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『乙女モード』全開☆のオレと、踊るプリンシパル  作者: 千園参
第1話 You can't remember 《  》 -あなたは『  』を記憶できない-
11/30

Part 11

いよいよ物語が本格始動します。

遅いよ。待ちくたびれて、もう飽きたという言葉も聞こえてきそうですが、すいません。お待たせしました。

楽しんでいってください!よろしくお願いします!!

「なんだこれ?」

 誰かの悪戯かとも考えたが、よく見ると、その字はどう考えても、ノート真横にしても逆さにしても、どの角度からどう見ようとも、自分のものとしか思えなかった。しかし、絵凪玲とは一体誰のことなのか、見当もつかない。

 メモを読み進めていくと、


『おそらく絵凪玲は掣踆ペーシェントで間違いないだろう。しかし、彼女を助けるためには、いくつかの前提条件を揃える必要がありそうだ。


 1.どの程度の範囲の人間が絵凪を記憶できないのか。またその有効的距離感やどこまでの交友関係を築けば、記憶を消されるのか、調べろ』


 と、書かれている。

「調べろって何で命令形なんだよ……」

 おそらく、自分で書いたのだろうが、その文面に呆れる。しかし、メモはまだ続いており、その先を読む。


『2.上記の前提を揃えるため、ここからは実験を行う。


 ⑴ 聞き取り調査。とにかく多くの生徒に声をかけ、絵凪玲を知っている人間の数を調べる。


 ⑵ 絵凪を一度だけ誰かを確認し、その後、何があっても絵凪のことを考えてはならない。この確認段階では、写真でも可。とにかく絵凪が誰かを知った上で、日を持ち越す。次の朝、彼女のことを覚えているかを確認する。ここで重要になるのは、彼女を強く意識してはならないというところにある。

 記憶を保持できた場合、実験⑶へと進める。

 失敗した場合は、⑵を成功するまで何度も続ける。』


「ホント、こんなのいつ書いたんだよ」

 本当は実験⑴を実行に移すのだろうが、とりあえず、メモを一通り読むことにした。


『⑶ 絵凪玲とデートをする』


 その文字を見て、我ながら呆れ返って、ノートを閉じた。このノートをいつ書いたのかは知らないが、結局のところこのメモは好きな女の子を口説き落とすための、虎の巻だったというわけか。

 こんなことをしている自分がいたことに恥ずかしくなってくる。しかし、ノートに書かれていた『絵凪玲は掣踆ペーシェント』の文字だけが、どうしても気になった。

 そしてもし、このノートに書かれていることが、本当のことなのだとしたら、彼女に感じた想いも合点がいく。何故ならこのノートを書いたオレは、過去に彼女を救おうとして失敗したということなのだから……。

「記憶は消えても想いは消えないってことなのかもしれないな……」

 だから、オレは未来のオレに全てを託すことにしたのだ。絵凪玲は1日、2日で救えるような病ではない。故に託す。救えるまで託し続ける。過去のオレから今のオレへ、今のオレから未来のオレへ。


『絵凪玲を救うためには、過去のオレ、今を生きる現在のオレ、そして()()()()()の力が必要不可欠である』


「さて、寝るか!」

 ベッドにダイブし、朝を迎え入れる準備を整えることにした。


『You can't remember 《me》 -あなたは『私』を記憶できない-』


 5月17日---

 今日も目覚まし時計が愛のある爆音で、目を覚まさせてくれる。起き上がると、昨日のノートが学習机に投げ出されている。

 このノートの通り、今現在、絵凪玲のことをまるっきり覚えていない。このような状態で本当に大丈夫なのだろうかと、不安になる。

「まぁやるだけやってみるか」

 気持ちを切り替え、制服に着替える。

 今日はいつもより早く、目覚まし時計をセットしていたのだ。そして朝御飯も食べずに、学校へと向かうことにする。制服姿で自室を出ると、

「あれ?お兄ちゃん、今日はいつもより早いですね?」

 瀛はまだ朝食を準備している最中だった。

「瀛ごめん、すぐ学校に行かなきゃだから、今日は朝御飯はいいや!」

「え!?そんなんですか!?」

「ホントごめん!急いでるから、もう行くな!行ってきます!」

 いつものように「いってらっしゃいまへ!」を貰うことなく、急いで家を出た。

 家を出るなり、通学路を全速力で駆け抜ける。今日はついている。信号が運良く、青になってくれたおかげで、脚を止めずに走り抜けることができる。そう思って、横断歩道を突っ切ろうとすると、信号を無視した車がこちらに向けて侵入してきた。

 運転席の男も、オレを見て大慌てしている顔が、フロントガラス越しに見えた。しかし、そんな表情まで事細かに見ることができるほど、オレには気持ちの余裕があった。車を紙一重で躱し、そのまま道路を渡り切った。

 そして歩みを止めることなく、学校に到着した。

 朝のエネルギーとされる朝御飯も食べず、通学路を全力で走ってまで、そうまでして学校にやってきたのは、ある人を訪ねるためであった。

 そう、その人の名前は神月刀真先生だ。

「先生、おはようございます」

「おはよう。お前がこんな時間から私に何か用か?まぁ大体予想はつくがな。異変絡みなんだろ?話してみろ」

 さすが神月先生、とても感が鋭い。なぜ神月先生に絵凪のことを相談するのか。それは単純にオレや華村を救ってくれた担任だから、というだけではない。神月先生は教師でありながら、掣踆ペーシェントの専門家という一面も併せ持っているのだ。

 掣踆ペーシェントの専門家が何をしている人なのか、と聞かれると、実際問題よくわかっていないのだが、先生曰く、あらゆる事例の情報収集や、その事例の解決の手助けをしているということらしい。あくまでも解決ではなく、解決の手助けというのが、大事なところのようで、解決するのは当事者でなければならないという。

 以上の理由から、このような明らかに掣踆ペーシェントが絡んでいる案件の場合は、一度神月先生に相談してからの方が、事の解決もスムーズなのである。

 言葉で絵凪のことを伝えても良かったのだが、なんせ記憶がないため、何からどう話せばいいのか、言葉選びが大変なので、過去の自分に語ってもらおうと、ノートを神月先生に手渡した。

「これは?」

「うーん、とりあえず、見てください」

 神月先生がメモに書かれている文字列を目で追っていくのが、見てわかった。そしてそれと同時に⑶のことを思い出した。⑶だけは見られてはならない!!と思っていたが、もう手遅れで、神月先生はさすが教師というところで、既に目を通し終えていた。

 そして何とも表現し辛い表情で、

「ほう、これまた随分と恥ずかしいノートを見せてくれたな?()()か。そうかそうか。まぁ()()は可愛いしなぁ。お前が劣情を抱くのも仕方のないことか」

「ち、違いますよ!」

「顔が赤いぞ?」

 そう言われると、意識していなくても顔が赤くなってしまう。

 しかし、そんな状況下でも聞き逃さなかった。先生は今、確かにそう言ったのだ。

「え、先生、絵凪のことわかるんですか!?」

「当然だろ。教師なんだから生徒のことは覚えてるだろうが」

「いや、でも、このノートには絵凪本人が、まわりが自分を忘れているって言っていたって書いてますよね?なんで先生は覚えてるんですか……」

「ああ、そういうことか」

 そんな天然をかましている場合ではないと思いながらも、話を続ける。

「先生はこの異変、なんだかわかりますか?」

「そうだな。記憶を消す……か。さしずめ、『忘却クロッパー』と言ったところか」

 先生の綺麗な口から、これまた奇妙な言葉が繰り出された。

「忘却クロッパー?」

「そうだ。お前の『乙女モード』や華村の『魔鏡ジェミニ』のように、絵凪の掣踆ペーシェントに名前があるとするなら、それこそが『忘却クロッパー』だ」

 なるほど、と言いたいところだが、今聞きたいのはそこではない。その中身に用事があるのだ。

「忘却クロッパーってどんな症状なんですか?」

「名前の通りだ。忘却。忘れてしまうのさ、綺麗さっぱり。絵凪玲が友達だったことも、恋人だったことも、好きだったのかどうかさえも、誰なのかすらも、何もかもな」

「そんなどうしようもない異変をオレは解決できるでしょうか?」

 すると、神月先生は机にあったコーヒーを啜ると、一息ついてから、答える。

「さぁな。私のやり方は基本的に力を貸すだけだ。掣踆は青春を生きるものでなければ、解決できないからな。だがまぁ、掣踆ペーシェントは心理、メンタルが大きく影響及ぼして発症するケースが多い、なら、その心を動かす大きな愛があれば、あるいは………。そのノートのようにデートしてみるといいさ、何か起こるかもな」

 揶揄うような悪戯な台詞を浴びせてきた。

「それともう一つ」

 話が終わったと、振り返り歩き出すオレの背中に話しかける。

「クロッパーの意味は、刈り取る者だ。全てを忘れても、これだけはよーく覚えておけ」

「ありがとうございます」

 こうして先生の元を後にした。

 神月先生との会話の中で初めてわかったことがある。それは絵凪を覚えておくことのできる人間がいるということだ。これがおそらくノートに書かれていた、⑵の結果ということなのだろう。

 メモ書きと先生との会話から考えるに、絵凪を覚えておく方法は、絵凪を強く意識しないことにあるかもしれない。そのため、写真や姿を確認するだけで止める必要があるのだろう。会話をしたり、深く詮索をしてしまうと、彼女の魅力に取り込まれてしまう。それすなわち、彼女を意識するということ。意識した人間は、何らかの形で、記憶の中にいる絵凪玲を刈り取られてしまう。

 なんとか、絵凪玲の記憶を保持しなくては……。


 そんなことを考えながら廊下を歩いていると、華村が対面から歩いてくるのがわかった。

「あれ?美崎くん?」

「おう、華村」

「おはよう。今日は朝、見かけなかったから、どうしたのかと思ったら、もう来てたんだね」

「ちょっと用事があってな」

 ここから華村にも実験を仕掛けてみる。

「華村」

「何?」

「絵凪玲って知ってるか?」

 ⑴の絵凪の情報収集をするのだが、知っている人間を最低でも1人は探す必要があったのだ。何故なら、絵凪玲がどんな姿をした生徒なのか、見当もつかないからである。そのため、知っている人に絵凪玲を教えてもらわなければ、実験を先に進めることができない。どころか、誰を救うのかもわからない状態であるならば、実験云々以前の問題だ。

 ここで正解を引いておきたいところだ。しかし、真面目で、真面目の擬人化とまで言われた華村真琴ならば、きっと絵凪玲もすぐにわかることだろう。1発目に、とても素晴らしい人材に会えて、幸運であった。

「ううん。知らないな」

「そっか」

「ここの学校の生徒?アキラって名前だから、男の子?」

「いや、知らないならいいんだ」

 まさか華村も知らないとは、いきなり予定外を食らう羽目になった。華村がふざけてそんな冗談を言う奴じゃないことは、よくわかっている。彼女は本当に絵凪のことを知らないのだろう。

 待て、華村が覚えていないということは、華村も過去に絵凪を意識したことがあるということなのか?でも、何故?なぜ華村は絵凪を意識したのだろうか?勉強絡みか?2人の間柄に少し謎が深まる。

タイトルの「乙女モード」とは昊の症状のことでしたという、タイトルの伏線を回収する回でした。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました!次回をお楽しみに!!

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