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『乙女モード』全開☆のオレと、踊るプリンシパル  作者: 千園参
第1話 You can't remember 《  》 -あなたは『  』を記憶できない-
12/30

Part 12

他の方の小説を読ませてもらって、よく思うのは、文と文の間隔を広く開けてらっしゃる作品が多いなということですね。

確かに読みやすい!のですが、個人的には余り好きではないなと、この詰め詰め文体にしているのですが、そんな変なこだわりを持っているから、読まれないのかなと思うと頭が痛いので、考えないようにしています。

それでは楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

「それで、その絵凪くん?に、何か用事なの?」

 絵凪のことを知らないことをいいことに、同じクラスの不登校の生徒が気になっているなどと、ここで下手な嘘をついても、華村には気付かれてしまうだろう。さて、この状況、どう切り抜けようか……。

「いや、そんな大したことじゃないんだけれど、オレもそんな生徒のこと、聞いたことも見たことないからさ、先生に確認しに来ただけだよ」

「それって都市伝説的なこと?」

「大体そんなところで当たってるかな?」

「それでその問題は解決したの?」

「ああ、普通にこの学校にいる女子生徒なんだってさ」

 そう言うと、さっきのついさっきまで、絵凪を男だと思っていた華村は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔でこちらを見る。

「え、絵凪さんって女の子なの?」

「そうみたいだ」

 実はオレも絵凪玲の性別を判断するのは難しいところであった。実験⑵までは、玲という名前も手伝って、男の親友という線もあったためだ。しかし、女の子であるということを決定的にできたのは、やはりメモの実験⑶の『デートをする』という箇所だ。

 オレに男を性的に好きだという趣味はない。記憶がないとは言え、それだけは言い切れる……。言い切れるのか?脳裏に来夢の笑顔がよぎる。

 本当に男が好きではないと言い切れるのか。なら以前、来夢に対して抱いた気持ちとは一体何だったのか。来夢の悲しむ顔がチラついて離れない。

 いやいや、ここで気持ちを揺らしても話が前に進まないだけである。男とデートをするような人生を生きていない。また男とデートをするという表現を取らないだろう。絵凪玲が男であるならば、デートではなく、遊ぶと書くはずだ。

 それに先程の神月先生の発言は、絵凪玲を女性にする決定打でもあった。劣情を抱くのは仕方のないことであると、言っていたことからも、絵凪は女の子であることを証明できる。

 絵凪を認知している神月先生に対して、仮に男とデートをするという趣味を見せつけたのなら、仕方のないことという表現は絶対にしないはずだ。ホモを目の前にして、何のリアクションも見せず、お前がしていることは仕方のないことだとは言えまい。

 以上が絵凪玲を女の子だと証明する証拠だ。

「その絵凪さんのどこが都市伝説だったの?」

「お前って記憶力もいいし、同級生のフルネーム程度なら大体わかるだろ?」

「うん、まぁ大体ね……」

 華村は恥ずかしそうに言う。大体言えるなら、もっと自信を持って、誇っていいと思うのだが。

「そんなお前も知らない絵凪玲って存在だけで、もうそれは都市伝説だろ?そういうことなんじゃないのかな」

「ふーん。そういうことか」

 なんとか口から出まかせで、華村を納得させることに成功したようだ。

 そんな話をしながら、廊下を歩いて教室に辿り着いた。

「それじゃあ」

 と、手を振りながら、華村は自分の教室に入っていった。

 過去のオレは、なぜ華村ではなく、絵凪を選んだのだろうか。それ程までに絵凪が魅力的な女性ということなのか。

 廊下に突っ立っていると、肩をポンポンと、優しく叩かれた。知り合いの中で、こんなイケメンなことをする奴は、もう1人しかいない。1人に絞り切られている。いや、そもそも友達がいないので、絞る必要すらない。

 黄滝である。

「よっ」

 それは爽やかな、生まれてくる世界観を間違えてしまったのではと、恋愛系統ものならば確実に主人公だったであろうと、そう思わせてくれる笑顔を見せる。

「おう」

 挨拶を返す。

「どうしたんだ?朝から辛気臭い顔して。華村にフラれたか?」

「ちげぇよ。オレはいつもこんな顔だ」

「その返しはその返しで、どうかと思うぞ?」

「そうか?それよりお前、絵凪って知ってるか?」

 実験⑴をより確実にするため、黄滝にも絵凪のことを尋ねる。

「お前その質問、一体何回目?」

 この反応からするに黄滝は絵凪のことを知っているということなのだろう。知らない人間はこのような反応をしない。二言目は『絵凪とは誰?』になってしまうからだ。でも、なぜ黄滝は覚えていられるのだろうか?

「何度も言わせるなよ。絵凪だぞ?知らない男はいないって」

「そうなのか」

「そうなのかってお前なぁ……」

 残念ながら黄滝、それは少し違うんだ。知らない奴が多すぎるから、この質問を投げかけているんだ。

「知っているなら丁度いい。絵凪ってどんな奴か教えてもらいたいんだ。写真とか持ってないか?」

「持ってるわけないだろ……」

 しかし、ここで黄滝が知っていたのは、ラッキーであった。華村が覚えていないという事実を受けてから、この実験もなかなかに、絶望的かと思われたが、これでようやく絵凪玲を確かめることができる。

「写真はないけど、隣のクラスだし、見に行ってみるか?」

 黄滝が提案する。

「そうだな。そうしよう」

 そういう訳で、絵凪がいるとされている、2年1組の教室に足を運ぶ。教室の扉は開けっぱなしになっていたので、そこから2人で教室内を覗き見る。

「お、あの子だ」

 黄滝が小声で、1人の生徒に向けて指を指す。

「どれだ?」

 指を指している距離が遠すぎて、その辺一体を指しているため、どの子なのかわからない。

「特徴を言ってくれ」

「あの黒髪ロングの子だよ!」

 黒髪ロングと言われると、意外とまわりに純粋な黒髪ロングがいなかったため、一眼でわかった。

「あの子が……オレの救いたかった人?」

 その人は容姿端麗という言葉がよく似合う、それはとても美しく、それでいて、その目は氷のように冷たく、しかし、どこか儚さを秘めている、そんな美少女だった。だが、おそらく実験⑵で見るだけにしろ、写真でも可と書かれていたのは、このためだろう。

 彼女を直視すると、感情が込み上げてくる。そして彼女から目を離せない。完全に目を盗られてしまったようだ。

 一眼見ただけで、絵凪のことをこれでもかと言うほどに、意識してしまっている。これなら本当に写真の方が良かったのかもしれない。

 絵凪玲が持つ魔力は、想像を遥かに超えていた。

「なに見惚れたんだよ。早く戻らないと、遅れたら神月先生のアイアンクローだけじゃ済まなぞ」

 黄滝の呼びかけで、我に返った。きっとこの呼びかけがなければ、今も見惚れていたに違いない。

 本当にオレはあの人のことが………。

「何よ、人のことジロジロ見て……」

 退散していくオレたちを見て、絵凪がボソりと呟いた。どうやら、絵凪は陰から見ていたことに気付いていたようだ。


 彼女のことを考えてはならない。そう思えば思うほど、絵凪のことが頭から離れなくなっていくのがわかった。

「さて、この問題わかる奴いるかー?」

 神月先生が例のごとく、問題の解答者を探し始める。しかし、今回は事情が事情のためなのか、先生は別の生徒を当てた。

「よし、田中。この問題解いてみろ」

 おそらく今朝方、相談したことで、その事情を察してくれたということなのだろう。

「先生、いつも流れだったら美崎なんじゃないのかよー」

 田中が愚痴をこぼす。

「そんな流れなんてないぞ。口ばかり使ってないで、頭を使え。オラ、解いてみろ!」

 悪いな田中と思いながら、これからのことについて考える。とは言っても、今現在は考えすぎてはならない。これがまた難しいところであった。

 人間とは不思議な生き物で、考えなくていい、考えるな、と言われれば言われるほど、何故か考えてしまう。どうしてそのような面倒な構造になってしまっているのだろうか。

 そんな思考を全て殺し、何が何でも明日へとバトンを繋げなくては……。


 なんとか授業を乗り切り、昼休み---

 今日は急いで家を出てしまったため、瀛の弁当も間に合わず、購買の焼きそばパンと牛乳パックを屋上で食べる。

 すると、屋上の扉を開けて入ってきたのは、来夢だった。

「また来ちゃいました……」

 と、来夢が恥ずかしがりながら言う。この男は本当に可愛いな。男でなければ確実に恋をしていたに違いない。男にしておくには、勿体ない男であった。

 そして、さりげなく横に座る。

「昊先輩、今日は弁当じゃないんですか?」

「今日は色々忙しかったからな、間に合わなかったんだ」

「そうなんですね」

 弁当を食べる来夢、いちいち可愛い仕草を見せる。

 よくよく考えてみると、うちの学校は顔面偏差値というやつが非常に高いのかもしれない。

 絵凪を筆頭に、華村、黄滝の彼女である藤宮もそうだ。それに今、目の前にいる来夢も負けていない、男なのに。そんな美少女たちに囲まれている、この賀晴高校。きっと黄滝を主役にしていれば、今頃この学校……、もとい、この学園は甘酸っぱい、青春恋愛モノの舞台になっていたことだろう。

 しかし、残念ながらこのオレが語りをしていることによって、摩訶不思議、掣踆ペーシェントに悩まされる若者を描く、謎ストーリーに成り下がってしまった。誠に遺憾である。

 そして何より今後続くかもしれないシリーズ最初の被害者が、記憶を消されてしまうとは、いきなり難しくないだろうか?

 こういうシリーズでは、最初は優しいところから始まって、記憶系は最終章辺りでやるのでは!?

「はぁー」

 これには思わずため息が出てしまう。

「先輩、ため息なんて、どうしたんですか!?」

「あ、いやいや、これは色々あってな」

「なんだか昊先輩は大変そうですね。でも、青春してるって感じです!」

「青春をしている……か」

 来夢から貰った言葉を噛み締める。きっと青春ではなく、掣踆の間違いだ。楽しいことなど一つもない。

 それでも春休みに身体がおかしくなって、鏡よ鏡よ鏡さんをした華村真琴に手を伸ばし、今は四六時中、とても辛そうな顔をしている忘却系女子、絵凪玲のために無駄骨を折ろうとしているのは、きっとオレが美崎昊みさきそらだからだ。

 それ以外に理由はない。きっと別人だったとしたら、ここまで、ノートに赤裸々に記してまで頑張りはしないだろう。黄滝芳哉ではなく、田中でもない、オレだからだ。

『人はその人であるからこそに意味がある。その人はその人にしか、務まらない。君も君にしか務め上げることはできない。そして人には皆、その人だけに課せられた使命がある』と、昔誰かがオレに言った。

 その時は何を言っているのかと思っていたが、今なら、その言葉の意味がわかる気がする。

 掣踆ペーシェントに悩む人たちに手を伸ばすことこそが、それこそがオレがオレとして生まれた意味、オレの使命なのだと、そう思うからこそ、無駄骨を無駄だと思いながら、折れるんだ。どうだ?実にオレらしいだろ?

なぜ「踊るプリンシパル」なのかに関しては、この第1話のラストでわかると思いますので、最後までお付き合いよろしくお願いします。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

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