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『乙女モード』全開☆のオレと、踊るプリンシパル  作者: 千園参
第1話 You can't remember 《  》 -あなたは『  』を記憶できない-
22/30

Part 22

あと2話ぐらいで最終回です。本当に完結できるのでしょうか?

心配です。自分のことながら心配になってきました。

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

 5月22日---

 土曜日は眠りに眠って勉強など、全くしていない。土曜日のオレは日曜日のオレに大きな期待を込めたはずだったのだが、日曜日のオレは土曜日のオレ以上にやる気がないことに気がつくのに、そう時間はかからなかった。

「勉強する気にならんな……」

 リビングに顔を出すと、瀛がテレビを観ていた。

「お兄ちゃん、おはようございます!」

「おはよう」

 テーブルに腰掛け、予め用意されていたトーストをかじる。そして牛乳を飲みながら、テレビに目を向ける。

 テレビに映し出されていたのは、美味しい中華料理店の紹介であった。これは今日の晩御飯は満漢全席だなと、晩御飯の予報が容易に考えられた。

 しかし、現在時刻は午前9時半過ぎ。そして何より今日は日曜日、ということは満漢全席は昼御飯という可能性も捨てきれない。あとは、昼からの番組で接戦を見せてくれる選手が現れるか、どうかも大きく左右するところである。そんなことを考えながら、朝食を終え、皿を洗って食器棚に入れる。

 それにしても今日はいつにも増して平和な1日が訪れたような、そんな気分であった。明日からのテストは耐え難い苦痛であることに間違いはない。だが、今回はテストに挑むモチベーションが明らかに違うのだ。そう何故なら、テスト明けの土曜日は絵凪とデートだからであるに他ならない。

 実際問題、絵凪が賀晴高校において、どの程度の人気や知名度があったのかは、今となっては、忘却クロッパーによって知る由もないことだが、そんなことを踏まえずとも、絵凪の容姿は間違いなく可愛い。そんな可愛い美少女とデートができること自体、千載一遇のチャンスと言えるだろう。ついに彼女いない歴、歳の数のオレにも春到来か!?一つだけ、絵凪に惜しいところがあるとするならば、それは滅多に笑わないところにあるかもしれない。

 基本的に凍てついた強面しか、記憶にないので、今回のデートでは確実に笑顔を引き出したいと思っている。

 まだ1週間も先の話だと言うのに、今からワクワク、ドキドキしてならない。まるで気分は遠足前夜の小学生のようだ。今からそんな気分では、前日になった時、どうなってしまうのだろうか?ドキドキしすぎて、発作でも引き起こしてしまうかもしれない。いや、この場合、掣踆ペーシェントを引き起こすと言った方が笑いが起こるのだろうか?そうは思えない。笑えないブラックジョークである。

 さて、こうしてはいられない、一刻も早くデートプランを考えなくては。作戦会議を行うために自室へ戻る。

 絵凪以上に活躍した、最早、今作のヒロインと言っても過言ではない、お馴染みノートを取り出して、これまでのように作戦を書き連ねようではないか。

 シャープなペンシルを握り締めたところで、動きが止まる。

「何を書くんだ?」

 勢いよく勉強机に座ったのはいいが、この真っ白な1ページに何を書くつもりでいたのだろうかと、ふと我に返った途端に、書きたいことを失ってしまった。いや、失ったのではない。何も書く必要がないのかもしれない。

 何をするわけでもない。ただ純粋に絵凪との時間を楽しむことにしようではないか。

 しかし、せっかくこうして勉強机と向き合ったので、勉強をした方がいいのだが、それを考えると、どうしてもやる気が起きない。さすがにこのままノー勉で挑むほどの勇者でもないので、図書館に足を運んでみることにした。

 なぜ図書館なのかと聞かれると、図書館にはあの人がいるからだ。そう華村真琴である。

「あら、美崎君、どうしたの?」

「ああ、家じゃ集中できないから、お前もいることだし、たまには足を運んでみようと思ってな」

「なるほどねー。家ってなんだか不思議な力があるよね。家に帰ると妙にダラけたくなるっていうかね」

「へぇー真面目なお前でも、そういうことあるのか?」

「私を何だと思ってるの?」

 華村が目を点にしながら言う。

「仏かなんかだろ?」

 それに対して当然のように答える。

「違うってば!」

「そうなのか?」

「そうだよ!」

 そんな話をしていると、図書館員のおばさんに、しっ!とやられてしまった。これに関しては、ただただ従うしかなかった。図書館において図書館員さんはルールであり、法だからだ。

 とりあえず、挨拶も終わったところで、華村の横に座り、リュックから漢字の教材を取り出し、漢字の読み書きを始めた。しかし、残念なことに、隣に座っている真面目を擬人化させたような華村とは違い、日頃から勉強癖がないオレは、すぐに飽きてきてしまうのだった。

「ちょっとー、もう終わりですか?」

 その様子に気づき、華村が教科書と向き合いながら、声をかけてきた。

「普段やらない、慣れないことをしても、やっぱ長続きしないもんだな」

「まぁー、人は習慣と癖でできるしねー」

「習慣と癖か」

 習慣と癖で、できているとは、よく言ったものである。人間はどうしてだが、習慣にないことに対して、それを習慣付けようとするのに、とてつもない苦労を要する仕組みになっていると思う。そんな仕組みであるが故に、何かを習慣付けようとする過程において、人は悩み苦しみ葛藤するしかない。そして己との戦いに勝利できる人間が果たして、この根性論だけでは解決できなくなり、複雑かつ難解となった現代に、どれほどいるのだろうか?

「ボーッとしてるけど、大丈夫?」

 華村が下から顔を覗かせる。これは不意打ち的に可愛い。

「ん?ああ、大丈夫だよ」

「本当に?何か変なことでも考えてたんじゃないですか?」

「そんなことはないぜ?」

 本当にそんなことはないと思うのだが、華村のジト目を見る限り、信用はされていないようだ。

 それから華村と会話をしながら、テスト勉強を行い始めて、2時間程度が経過した頃---

「私、そろそろ帰るけど、美崎君はどうするの?」

「なら、オレも帰るよ。1人でいても、到底勉強できるとは思えないしな」

 帰り道、他愛のない会話をしながら歩いていると、目の前からオシャレをしたカップルが歩いてくるのがわかった。そのカップルをよくよーくよくよく見てみると、黄滝と藤宮であることが判明した。

「おう、昊と華村じゃないか。まさかお前らがそういう関係だったとは意外なような、意外じゃないような、だな」

 と、黄滝の方から声をかけてきた。

「そんなんじゃねぇっての!勉強会だよ勉強会!そっちこそデートか?テスト前だってのに余裕だなー」

 すると、黄滝は溜息をついた。

「余裕じゃないっての。余裕だったらいいんだけどなー。余裕がないから、こっちも勉強会だ」

「なるほどねー」

 ジト目で黄滝を見つめる。

「その目はなんだよ!」

「いや、お前がただの勉強会をしてるとは、思えないだけだ」

「お前なぁ」

 こんな会話をしばらく繰り広げたところで、華村が核心をつく、一言を放った。

「それで勉強会ってどこでやったの?」

「「「………」」」

 華村以外のオレたちは沈黙に包まれる。確かにオレと華村は図書館で勉強していたため、帰る必要が出てくるため、こうして帰り道を歩くわけだ。制服を着ていないところを見るに学校で勉強していないとなる。そして家で勉強会を開催した場合、帰り道を歩くのは1人になるはず。その違和感を華村は突くのだった。さて、この逆境をザ・中の中、黄滝はどう返すのやら。

「家で勉強して、はいさようならは寂しいだろ?だから、家まで送ってるんだ」

 その手があったか。これに対して華村はどう出るのか。

「でも、もしそうだとするのならば、どちらかは普段着、部屋着を着ていても、変じゃないと思うのだけれど、どうして2人とも、よそ行きの服を着ているの?」

 鋭い。子供用ナイフのように鋭い。え、それは鋭くないって?気にしない気にしない。

「これは……」

 これはいよいよ、チェックメイトということか。

「これは勉強会と言っても、一応彼女とのデートも兼ねてるから、最低限の身だしなみってことなんだけどなー」

 そういう誤魔化し方があるとは、予想外であった。いや、というよりも、この誰も誰とて、誰一人得することのないこのやり取り自体がどうでもいいのだが……。

「あ、オレ、そろそろ帰らないと妹が心配するから」

 そろそろ気まずさも出てきたところで、話を中断すべく声を上げた。それを聞いて華村や黄滝も解散ムードになってくれたので、よかった。

 黄滝、藤宮カップルと分かれた後、華村と途中まで一緒に帰り、その後、分かれた。

 そして家に帰ると、何やら美味しそうな匂いが立ち込めている。

「あ、お兄ちゃん、おかえりなさいまへ!」

 この匂いは、やはり間違いないだろう。真相を確かめに台所へ向かうと、麻婆豆腐が既に完成しており、現在は酢豚を作っている最中であった。

 当然、満漢全席とまではいかないのだが、それでもテレビで観ただけで、ここまで作れてしまうのは、才能以外の何物でもないだろう。

 さっきまで対してお腹が減っているという感覚はなかったのだが、瀛が生み出す料理から放たれる匂いによって、お腹から叫び声が聞こえてくるようになった。

「あー、腹減ったな」

「お風呂も沸いているですよ?」

「んじゃ、風呂に入るとするか」

 勉強疲れを湯船で落とす。勉強疲れとは言っても、そこまで勉強していないことは、言わないでおこう。

 風呂を終え、リビングに行くと、麻婆豆腐に酢豚、そしてエビチリが並んでいた。3品も作っていたとは驚きである。

「凄いな。中華料理屋に来たみたいだ」

「もうっ、大袈裟ですよ!」

「大袈裟じゃないって、本当にすごいよ」

 待ち遠しいので、前置きも程々にして、椅子に座る。

 そこからは、もう記憶にない。とまでは言わないが、それでもお腹が待てを聞いてくれないので、座るや否や、パンと手を合わせた。

 早速、取り皿とレンゲを使いこなし、麻婆豆腐を食べる。あまりの美味さに言葉を失ってしまうと同時に、お腹の鳴き声も一瞬のうちに黙らせてしまったではないか。

 やはり瀛は良いお嫁さんになると、確信せざるを得ない。それにはやはり今の引き篭もり状態をどうにかしなくてはならない。とは言ったものの、引き篭もりだけは、オレにどうこうしてやれる問題でもない。確かに手助けをすることはできる。しかし、神月先生が掣踆ペーシェントと相対する際に、よく口にする、掣踆ペーシェントは同じ青春を生きる者にしか解決することはできない。これと同じで、問題は当人が解決する意思を見せなければ、誰も解決することはできない。

 絵凪がこの理不尽と戦ったように、瀛もいつかは戦わなければならない日が来るのだろう。

 だが、仮にその日が来たとしても、瀛まだ心身共に幼い。そんな妹が1人で立ち向かえるほど、掣踆ペーシェントとそれを引き起こす現実が優しいものではないことをオレは知っている。

 華村の言う通り、瀛を護ってやらなければ……。

私が子供の頃、お母さんが作る麻婆豆腐が凄かったのを覚えています。麻婆豆腐と呼ぶにはシャバシャバのスープ調で、スプーンで掬うと、何やら透明な大きな塊、そう水溶き片栗粉の群れですね。それが出てきたりする面白い麻婆豆腐でした。この回を書いている時、そんな思い出がふと蘇りました。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

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