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『乙女モード』全開☆のオレと、踊るプリンシパル  作者: 千園参
第1話 You can't remember 《  》 -あなたは『  』を記憶できない-
20/30

Part 20

いよいよ絵凪玲編もクライマックスに片足を突っ込んできました!!

どんな結末を迎えるのか、楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

 なんかいい感じに分かれる雰囲気になったのはいいが、こういう時って濡れた身体を温めるために『今日、誰もいないの。上がっていく?』的なイベントがあるのではないだろうかと言いたい。言わせてくれ。

 しかし、絵凪はそんなことを言う気配など、これっぽっちも見せることなく、家へと足を踏み入れようとしている。

「ちょっと待てくださいよぉーう!」

「なに?まだ何かあるの?」

 絵凪が少し面倒くさそうに、こちらを振り向く。

「なんかオレに言うことない?」

 そう言うと、絵凪は少し悩んでから答えた。

「ないわね。それじゃあ」

 と、家に向かって歩き出す。

「本当に何にもないのかな!?」

「本当に何にもないから、また来週」

 バタン!と家の扉が閉まった。今日誰もいないのイベントの夢は脆く崩れ去ることとなった。

 絵凪の家の前で突っ立っていても仕方がないので、家に帰ることにした。

「はあー」

 なんだか惨めな気持ちになったような、さっきまでのこともあって、ならなかったようなという、複雑中の複雑な気持ちになる。

 ここは家に帰って瀛に癒してもらうしかないかもしれない。

 こうして歩き始めて、しばらくしたところで、絵凪宅の扉が開いた。そしてやってきたのは、可愛らしいラフな格好に着替えた絵凪であった。

「ん?どうした?」

「これ」と、絵凪がタオルを手渡してくれた。

「いいのか?」

「もうすぐテストなんだから、風邪引いたら大変でしょうが」

「ハクション!」

 雨に打たれ続けたことで、クシャミが飛び出してしまった。それを見た絵凪は、

「もう汚いわね。ほら、早く上がっていきなさい」

 まさかの時間差でのイベント発生だった。これはもしや絵凪はツンツンデレデレというやつなのでは?

「絵凪がどうしてもって言うなら、上がってやらんこともないな」

「じゃあ、上がらなくていいわ」

「すんません!嘘です!上がらせてください」

 過去のオレもこのように絵凪の尻に敷かれていたのだろうか。ノートにあえて書かなかった辺りも少し怪しい。しかし、とりあえず形はどうあれイベントに持ち込むことができたのは、ラッキーだろう。

 絵凪の家はとても大きく、そしてそれは見た目だけではなく、部屋数も多く、とても広々としている。だが、広々と感じられるのは部屋数だけが理由ではないのもまた事実であろう。家には誰もいる気配がなく、家内を支配している静かさが、この家をより広く感じさせた。

「シャワー浴びていくでしょ?」

「いいのか?」

「別に浴びなくてもいいけど、そのままだと寒いでしょう?」

「お言葉に甘えさせてもらうよ」

 そんなわけで浴室へ案内してもらい、脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを借りることになった。そしてその浴室がこれまた広いのだった。

 シャワーを浴び終えると、着替えが置いてあった。制服は例の通り、びしょ濡れなので気を利かせてくれたのだろう。有り難くその服を着させてもらう。

 その服でリビングに向かうと、絵凪が待っていた。

「ごめんね。男物の服ってお父さんのしかないの。我慢してね」

「いや、ありがとう。助かったよ」

「もう少しゆっくりしていくでしょ?お茶でも出すわね」

「いいのか?」

「どうせ誰も帰ってこないし、いいわよ」

 そう言って絵凪はキッチンでお茶を用意してくれた。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

 華村から出される御茶は、飲むまでが長いわけだが、絵凪から出されたお茶は、前置きなんて無しでそのまま飲む。

 一口飲んで落ち着いたところで、部屋を見回す。本当に人1人の気配もしない。

「さっき誰も帰ってこないって言ってたけど、仕事か何か?」

「ええ、両親は2人とも仕事で海外にいるの。だから、家には殆ど帰ってこないの」

 まさか絵凪家に、そんな秘密が隠されていたとは知りませんでした。と言いたいところだが、このことはノートの引き継ぎで既に知っていることであったが、素直に知っていると言うと、誰から聞いた、神月先生から聞いたと、芋蔓方式で個人情報を簡単にバラしてしまった先生の立場が危うくなるので、知らないフリをしていた方が、何かと都合が良いのである。

「それは家族がいないって辛いよな。話したいこともいっぱいあるのに、誰も聞いてくれない。そうだろ?」

「うん。寂しい……。きっと2人は私のことなんて、忘れているのよ」

()()()()ねぇ……」

 両親への想いが歪みを起こし、彼女は掣踆ペーシェント『忘却クロッパー』に囚われることになったのだろう。自分は忘れらているも同然だと。だが、その勢いは、両親だけに留まらなかった。影響は自分の友人たちにまで及んでしまった。そして彼女は本当に忘れられてしまった。家族のことを解決できれば、本当は万々歳なのだろうが、そんなことができるほど、スーパーヒーローではないオレは、絵凪の痛みを分かち合うことぐらいしかできない。

「実はうちも両親が家に帰ってこないんだ」

「そうなの?」

「ああ、もう何年も前の話だけど、交通事故で死んでから、それ以来、家に帰ってこないんだ」

「そう……だったの……」

 絵凪がとても辛そうな顔した。まるで自分のことのように心を痛めてくれた。初めて会った時、氷のように凍てついた瞳を見た時、この人は怖い人なのだろうと勝手にそう思っていた。どうやら、それは違ったようだ。

 彼女はとても優しい。そして感情が豊かだ。それ故に傷つく。忘れられたことに対して、傷つく。傷ついた痛みを知っているからこそ、彼女はまた誰よりも優しくなる。

「じゃあ、ひとりぼっちなの?」

「いや?オレには瀛って妹がいるから、寂しくないぜ?」

「妹がいたのね。知らなかったわ」

「だろ?オレたちはお互い知らないことだらけだ。幸いオレたちはまだ2年生の5月。これから時間はたっぷりあるんだぜ」

「それもそうね。じゃあ、たっぷりと時間をかけて、あなたをもっと知ることにするわ」

 それから少しゆっくりして、瀛が心配するということもあって、家に帰ることにした。帰るまでの間に制服が乾くことはなかったので、お父さんの服をそのまま借りて帰ることになった。

「今度は家に遊びに来いよ。妹を紹介する」

「わかった。楽しみにしてるわね」

「あと、テスト明けのデートのことなんだけど、行きたいところあるか?」

 女の子が何を好きなのかというのは、妹を見ていればなんとなく分かりそうなものだが、妹はお家大好きっ子でもあるため、少し人と感性がブレているというのも否めない。そのため、本人に聞くのが一番手っ取り早いと思うので、尋ねてみることにした。

「そうねー。それじゃあ、遊園地なんてどうかしら?」

「どうして遊園地?」

「大切な思い出がある場所なの……」

 絵凪は儚げに遠くを見つめて言った。

「わかった。土曜は遊園地に行こう」

「うん。また土曜日に」

 こうして絵凪宅を後にした。

 家に帰ると、瀛がやはり心配そうに玄関にやってきた。

「お兄ちゃん!帰りが遅いので、何かあったのかと心配しました!!」

「ごめんごめん」

「あれ?お兄ちゃん、なんですか、その格好は?」

「これはちょっと雨宿りしたところで、貸してもらったんだ」

 すると、瀛は怪しむような目を向けてきた。しかし、嘘は言っていない。雨宿りした絵凪邸にて借りたものだからだ。

「本当ですか?」

 どうやら信用できないようで、瀛はオレに近寄り、匂いを嗅ぎ始める。

「女の匂いがするです」

 いや、多分それは女の匂いではなく、絵凪父の匂いだと思うのだが、そこについては黙っておくことにしよう。

「女の子の匂いは多少するかもしれないが、本当になんでもないんだよ。本当に雨宿りさせてもらっただけだ」

 瀛にはその一点張りで押し切り、もう一度ちゃんと風呂に入ることにした。

 風呂を終え、自分の部屋着に着替えると、リビングに向かった。

「じゃじゃーんなのです!」

 そう言って瀛がテーブルに広げたのは、ホットプレートであった。

「これで何をするんだ?」

「今日はもんじゃ焼きなのです!」

 なるほど、さては今日テレビで美味しいもんじゃ焼き屋特集でもやっていたのだろうと、容易に察しがつく。

 というわけで1人1玉ずつ、もんじゃを焼き始める。ジューという心地よい音を立て、鉄板ものの香ばしい匂いが鼻を刺激する。完成が待ちきれなくなってきた。そしてできたと同時につつく。美味い。不味いはずがない。

 ペロリと平らげ、2玉目をホットプレートに投下する。それも食べ終えると、お腹いっぱいで動けなくなっていた。

「ダメだー。お腹パンパンで動けん……」

 明日が土曜日で助かった。お腹の調子を整えてから、皿洗いをすることにした。

 それから皿洗いを終えて、自室に行くと、いよいよ最後の実験が幕を開けようとしていた。実験と言うべきか、なんと言うべきか、というのは迷いどころではあるが、これが『絵凪玲を救う方法』の実験⑷とでも言うべき段階だろう。

 電気を消し、布団に入る。

 今日は色んなことがあったので、とても疲れていた。そのため、夢の世界に旅立つのに、そう時間はかからなかった。眠らないことには実験⑷に移行できないので、好都合である。現在23時をもってオレは就寝した。


 目覚まし時計の鐘の音がオレの部屋に響き渡る。そしてパッと目を覚ます。やはり目覚まし時計との凄まじいデッドヒートは、引き分けに終わってしまう。だが、今はそんなことを言っている場合ではないのであった。

 5月21日午前0時---

 日付が変わった丁度その時間、目の前にはこの世のものならざるナニかが、立っていた。立っていた?浮いていていた?よくわからない、そのナニか。

 その見た目は死神のようで、黒いボロボロの布で身体中が覆われており、その手には人1人分以上の大きさを誇る、それは大きな鎌を持っていた。

「クロッパーって、物理的にクロッパーなのかよ……」

 このぶっ飛び展開には思わず笑いが込み上げてきてしまう。これこそが今回、絵凪玲を苦しめていた忘却クロッパーの正体というわけなのだろう。この死神の登場条件がまだハッキリしていなかったため、今回は賭けであったが、お引き出せてラッキーと言えるような、この状況を考えればアンラッキーのようなである。

 今日の授業中に寝ていたら、教室のど真ん中にこの死神が出現するのか、どうか疑わしいところだったが、教室のど真ん中で戦うよりは、ここの方がまだマシだろう。あくまでもマシであるということが重要である。

 この死神から一閃をもらうと、絵凪に関する記憶が刈り取られてしまうのだろう。ノートに書いてあったクロッパーを覚えておけというのと、乙女モードがなければ解決できないと言うのは、この状況に遅かれ早かれ、死神と対峙することになるということを、神月先生は気付いていたということなのだろう。

 そんなことを考えていると死神は容赦なく、オレ目掛けて鎌を振るってくる。なんとか紙一重で回避するが、ベッドが裂かれてしまったと、ベッドに目を向ける。

 だが、ベッドは無傷であった。オレのベッドは死神にも裂けない最高品質!というわけではない。おそらく死神の鎌はまわりの物体には干渉できないと見える。

「さてと!ここからが本番だぜ!」

 忘却クロッパー退治の時間である。

ちょっとしたファンタジー要素を入れるために、今回は死神さんに登場していただきました。そして昊は死神に勝利することができるのでしょうか!!

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

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