になればいいだけのことだと、何度も声をかけた。でも、それでも次の日には忘れられてしまうことに耐えられず、心が折れそうになっていたところに、美崎昊、そう、まさかまさかのオレが現れたのだという。マジでか。このタイミングで何しにオレは現れたのだろうか。
何よりも驚いたのは、驚くべきは、何も、何一つも、覚えていないはずのオレが、彼女のことを知らないはずのオレが、既に彼女と出会っていたというところだ。
そんなわけで、こんなわけで、どんなわけで、あんなわけで、場面は今現在、5月12日に戻る。
「その話、本当なのか?信じたいの山々なんだけど、記憶がない以上、どう信じたらいいのか、わからないな」
どうにも信じられない、信じ難い、どう受け止めればよいのか、全くわからないお話に困惑していると、絵凪はスマホを制服のポケットから取り出し、慣れた手つきで画面を操作しだすと、すぐさまスマホの画面を見せてくれた。
そこには遊園地で、仲良さげな雰囲気を醸し出す、醸し出した、オレと絵凪のツーショットが、映し出されていた。
「マジか……!!」
絵凪の手からスマホを受け取り、その写真をマジマジと見た。見た見たとマジ。
「このアホ毛はどこからどう見てもオレだな……」
「ふふ、昊は自分のことをアホ毛で認識してるんだ」
写真を見せられたオレの反応に、絵凪は可愛らしく笑って見せてくれた。その姿を見て、
「君もそんな風に笑うんだ」
と、何故だか、心が温かくなった気がした。すると、そうすると、絵凪は顔を赤らめ、照れたように、
「わ、悪いかしら!私、本当は笑顔が一番似合うのっ!」
と、オレの肩をポカポカと叩く。
「悪くないけど、そういうのは自分では言わないと思うぞ?それに君は、オレのことを昊って呼んでたんだな」
さりげなく絵凪がオレのことを下の名前で呼んだことを聞き逃さなかった。聞き逃しはしなかった。それを受けて、また新しい疑問ができた。
「じゃあさ、オレは君のことなんて呼んでたの?」
そうすると、絵凪はさらに顔を、それはもう燃え上がるのではないかという程、真っ赤にして、恥ずかしそうに、小さな声で、
「あ、玲……」
ヒュー!っと、ヒューヒュー!っと、自分の話なのに他人の惚気話を聞いているように、他人事のように、冷やかしの口笛を吹いてしまう。
「もしかして、オレと玲は付き合ってたりしたのか?」
この質問に関しては、この質問に対しては、首を横にフルフルと振った。いや、付き合ってはないのかよ。
再び4月に遡り、美崎昊が意気消沈の絵凪玲の前に現れたことで、彼女の絶望的状況は一変し、新たな局面を迎えたのだという。
突如として現れた、マジ王子様なオレは、自分から絵凪に声をかけたらしい。思い出すこともできないが、何故そんなことをしたのだろうか?
オレと絵凪の出会いは、今日と同じく、同じように、昼休みの屋上だったようだ。お互い最初は独りで、寂しくご飯を食べていたが、そこからオレが声をかけたのが、全ての始まり。
彼女の姿を見兼ねてか、将又、ただのファインプレーか……。当時の消失したオレにヒーローインタビューを敢行したいところだ。
それはさておき、そして絵凪は自分のことを、誰も覚えていない世の中において、絵凪に声をかける人間は、誰1人いなかったそんな状況下で、自ら声をかけてくれた美崎昊に特別な想いを抱いたのだとか。
「君みたく可愛い子が、孤立することってあるの?」
が、第一声。想像以上に、ナンパみたいでダサいな。いや、ナンパみたいでダサいな。ダサいなナンパみたいで。
「悪い!?私だってこんなはずじゃなかったのよ!!」
と、何気ない、何の気ないオレの第一声に対して、絵凪はとても取り乱した。そんな彼女を放っておけなかったオレは、どうやら彼女に寄り添うことを決めたようだ。
彼女が独りぼっちになってしまった理由を知った、過去のオレは、明日、自分に何が起こるわからないと考え、ある提案をした。
「そうか、オレも明日は君を覚えてないかもしれないのかー。それなら、とりあえず明日を頑張るために、まずは今日を精一杯、楽しみ倒してやろうぜっ!」
そして謎の急展開。彼女を連れ出し、遊園地で2人揃って、大はしゃぎ。
ジェットコースターで酔ったオレに絵凪は、
「ソラって名前なのに、こういうのは苦手なのね」
と、クスクスと、スクスクと、笑いながら、可愛らしく言う。
「名前と体質は関係ないんだよ!」
それからも外が真っ暗になるまで、遊び倒した。
ティーカップでぐるぐると、くるくると、ぐるんぐるんと、くるんくるんと回って、回り回って、
「回し過ぎだぞ!落ち着け!」
メリーゴーランドで馬に乗る、馬に跨る、絵凪を見守ったりもした。
気が付いた時には、出会った時の絶望的な表情は、なくなり、どこかへと消えてなくなり、笑顔が弾け飛んでいた。笑顔に満ち溢れていた。
「やっぱり、玲は笑顔の方が何倍も可愛いな」
彼女の笑顔を目に焼き付け、そして続けた。
「明日、オレは君のことを覚えていないのかもしれない。でも、その時はまた友達になろう。明日を忘れたのなら、明後日、明後日もダメなら、明明後日だ。例え何度リセットされて、心が折れそうでも、今日の楽しい思い出が明日を頑張る力に、きっとなるから。明日も頑張ろうぜ」
すると、絵凪は---
「ありがとう////」
照れを隠そうにも、隠しきれていないそんな表情で、何一つ隠しきれていないそんな表情で、確かにそう言った。確実にそう言った。
そしてその日の最後の思い出を残すために、すぐに思い出せるように、この先に残っていくように、パシャリと、カシャリと、シャシャリと、ピシャリと、キャシャリと、1枚、たったの1枚、通りかかった人に写真を撮ってもらうことにした。
そして来る次の日、やはりオレは絵凪のことを覚えていなかったのだという。
それでも絵凪は前日、オレに言われた言葉を胸に、もう一度、美崎昊と友達になった。友達になってくれた。この時、先に声をかけたのは絵凪の方からだったらしい。
とにかく早く知り合って、すぐに仲良くなりたいという気持ちが強くなったのだという。だが、だがしかし、そこは記憶をなくしても、何も覚えていなくとも、やはり美崎昊だったようで、何も変わらないオレだったようで、すぐに絵凪と仲良くなり、今度は水族館へと繰り出した。
2人で水槽のトンネルを潜り、サメやペンギン、アシカを見た。
「あのペンギン、可愛い!」
絵凪はテクテクと、クテクテと、ペタペタと、クタクタと歩く、ペンギンに心を奪われていた。
「そういうお前も超可愛いぜ?」
「うるさいわよ!」
顔を真っ赤にして、肩を殴る。なにそれ、超絶可愛いではないかと。
そして最後には、イルカショーを堪能した。
「今日もありがとう」
帰り道に絵凪が御礼の言葉を発した。
「今日も……か。オレは昨日も君と遊んでるんだよね?どうしてそんな大切な事を思い出せないんだよー」
と、知らず知らずのうちに絵凪を悲しませている事に、ガッカリしてしまう。ショックを受けてしまう。心が苦しくなってしまう。
また次の日は、記憶のリセットを乗り越え、動物園にやってきた。そこでライオンやトラ、サル、そしてパンダを見た。
「見て!パンダ可愛い!」
指を指して、喜ぶ絵凪を見て、ホッとするような、救われるような、そんな気持ちになったのはどうしてなのか?
「また明日……」
帰り道でお分かれではなく、お別れの手を振る絵凪は、とても辛そうで、苦しそうで、悲しそうで、儚そうで、見るに耐えなかった。直視することはできなかった。それはそうだ。オレは明日になったら、この事を全て忘れてしまうのだから。何一つ覚えていないのだから。絵凪のことなんて知らないのだから。そんなもの、そんなこと、辛いに決まっている。辛くないわけがなかった。
楽しいことや、嬉しいことは次の日も共有したいものだ。いつになっても共有したいものだ。いつまで経っても共有したいものだ。それが彼女にはできないのだから。それが彼女には叶わないのだから。これが辛くないというのなら、それは心が枯れている。
走って彼女の元に急接近し、彼女を力一杯、力の限り、抱きしめた。
「大丈夫だ。明日も友達になろう。明後日も、明明後日も、その先もずっと、友達になり続けよう」
「うん……。待ってるね……」
だがしかし、絵凪の心は擦り減っていった。オレと来る日も来る日も、友達になっても、来る日も来る日もリセットされてしまう。なかったことになったしまう。そんな繰り返しの日々に、繰り返される日々に、彼女は辛い思いを抱くようになった。何故ならその度に、
『君は誰? オレたち初対面だよね?』
を、言われ続けるのだから……。
同じことを何度も言わせる男は最低だと、華村も前にどこかで言っていたように、オレは絵凪を知らないうちにそうさせていたのだ。傷付けていたのだ。
それに普通の人間である彼女が、そんな仕打ちに耐えられるはずもないのだから。
そして次第に彼女はオレを遠ざけるようになり、最後には、声をかけることすらもやめた………。
それから絵凪は友達を失くし、毎日のように辛い思いをするくらいなら、最初から誰も私の世界に入れさせない。と、心を固く鎖し、氷の女王になる決意をした。決意を固めた。確固たる意思を決めた。それ以降は、誰が声をかけようとも、冷たく、ただ冷たく、氷のように冷たく、人と必要最低限の会話だけをするようになった。
そしてオレは大切な友達だったはずの絵凪玲のことを、知らないまま、5月12日まで、来ることになってしまったのだった。
「そう……だったのか……」
この話を聞いても、過去の記憶は全くもって、何も、何一つも、これっぽっちも、これのぽっちも、蘇らないのだから、呆れてものも言えない。言葉も出てこない。
「じゃあ、今日のことも貴方は忘れてしまうのだから、気に病むことは何一つないわ。 それじゃあ」
と、絵凪は鞄を持って教室を後にした。
「何やってんだよオレ………」
4月の美崎昊は絵凪を助けることに失敗した。だが、だがしかし、5月の、今現在を生きるオレは必ず、今度こそ彼女を、玲をこの絶望から助け出してみせる。
律儀にツーショット写真を残していたり、オレのことを昊と認識していたり、彼女はとても可愛らしい乙女なのだ。年頃の乙女なのだ。氷でそれを隠しても、隠せないだけの乙女なのだ。隠しきれない乙女なのだ。そんな彼女の笑顔をもう一度、この世界に取り戻すのだ。なんとしても。
「だから………、オレはこの意志を、明日のオレに託すぞ!頼んだぞ! 明日のオレ!!」
鞄からノートを取り出し、真っ白な1ページに、空白の1ページに、オレの記憶と同じ1ページに、筆を走らせるのだった。記憶を刻み込むのだった。
絵凪玲を攻略した後は、次のヒロインと、テンポよく移ろうと思っていたのですが、絵凪だけで私はお腹いっぱいに、なってきているのですが、読者の皆様はどうでしょうか?
それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!