Part Final
今回で絵凪玲編完結でございます。
もうこれ以上は何も言いません!読んでください!感想は後書きで話すことにしましょう!!
それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!
5月23日---
テスト初日の朝がとうとう訪れてしまった。目覚まし時計に嫌々ながら起こされる。
「今日は負けでいいから、寝かせてくれ……」
テストが憂鬱で起きられないというのもあるのだが、昨日の晩御飯の満漢全席が思いの外、消化できていない気がして、身体が重いというのもあると思うのだ。
しかし、テストをサボると神月先生の後々が恐ろしいくて堪らない。神月先生の怒りの表情を想像するという行為は、目覚まし時計よりも目覚まし時計であった。そのことを考えただけで、眠気がさーっと引いていくのがわかった。そして大人しく起床した。
「はぁー」
カーテンを開けると、自分のテンションに反して、外は快晴になっている。窓から差し込む日差しが寝ぼけた顔を照らし出した。眩しい……。
重い足取りで洗面所へと向かう。
「お兄ちゃん、おはようございます!」
「おはよーおお」
朝の挨拶にあくびが入り混じる。
顔を洗い、朝御飯を求めてリビングにやってくると、テーブルには鯖の塩焼きと卵焼き、味噌汁、サラダに白ごはんが並んでいた。大好物である鯖、これはおそらく瀛がテスト期間であるオレに頑張れという、メッセージが込められているに違いなかった。
「さて、今日から1週間頑張るとするか!いただきます!」
好物を前に手を合わせ、気合いを入れるのだった。
朝御飯を終え、制服に着替え、身支度を済ませる。制服を身につけたなら、もうどうすることもできない。いざ、決戦の地へと向かうため、玄関の鍵を開けた。
「それじゃあ、行ってくるな。今日から1週間は昼まで学校終わるから早く帰ってこられると思うから」
「わかりました!いってらっしゃいまへ!!」
こうしてアパートを出る。通学路を歩いていると、歩きながらも教科書と必死に睨めっこしている生徒達を何人も見かけた。1点でも多く点数を上げたいと皆必死なのだろうが、オレはそんな無駄な抵抗しない。どんな結果になろうとも、その事実をちゃんと受け止める覚悟ができているからだ。というわけで、気分はかかってこいなのである。
まだ事実を受け止める覚悟のない生徒達を横目に、前だけを見据えて真っ直ぐ歩いていく最中、華村に遭遇した。
「美崎君、おはよう」
「おう」
「帰ってから勉強した?」
「なんのことやら」
「あー、その反応!さては勉強してないなー!」
と、華村が膨れる。膨れ顔も可愛いから困る。しかし、少しだけ変わったことがある。忘却クロッパーを解決してからの変化だ。華村に抱く可愛いと思う気持ちが少し変わったような気がするのだった。きっとこの気持ちにはある人が絡んでいる。その人の存在がオレの気持ちに変化をもたらしたようだ。
華村と合流してから一緒に学校へと登校する。校門を通り、ロッカーで上靴に履き替える。テストとは不思議なもので、こういったいつものルーティーンであっても、何故だか、いつもとは違うように感じられる。テストとはそれ程までに緊張感を持たされているということに先生も気付くべきでは?と思ったりする。
簀子の上で靴を履き替えていると、後から入ってきた、それはそれは綺麗な容姿端麗という言葉がよく似合う、それでいてその瞳は氷のように凍て付き、氷の女王のような鋭い視線を向ける、黒髪ロングの美少女が隣のロッカーを開けた。
上靴を取り出す仕草だけでも、とても綺麗で可愛い。そんな可愛らしい人なので、意識せずとも、見惚れてしまっていた。
視線に気づいたのか、黒髪ロングの美少女がこちらに、凍て付いた視線を向ける。
「おはよう、絵凪」
「私のこと覚えてるの?あれから2日も経ったのに?嘘、信じられない……。今まで誰も私を覚えてなかったのに、どうして?」
「テストの問題を解く前に、君の問題を解いただけのことさ。何もおかしくないだろ?」
「もう……馬鹿な人……」
彼女の瞳から氷が溶けたようだ。深く掘り下げる必要などない。今の絵凪の状態を説明するに、氷が溶けたという意外に最適な言葉が見つからない。
「ほら早く行こうぜ?ちゃっちゃとテスト終わらせて、オレは早く遊びたいんだよ」
そう言って絵凪と華村と3人で教室へ向かう。その中でこれまで絵凪の身に何が起こっていたのかを、その全てを華村に伝えることにした。テストが始まるまでの時間で説明し切るなんて、到底できるはずのない濃厚な出来事であったため、短時間で伝えるのは難しいところであったが、そこは華村も掣踆ペーシェントに悩まされた人間の1人ということもあって、あっさりと信じ、絵凪を受け入れてくれた。やっぱりオレの友人は素敵な奴ばかりだ。
ここいらで、感動のフィナーレかと思われたが、本当のラスボスは中間テストにあった。この魔の一週間を突破しなくては、ボーナスステージのデートに辿り着くことはできないのだ。愛しのお姫様を迎えに行くのに中間テストを乗り越えなければならない物語がこの世のどこにあるというのだろうか?4月の時点で絵凪を助けておくことができていたならと、何度も悔やまれてならない。
なぜ人はテストなどというもので、人を試し続けるのだろうか。そんな疑問が湧かなくもないが、その答えは意外と簡単である。馬鹿では世界を救えない、以上である。確かにその通りで、馬鹿ではこの世界をまともに機能させることは、この地球を有効的に使用することはできない。それでも馬鹿もこの世界には必要な種族であると、オレは思う。もし馬鹿になれる人間がいないのだとしたら、この世界は退屈でつまらないもので溢れ返っていることが目に見えるからだ。
そんなテストを受けたくないだけの男が、脳内で自論を唱えていると、黄滝が教室に入ってきた。
「よっ」
「おう。デートは楽しかったか?」
「おかげさまでな。そっちこそ勉強会は楽しかったか?」
「勉強会が楽しいわけないだろ?」
「それもそうだな」
「「あっはっはっは」」
2人して笑う。一体なんなんだ、このやり取りは。そんなくだらないやり取りを、いつものように展開していると、神月先生が入ってきた。
「ほら、座れ。出席とるぞ」
そう言ってクラスが揃っているかを、見渡して確認する。それから一言、
「よし、テストをサボろうなどという、馬鹿者はいないようで何よりだ。言われなくてもわかっている思うが、今日から1週間、テストだ。本当ならテストで人を試すようなことはしたくないが、テストはお前たちの人生を切り開くためには、どうして必要ものだ。ここで結果を出して、未来を切り拓け!以上だ!」
そう言い残し、颯爽と職員室へと帰っていった。いつも死ねだなんだと毒舌な神月先生だが、今日は珍しく良いこと言うではないか。これがゴリゴリのファンタジーものなら、慣れないこと、らしくない優しさを見せた神月先生は退場回で間違いなかっただろう。
そして神月先生と入れ替わるような形で、テスト監督の先生が入ってきた。
「それじゃあ、これより現代文の試験を始めます。用紙を配りますが、始めというまで伏せたままにしておいてください」
このテンプレートのような台詞を聞くと、いよいよテストが始まるのだなと、覚悟を否が応でも決めさせられる。
チャイムと同時に、
「始め」の声が発せられ、教室内でペラっ!と問題用紙をめくる音が響き渡るのだった---
初日のテストが終了し、筆記用具をしまい、下校の準備を始める。
「テストできたか?」
黄滝がテストの出来を尋ねてくる。テスト期間において、思うことはいくつかあるのだが、このテストの出来を尋ねるという行為に関しても思うことがある。
「まぁまぁかな」
「まぁまぁかー」
「お前はできたのか?」
「できたような顔に見えるか?」
「確かに中の中って顔だな」
「それは今関係ないだろ」
テストの出来を尋ねると行為は、一体誰が何のためにするのか意味不明な行為であると思えてならない。相手の出来を尋ねて一喜一憂する人間の価値観は、いささか謎である。そしてこの行為は、テスト返却の際まで引きずられるのも難儀である。このテスト終了時に尋ねられた際に答えた内容によっては、なぜか嘘つき呼ばわりされたり、馬鹿呼ばわりされたりするからだ。
あまりできなかったと答えて、点数が高ければ嘘つきとみなされ、できたと自信満々に答えて、点数が低ければ、それは単なる馬鹿である。
以上のことからテストの出来を尋ねるのは無意味であると、オレはここに提唱いたします。
まぁそれはさておいて、こうしてテスト期間が幕を開けた。
テスト期間は半日で学校が終わってくれるため、テスト自体は悪魔のようだが、時間が経過するのは、本当にあっという間であった。そして特に面白いイベントがあったわけでもないので、テスト期間中の出来事は割愛させていただきます。
てなわけで、今現在5月27日、テスト最終日まで話が飛ぶ。
「さて、今日でテストも終わりだ。とりあえず、結果はどうあれ、今日までよく頑張ったな。土日はゆっくり休め。そして月曜日からはまたスイッチを切り替えて、頑張り倒して、お前らには死んでもらう。よし解散」
相変わらずの神月節を炸裂させ、ホームルームとテスト期間が幕を閉じたのだった。
これでようやく全てから解放され、心置きなく楽しむことができる。というか、もう明日まで待ちきれない!ということで、絵凪の元へとやってきていた。
「何?」
「せっかくテストも終わって、今から暇だろ?」
「まぁ……そうだけど、何?」
「なら、今から行こう!遊園地!」
こうして半ば強引に絵凪を遊園地へと連れ出すことに成功したのだった。その電車の中で---
「何でまた今日なのよ?約束は明日だったでしょ?」
「別にいいだろ?明日まで待てないってやつだよ。それに制服デートっていうのも、悪くないだろ?」
「それはそうだけど……せっかく明日なに着ていこうか考えてたのに……」
絵凪はボソリと残念そうに呟いた。
「ん?なんか言ったか?」
「何でもないわよ!」
と、勢いよくオレの顔をビンタした。
「いたー!何でビンタ!?」
「ふん!」
氷が溶けたというのは撤回した方がいいかもしれない。彼女が氷の女王なのは、忘却クロッパーを解決した今も、健在であった。いや、氷の女王というよりは意外とツンデレという言葉でも収まるような気もするが、どちらでもいいので氷の女王にしておくとしよう。
電車を乗り継ぎ、ついに念願の遊園地に到着したのだった。テスト終わりの時間から出向いているので、日は少し傾きを見せてはいるが、まだまだ十二分に楽しむ時間は残されているので、全力で楽しむことにしようではないか。
そう思って横にいる絵凪に目を向けると、遊園地の入口の前で目をキラキラと光らせる可愛らしい等身大の少女がそこにはいた。
「ほら、ボーッとしてる遊ぶ時間なくなっちまうぜ?」
「い、言われなくてもわかってるよ!」
入場券を買い、入口を抜けたのなら、そこはもう夢の国の中だ。
「何から乗るんだ?」
「んーじゃあ、ジェットコースターかしら」
そういえば、この人は一度オレとここに来ている記憶を保持しているのだった。ということは、当然オレがジェットコースターを苦手としていることも、ご存知のはずだ。そこであえて選んでくるというのは、嫌がるオレの顔を見て、楽しむためなのだろうと容易に想像できた。
「確かにドの付くSっぽいもんな」
「どういう意味よ!ほら、つべこべ言わずに早く乗るわよ!」
「ちょっと待ってくださいよぉーう!」
そんなこんなで無理矢理ジェットコースターに乗せられ、安全バーで動きを封じられた。これでもう逃げる事は叶わなくなってしまった。
「楽しんできてくださいねー!」
そう言うお姉さんの笑顔が悪意のある顔に見えてならない。そしてジェットコースターはオレの都合などお構いなしに発進するのだった。
「うわぁあああああ!!」
この内臓が浮き上がっている感覚がもう堪らなく嫌だ。隣で楽しそうに叫ぶ絵凪を見て、これの何がそこまで楽しいのかと思いながら、グルングルングルングルンとジェットコースターは、まわりにまわって突っ走り続けた。そして帰還。フラフラである。
「あはは、ホントだらしないわね」
「ジェットコースターはダメなんだよ……」
「次はティーカップに乗るわよ」
ジェットコースターの酔いが覚めやらぬまま、今度はティーカップにライド。
再びグルングルングルングルンと、ティーカップは回る。というか、回しているのは絵凪だったりするのだが……。
「回しすぎとか思ったりしません?」
「そんなこと思うわけないじゃないっ!」
そう言って回転スピードはさらに加速していく。
「もうよしてくれぇーい!」
ティーカップも何とか耐え凌ぎ、ベンチで休憩することになった。
「あー、楽しっ」
無邪気に楽しむ彼女を見ていると、本当に良かったと心から思う。きっと忘却クロッパーを解決する人間は誰でも良かったのだ。きっと4月の屋上で出会っていなければ、今頃こうして遊園地を楽しむこともなかったかもしれない。だから、本当によかった思う、屋上にいたのがオレで、その役回りを請け負うことができて。
ベンチで休んでいる間、絵凪はメリーゴーランドに乗馬していた。その姿を眺める。
しかし、楽しい時間が過ぎるのは、本当にあっという間で、日は落ちきり、外は真っ暗になっていた。そして遊園地は夜のイベントに向けて、華やかにライトアップされ始めた。
そして遊園地の園内放送でアナウンスが流れる。
「皆様、今日はお越し頂き誠にありがとうございます。今日はこの夢の国の国王様の誕生日でございます!皆様、拍手をお願いします」
園内でパチパチと皆、それぞれ手を叩く。さらに園内放送は続く。
「さて、ここから本題です!国王様の誕生日を祝うパーティーをこれから開催します!これから流れる素敵な音楽に合わせて、お友達、家族、恋人、時には隣の見ず知らずの方とでも!パートナーを見つけて皆で踊りましょう!!」
園内に設置されているスピーカーからムードのある音楽が流れ始めた。これは本当に夢の国の映画のようだ。
そしてお客さんたちは、まわりを見渡しながら、踊りを始めた。
「マジか。凄い時に来ちゃったなー。どうする?踊るか?」
「ふん!そんな雰囲気じゃ踊りたくないわ」
「なんだよそれ!?」
「私と踊りたいなら、ちゃんと誘ってみなさいな」
「ったく、お嬢さん、オレと一曲どうですか?」
「仕方ないわね。踊ってあげる」
こうしてオレは彼女の手を取り、ダンスを始めた。最初は恥ずかしさもあって、ぎこちないダンスというより、動きだったが、音楽がサビに差し掛かった時、自然とダンスを楽しみながら踊れているような気がした。
彼女がくるりと回ると、動きに合わせてスカートが美しくヒラヒラと舞う。その姿はとても綺麗で可愛い。目の前にお姫様がいると、そう錯覚させられた。そして彼女に近づき、再び手を取る。これじゃあ、本当に映画の世界にいるようだ。
オレたちがあまりにも自由に、そして楽しそうに踊るものだから、周りの人たちは、踊りを止め、オレたちの踊りに見入っていた。
「見て、あの2人……。素敵」
「あの子、綺麗……」
「まるで映画みたい!」
口々にそんな声が聞こえる。
「みんな見てる、恥ずかしいわ」
恥ずかしそうに、それでいて、どこか嬉しそうに玲が言う。
「あらら、ホントだな。でも、もう誰も君のことを忘れないぜ?君はみんなの記憶に残り続けるんだ。これからずっと、ずっとね!」
「もう!バカ……」
玲は顔を赤らめた。
5月30日---
オレは職員室に足を運んでいた。
神月先生に長らく、いや、そこまで長くもないが、そこそこお世話になった過去の美崎昊たちが作り上げてきた絵凪玲実験ノートを手渡した。
「いいのか?これを私に渡して」
「ええ、オレにはもう必要ないものですから」
「そうか、ならこれを今回の報告書として受け取っておこう」
こうして職員室を後にした。神月先生はオレが出ていくのを見計らい、ノートをめくる、めくる。
ノートにはご存知の通り、オレが玲を助けるために頑張りに頑張った記録が残っている。
そして一番最後のページ、そこにあることを書き足しておくことにした。
それを見た神月先生は、
「ったく、馬鹿野郎がっ」
と、笑みを浮かべるのだった。
職員室を出て、廊下を歩いていると、玲が待っていてくれた。
「もう用事は済んだの?」
「ああ、もうバッチリだ。んじゃ、行こうか」
「うんっ!あのね、ありがとう。好きよ」
玲はとても可愛らしい笑顔でそう言った。
「ああ、オレも君が好きだ」
探り探りに手を繋いで、オレたちは廊下を歩いていく。
『オレたち付き合うことになりました。』
めでたしめでたし。
踊るプリンシパルというのは、本当に踊るからこういうタイトルなんですという伏線回収をしておきます。そしてこのダンスシーンが私が最も今作で書きたかったシーンでした。実は私はディズニープリンセスがとても好きでして、こんな作品を書けたらいいなと、始めたの今作だったりするのです(笑)
どうなるかと思いましたが、無事絵凪玲編を完走することができました。ここまで読んでくださった読者の皆様(多分いない)ありがとうございました!ここまで頑張れたのは、一重に皆様のおかげでございます。第1話の完結にあたって、感想等もお待ちしております!!
それでは第2話をお楽しみに!!




