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僕とカノジョと中畑くん

戸松蒼汰

身長158cm/体重49kg

趣味は、読書。異世界系の小説を読む。

妄想好き(違います!空想と言って下さいっ!)

好きなお菓子は、森○のムーンライト。

好きなタイプは、アイドルの大岩琴乃ちゃん。

県立高校に通う男子高校生。入学直後、車に跳ねられ、1ヶ月の休学。復学した時には、友達なんていなかった。

「え? うん···。きみも?」


 廊下に1番近い席に座った中畑くんが、オドオドした表情で僕を見上げていた。


「実はね···」周りを伺いながら、身を化が混ぜて自分もそのアイドルが好きな事を告げた。


 それが、僕と中畑くんを仲良くさせる繋がりとなった。


 アイドルと言っても、テレビに頻繁に出るようなアイドルとは違って、色々なイベントに出るいわゆる···



「地下···」


「アイドルだもんなぁ」


 僕の部屋に中畑くんがきたのは、今日で3度目。中畑くんの部屋にも遊びに行く事がある。


 メインとしては、テスト勉強。お互い得意不得意が交互に分かれてるから、教え合ったりしている。


「でも、今度のテストで平均点以上かぁ」


「頑張ればなんとかなるよ。お互い交互に得意不得意があるから」


「うん。頑張るよ、僕」



 僕達が通ってる神代高等学校には、面白い校長がいる。その校長が、一昨日朝会の時に言ったのだ。


『今度の中間テストで平均点以上取ったクラスは、金曜日若しくは、月曜日を休みにさせる!』と···。他の教師達は、なんか浮かない表情してたり、教頭は頭を抱えてたのが、凄く面白かったし、それを聞いた僕らは、ほぼほぼ騒ぎ出した。



「どっちが休みになっても、僕らには関係ないし」


「うん」


 来週末から週明けの月曜日まで、トイフルレコード店で我らがアイドルきらエピの握手会があるから。握手が出来て、ツーショット写真が撮れる。しかも、500円で!


 テストの結果が良かろうが、悪かろうが、僕たちは普通に会えるのだから、そう頑張らなくていいのだが、やはり休みが増えるのは嬉しいから。


「あ、中畑くん。そこの問3は、7.5だよ?」


 中畑くんが、苦手な数学を少し教えながら、僕も進める。


「僕も、数学苦手。嫌いじゃないけど」


 そんな話をしてると、母さんがおやつを持ってきてくれたから、少し休憩。


「ね、これどうする? ダウンロードする?」と中畑くんが、鞄の中から取り出したきらエピの会報誌を見ながら、僕に聞いてくる。


「ゲーム? 僕ゲームってしたことないからなぁ」


 昔から友達と遊びたくてゲームを父さんや母さんにお願いした事があったけど、尽く却下!高校の入学祝いでスマホを貰ったけど、それらの類は入れてはいない。


「絢ちゃんプロデュースか」


「僕もあんまゲームとかやらないんだけど、このバーチャルな世界ってなんか面白そうだし」


 バーチャルか···


 育成ゲームみたいな物らしいし、全て無料というのもあって、二人でダウンロードし、中畑くんは勉強を終えて、ニコニコしながら帰っていった。



「でも、良かったわね。お友達が出来て···」


 母さんが、食後のお茶を飲みながら、そう言った。中学での友達も同じ学校にいるけど、僕が入院してる間に新しい友達が出来て、なんとなく疎遠に近い。


「うん」


「母さんも、井口先生の顔見たかったわぁ」


 井口先生は、今の教頭先生で、母さんは井口先生の元教え子。父さんも···。


「頑張ってね! 蒼汰」


「うん。おやすみ。母さんも無理しないで寝てればいいのに」


 母さんは、元々身体が弱く、僕を妊娠した時も相当周りから反対されたが、父さんが周りを黙らせた。この二人は、僕がいる目の前でも普通に名前で呼んだり、いちゃいちゃしたりする。


「大丈夫よ。明日は、お父さん戻ってくるから」


「北海道、まだ雪が残ってるらしいね」


 先週から父さん北海道へ出張に行ってて、毎日電話がある。


 テスト勉強も学校の課題も終ったから、お風呂の時間まで僕はベッドの上でさっきダウンロードしたゲームアプリを起動させてみた。


「凄いな、これ。流石、絢ちゃん」


 絢ちゃんは、きらエピのリーダー的存在でゲームを作る学校に行ってる学生さん。もちろん、他のメンバーも学生。


「じゃ、推しの絢ちゃんで」


『ワタシヲセンタクシテクレテアリガトウ』


 画面の中の絢ちゃんが、僕に話しかける。声も同じだ。


「いえいえ。で、次は···」


 2つの選選択肢があって、部屋に戻る、か、外に行くだった。


「どんな部屋なんだろ?」と部屋を選択すると、女の子らしいピンク多めの部屋が出てきた。


 壁紙や家具は、白で統一されていて、ベッドには幾つかのぬいぐるみが置かれて···


「リアルにファンから貰ったのも入れてるんだ」


 僕が初めての握手会で、絢ちゃんに送ったうさぎのぬいぐるみと同じのが置かれてたのには、妙にくすぐったい気分になった。


『コノヘヤノナカハネ、ミンナカラノプレゼントガハイッテルノ』


「へぇ」


 うさぎ年生まれの絢ちゃんは、今年20歳になった。イベントでのプレゼントもうさぎに関するものが多い。


 育成ゲームなのに、本人の声での喋りだから段々おかしな気分になるものの、下から母さんがお風呂に呼んでるので、そこで終わりにした。


「ね、蒼汰。さっき誰かと電話してたの? なんかおんなの声がしたけど」


「いや? ゲームしてただけ」


「ゲーム? もう高校生だもんね」


 そんな短めな会話をしながら、僕は風呂に入り、出ると冷蔵庫からいつもの青汁を取り出して、飲んでから部屋へと戻る。


 これは、母さんの手作りの青汁だけど、不思議とこれを飲むと良く眠れるし、疲れも取れるから、昔から飲み続けている。


「おやすみ···」


 母さんは、父さんとの電話に夢中で、もうすぐ50になるというのに、ソファの上で足をバタバタさせたりしてはしゃいでいた。


「女は、わからん。あれで来年50だもんな」


 敢えて電話の邪魔をする気にはならない。


「彼女か···」


 もし願いが叶うなら、絢ちゃんみたいなちょっと年上の可愛い女の子がいいな、とは思うけど···。


「眼鏡やめて、コンタクトにしようかな?」


 たかがちょっとゲームをしただけで、こんな気持ちになるとは思わなかったが、意外にも父さんも母さんも反対はせず、テストが終った当日に僕は母さんと眼科に行って、コンタクトレンズを買った。



 翌朝、教室に行くと、誰こいつ?みたいな表情をされるが、すぐに、あー、こいつか!的に戻る。


「うん。最初誰だっけって、数秒かかった」


 昼飯を食べながら、中畑くんが笑いながら言う。


「今日の午後に結果出るんだよね?」


「うん。叔父さんが···いや、田中先生が言ってたから」


 中畑くんの叔父さんは、この学校で僕らの隣1年3組で担任をしている。ことを知ってる人は少ない。


「何時に知らされるんだろ? なんか聞いてる?」


「ううん。ただ、今回も嫌な予感がするとは言ってた」


 そう、あの校長先生直々の発表の後、結果が張り出されるらしいから。入学後のオリエンテーションで先生が言っていた。


「ドキドキするね。どんな発表なのか」


 この高校、本当に変わりすぎてて面白い。入って良かったと思う。


 5時限目が始まり、僕らは古文の授業を習っていた。


「あ、あ、只今から先日行われた中間考査の結果をお知らせします」とスピーカーから校長先生の声が流れると、何故か先生が耳を塞いで、机の下に潜り込んだ。


 なぜかは知らない。


 が!


「全学年、全クラスおめでとう! 平均点以上だ!」


「······。」


「マジ?」


「ほんと?!」


「「「っやったぁーーーーーっ!!」」」という歓喜な声が、校舎内に響いて、思わず僕も耳を塞いだ。


 それが静かになった頃、廊下が騒がしくなり、結果が張り出された。


「俺の授業をまず聞けーーーーっ!!」と出ようとする僕らを先生が大声を張り上げて、連れ戻す。


 やはり、この学校は変わってる。


 そして、僕らのクラスは、来週末から3日間連休になった。のも、教室のドアに張り出された。


「ほんと、井口の顔見たかったわ。ほら、小遣い。行くんだろ? きらなんとかのアイドルの···」


「······。」


「お前、隠すの下手。ベッドマットの下を掃除するのわかってるだろうに」


 どうやら、母さんが月1で掃除するのを忘れてた僕は、ベッドマットの下にきらエピの会報誌を挟んでいたから。


「う、うん。でも、いいの?」


 毎月、お小遣いは貰ってるのに···


「たまには、楽しんでこい。あと、芹那に挨拶してこい」


「······。」


 何故、父さんが芹那ちゃんの名前を?


「あいつは、お前の従姉妹だ」


 驚き発言!母さん、笑ってた。


「私も初めて写真見た時はわからなかったわ。まさか、姉さんの芹那ちゃんだったなんて」


 叔母さんには毎年会ってるけど、最後にお姉さんと会ったのは、僕が中学に上がる少し前だった。それからは、全然会ってないから···


 寝るまで意外な話を散々聞かされた。



 そんな楽しい握手会が、最終日にあんな悲劇に襲われたなんて···


 いま僕の目の前で、写真の中で笑ってる理央ちゃん。


 あれが最期の笑顔になったなんて、一体誰が想像出来ただろうか?


 犯人達は、既に逮捕されたが、1番最年少の理央ちゃんが、亡くなった。絢ちゃんらは、怪我をし、入院している。


「そうですか、じゃ。これ、昨日のプリント」


 僕は、それでも立ち直りつつあるが、推しが理央ちゃんだった中畑くんは、まだ部屋から出てこない。


「いつも、すまんな」


 中畑くんちは、片親でお父さんと住んでる。


「いえ。またきます···」


 中畑くん、目の前で見たらしい。動けなかったってラインきた。たぶん、僕がその場にいても、動けなかったと思う。それ位壮絶だったって、ニュースでも報道されてたから···




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