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実技試験

そろそろ挨拶も必要と思い、前書きをお借りします。

長らく活動を休止していましたが、今回こういった小説を読んでみたいと思い小説を書き始めています。

もし誤字や脱字、こういった展開もあり、何かおかしいところがありましたら、感想欄にてお願いします。

それでは今後ともよろしくお願い致します。

試験当日。


結局のところ、グループ内での練習に武尊は参加しなかった。

何せ役目はただ逃げていればいいとの事だ。

勇者時代の力がそのまま残っている武尊からすれば、児戯に等しい事だった。


「もう、結局何もできなかったじゃない………。」

「仕方ないよ………。逃げるだけでいいっていたのは私たちだし………。」

「それでも、僕は一緒に練習したかったけどね。」

「………悪かった。試験は真面目にやるさ。」


悲しそうに言う明日香達に武尊はものすごい罪悪感に飲まれる。

武尊も別に自習中サボっていたわけではない。異世界で使えた力がきちんと使えるのか、少し特殊な方法・・・・・・・で確かめていただけだ。

検証の結果、十全に力が使えたことに内心安堵したくらいだ。

だが、あれはむしろ…………。


「---そろそろ、実技試験を始めたいと思います。二年生のみなさんは武道館にグループごとに固まって下さい。」


アナウンスによって思考の海から引きずり出される。

周りを見ると、同学年を表すネクタイやリボンが見受けられる。

実技試験はまず学年ごとに一日ずつ行う。

何故か最初は二年生からといった采配だが、例年の通りなのか特に動揺の色は見受けられない。


「今回はどのフィールドなんだろうね。」

「去年は海辺のエリアだったから、今年は森林エリアじゃない?」

「そうね。武尊、アンタはどう思う?」

「悪い、あまり授業を聞いていないから、予想はつかない。」


武尊の返答に苦笑を帰す三人。

そもそもエリアと聞いてはてなマークが浮かぶ武尊だ。


「おい、落ちこぼれ。」


「ところで、エリアってのは毎回変わるもんなのか?」

「え………。そうだよ、試験ごとにエリアを変えて本人に適したエリアを見定めるんだって」

「なるほどな。結構考えられているんだな。」

「常識だよ……?一年の間に教えられてるはずだけど………。」

「いや、いちね……「無視すんなよっ!落ちこぼれの分際でっ!」……なんだよ?」


智樹との会話の最中、突然乱入してきた男。

ブレザーを採用している剣聖学園紺色の制服に、花柄に剣を差したデザインのブローチを付けている生徒。

怒りに表情を染めたその生徒に面倒くさそうな顔を向ける武尊と、苦笑している智樹。


「お前、エリスさんのなんなんだよ………っ」


エリスという名前が出てきて三人は怪訝そうな顔をする。

武尊はそんな男にあぁ、いつものかといった顔をしーーー


「エリスは大事な友達だ。お前になんか関係でもあるのか?」

「お前みたいな落ちこぼれにエリスさんはふさわしくない!今すぐ縁を切れっ!」

「それはお前じゃなく俺たちの問題だ。部外者は引っ込んでろ。」

「お前っ………!!」


話しかけてきた男は顔を真っ赤にして今にも殴り掛かりそうな形相だ。

こういった手合いは異世界の頃からよく見かけた。

エリスはアイドルも画やというレベルの美少女だ。

向こうの世界でも婚約を、などと迫ってくる男は数多くいた。

よく、そんな騒動に巻き込まれている経験から、こういった手合いには下手に出るべきではないと理解している武尊だ。


「もうすぐ試験を開始します。グループごとに集まってください。」

「ちっ…。試験中に身の程を教えてやる…!」


男は舌打ちして元の場所へ戻っていく。

武尊はその男を眺めながら面倒なことになりそうだな………と内心愚痴る。


「それでは健闘を祈っております。」


言葉と共に広がる大きな魔法陣。

言葉を最後に武道館から二年生の姿が消えた。

大規模転移。転移系統の【幻想器】ですら貴重だと言われているのに、大規模なものだ。

その希少価値は計り知れない。


こうして実技試験が始まったのであった。




ザァーと木々が擦れる音が聞こえる。


「ここは………?」

「どうやら今回は森林エリア。当たりを引いたみたいね。」

「そうだね。ここなら僕の能力もだいぶ役に立ちそうだ。」

「わたしも大丈夫そうっ!運がいいねっ!」


武尊はあたりを見回す。

さっきの浮遊感、転移魔法に似た移動方法だった。

【幻想器】個人個人で違う能力を発現するこの力にはかなり強力なものも存在しているようだ。

当たりは木々に覆われているが、確かな違和感を感じる。

武尊はそれがどうやら何か結界のようなものに覆われているとあたりを付けた。


「当たりってことは期待していいのか?」

「そうね。でも、アンタもちゃんと頑張るのよ?じゃないと進級審査通らないから。」

「わかってる。まあ、できることはやるさ。」

「もうっ、いいから移動しよっ!早めに試験クリアしちゃわないとっ!」


今回の実技試験は最低条件として1グループの殲滅にある。

負け方によってはデメリットもあるこの試験、いかに相手を見極める目を持っているべきなのかが分かる試験だ。

クリア条件は1グループの殲滅とあるが、別に何組かグループを殲滅しても問題ない。

むしろ、成績に大きく反映されると大きなメリットがある。

そのため、制限時間いっぱい敵を探し回るグループもあるわけだ。


「今回の試験で進級を狙ってるんだから、できるだけ低いクラスを………っ!?」

と、智樹が先導しようとしたところで、武尊は咄嗟に智樹の前に出る。

そして自らの【幻想器】を発現させる。

淡い青色の光が一つの剣を形作る。

武骨なその剣は片刃の刃渡り一メートルほどの一振り。

それを武尊は飛んできている炎に向かって振りぬいた。


「ふっ!」

「っ!?」


一呼吸、あまりにも速い剣速によって炎は掻き消された。

驚いている気配が近くから感じられる。

武尊はその振りぬいた勢いを利用し、回転しながら剣を気配の方向へと投げはなった。


「まずは一人………。」


確かな手ごたえと共に倒れ消えていく気配が感じられる。

どうやら戦闘不能と判断されれば強制送還される仕組みの様だ。

先ほどまで驚いて動けていなかった明日香達だが、それぞれ【幻想器】を呼び出していく。


「来て、【風切かぜきり】!」

「蹴散らしなさい【金剛こんごう】」

「見通せ【水鏡みずかがみ】」


明日香は大きな鎌を構える。黒い。表現するならその一言だ。

明日香の明るいイメージからはかけ離れている大きな鎌。それが僅かだが風を纏っている。

加奈は目の前に現れた岩でできた狼を撫でている。

どうやら召喚獣などのように使役する形の【幻想器】のようだ。

智樹が持つのは一枚の鏡。出現するとき水から出来上がっていたので、何かしらの属性が付与されているとみて間違いない。


「背後の木の裏に二人と、右にもう一人隠れてるよっ!気をつけて」

「りょーかいっ!うりゃっ!!!」


まずは背後に一閃。

明日香は重さを感じさせず、大きな鎌を軽快に操り後ろに大きく振りぬいた。

振りぬいた鎌からは鎌鼬のように大きな風の刃が迫る。

それは木々を切り倒しながら隠れている生徒に迫りーーー


「シールドっ!!!」


大きな半透明の盾に防がれた。

切り倒された木から現れたのは、二人の男女。

女子生徒は盾を装備しており、男子生徒は大きな槌と呼ばれるものを構えていた。


「喰らえっ!」


男子生徒が大きく地面に槌を振りぬく。

大きな音を立て衝撃波がこちらへと迫ってくる。


「こっちからもだっ!」


正面の男子生徒は大きな水の塊を武尊たちへと飛ばす。

一振りの槍から放たれた水の塊はかなりのスピードで武尊たちへと迫る。


「防ぎなさいっ!金剛!」


加奈の指示のもと、金剛が形を変える。

背後の衝撃波に対抗するためか、三メートルほどのゴーレムのような形をとり、両手にある大きな盾を構える。

正面にも同じゴーレムが現れ、同じように盾を構える。

武尊はその間その常人離れした身体能力を使い、1人空高く跳躍した。


「「「っ!?」」」


智樹たちのありえないものを見る目が武尊に突き刺さる。

少し気になることもできたが、武尊はそのまま空気を蹴って(・・・・・)正面の男子生徒へと迫る。


「くそっ!情報と違うじゃねぇか………がっ!?」


剣を一振り。

綺麗に頭に入った一撃は、男子生徒の脳を揺さぶり一撃のもと戦闘不能へと追い込んだ。

そのまま後ろの二人を殲滅しようとしたところーーー


「ふぅ……すごいねっ!霧埼君こんなに強かったんだっ!」

「ん……まあ、これくらいはな。」

「そうね。一年の頃は手を抜いていたとしか思えないわ。」

「うん。僕もそう思う。何か少し違う気もするけど………。」

「まあ、俺もやる気を出したってことさ。それよりも、早めに移動したほうがいいんじゃないか?さっきの戦闘音で他のグループがここを目指しているだろうしな。」

「そうだね。それじゃあ、良い場所探しに行こうっ!」


それぞれ、明日香の行動に苦笑し【幻想器】を消しながら別の場所へと移動を開始した。




キイィィンッ!


剣戟の音が鳴り響く。


「明日香、そっちに行ったカバー頼む。」

「任せてっ!そりゃっ!」

「きゃあっ!?」


明日香の大振りの一撃が女子生徒を打ち抜く。

ある程度手加減されたのだろう、あまり制服に傷はなくだが絶妙に気絶する程度の力が込められた一撃は、女子生徒を戦闘不能にするのは十分だった。

その間に武尊は最後の一人を気絶させながら、ふぅと一息つく。


「これで何組目だ……?」

「もう8組は倒したよ。順調だね。」


智樹の返答にため息をつく。

順調と言えば聞こえはいいが、場所取りをするまでに5組。場所を取ってからも3組の襲撃にあっている。

どう考えても位置がばれているとしか考えられない。

一学年5クラスおよそ200名からなる学年だが、一つの森林地帯を囲ったこのエリアでこの遭遇数はどう見てもおかしいものだ。

いくらなんでも接敵率が高すぎる。


「そういえば中にAクラスのグループが一組いたわね。」

「え、ホントにっ!?じゃあ、進級はほぼ決まったようなもんだねっ!」


加奈の言葉に明日香が嬉しそうにする。

確かに少し手ごわいと感じる程度のグループがあったが、それでも多少の手傷で済んでいるのだ。

そう思っても仕方のないことだろう。


「あと二組倒せばSクラスも夢じゃないよっ!」


順調に行き過ぎているせいか、少し舞い上がっている様子の明日香。

加奈や智樹も呆れているように見えるが、少し口元が上がっている。


ーーー面倒なことにならなきゃいいが………。


そんな幻想あるわけないと否定しながら内心どんな皮肉だ。と1人ツッコむ。


「まあ、油断はするなよ………。」

「わかってるよーっ!」


だから心配なんだ………。と1人愚痴りながら、武尊は次にくる戦闘に備えて木の幹によりかかった。










あれから一組相手をしてから、接敵しなくなった。

試験自体も残り20分ほど。それ相応にグループの数も減ってきており現状特にすることがない状態だ。


「このままSクラスと当たらない状態が続いてもいいけど………なんか味気ないわね。」

「まあ、いいんじゃない?だって、このまま行ってもなかなかいい成績だし。」

「そうだよねっ!一番下のクラスのわたし達がここまで残ってるのもだいぶ奇跡だしっ!」


三人は和気藹々と話している。

それを武尊は横目に見ながら、


ーーーエリスもまだやられていないみたいだな。


比較的遠くの方にエリスの気配がする。

このエリア全域を索敵する位なら、武尊にもかなり余裕を持ってできる状態だ。

どうやらエリスのグループはこちらと接敵しないように動いている節がある。

どうもエリスが誘導している感じがして苦笑する。


確かにこのまま残っているグループと接敵せずに過ごすのもありだがーーーーーーー。


「やっと見つけたぞっ!!!落ちこぼれどもっ!」


大きな怒声が聞こえてきたため、武尊たちはそこへ目を向ける。

そこには試験前に絡んできた男子生徒が率いるグループがいた。

男子三人、女子一人のグループで流石はSクラス。ほとんど手傷を負っていない身綺麗な状態だった。


「なんだ………残ってたんだな。」

「なん………だと……?お前、この僕が誰だがわかってて言っているのか………?」

「いや?まったく興味がないからな………。」


武尊の言葉にプルプルと震えている男子生徒。

それにアワアワと慌てながら、明日香が武尊に耳打ちする。


「あ、あの人はSクラスでも3番目に強いって言われてる矢渕やぶちの人だよ。矢渕家と言えば代々要人護衛の【幻想器】使いとして有名な家なんだよ。」

「へぇ………そうなんだな。」


まるで興味がない。

そういわんばかりの武尊に男子生徒ーーー矢渕はさらに怒りを強くする。

矢渕家ーーーそれはナンバーズと言われる名前に1~10までの序列を表す数字が入っている家のことだ。

日本国内だけだが、それでも十分な実力のある名家という事だろう。


「お前っ………!?僕を舐めるのもいい加減にしろよっ……!」

「いや、実際知らなかったわけだしな。」


今までにない屈辱。

そういわんばかりの表情だ。

実際この矢渕やぶち 佳介けいすけは矢渕の名前を冠している家の生まれだ。それ相応の努力も積んできたつもりだし、それ相応に容姿も良く女子受けもいい。

だが何よりもーーー


ーーーこの男にはやはりエリスさんは相応しくないっ!!!


エリスに淡い恋心を抱いている思春期男子特有の思い込みにより、自分の方がエリスには相応しいと内心声高に叫んでいるのだ。


「撃ち抜け【ヴォルフガング】っ!」


佳介は自らの【幻想器】を呼び出す。

両手に輝く眩い赤い輝きは二丁の拳銃を形作った。

リボルバーの形を取った白と黒の二両拳銃を手に佳介は叫ぶ。


「お前たちに身の程を教えてやるっ!」


佳介の号令に従い、後ろで会話を聞いていた三人もそれぞれ【幻想器】を呼び出していく。

それに倣うように武尊たちも自分たちの【幻想器】を構えた。


「どうやら目の前のやつは俺をご所望らしいしな……。残りは任せるぞ?」

「誰に言ってるのよ………。もうっ挑発なんてせずに隠れればよかったのに………。」

「まあまあ。どのみちSクラスに上がるつもりなら、こんなとこで負けてられないでしょ?」

「そうだねっ!よっしがんばろーっ!」


加奈の言葉にそういえば、と武尊は思う。

どうやらあまりにも連戦続きで気持ちが高ぶっていたらしい。


ーーー俺もまだまだってことか………。


「まあ、そのお詫びと言っては何だが、早いとこ倒して加勢するさ。」


ニヤリ。

武尊の好戦的な笑みに明日香達三人は呆けた表情になる。


「あんた試験にあんまり乗り気じゃ………。」

「なんか事情があるのかわかんねぇけど、Sクラスになる必要があるんだろ………?なら、その手助けくらいはしてやるよ。」


明日香を見ながら武尊は言う。

この中で一番やる気を見せている少女だ。何かしらの理由があるのは間違いない。

それに、と武尊は続ける。


「ちょっと友人との関係に口出しされてんだ。俺もちょっとはイラついてる。」

「いい度胸だ……っ!ならお望み通りボロボロにしてやるっ!!!」


武尊と佳介。二人の男子生徒は同時に地面を蹴り上げた。

丁度お互いの中心地点、そこで両者はぶつかり合う。

それを開戦の合図に、恐らく試験最後の戦闘は始まった。




開幕と同時に地面を蹴りつけた武尊と佳介だが、始まってすぐに硬直状態に陥った。

原因は単純だ。


「くそっ!なぜ当たらねぇっ!」

「狙いが甘いからだろ。」


武尊は佳介の周りを走り、飛び跳ねることで、弾丸を回避していく。

リボルバーの形状を取っている佳介の【幻想器】だが、目に見える弾倉に見合ってほどに撃ちつづけている。


「だが、お前の狙いはわかってるぜっ!弾切れを狙ってるんだろうが、【ヴォルフガング】に弾切れはねぇっ!俺に接近する手立てのないお前じゃどうしようもねぇよっ!残念だったな、最初に仕留められなくて!」


佳介はニヤリとこれから来るであろう武尊の体力切れを待っている。

泣き叫び、許しを請う武尊を想像しているのだろう。


ーーーこんな弾幕じゃいくらでも方法はあるんだがな………。


そもそも常人とはかけ離れている身体能力を持つ武尊だ。

すぐに接近し切りつけることはたやすい。

だが、相手は一応Sクラス。それもナンバーズという有名な家の生まれらしい。


ーーー弾切れを起こさないとか………単純な能力な訳ないよな………。


武尊の内心を読んだかのように佳介は片方のリボルバーの弾倉を開けた。

空薬莢は排出されず、空中から新しく弾丸を具現化していく。


「当たらないなら当てれる弾丸を用意するまでだよなああぁぁぁっ!!!」

「っ!?」


装填して連射。

弾倉六発の弾丸を一息に解き放つと、弾丸は雷撃へと姿を変えた。

雷速で迫る弾丸を武尊は同じように高速で移動して躱そうとする。


「無駄だっ!その弾丸はお前に当たるまで目標を追尾するっ!いくら早く動けても意味がないんだよっ!」


武尊に迫る弾丸。それを武尊はーーー一息に切り伏せた。


「な……ん……だと……?」


当たると確信していた佳介は愕然とした表情になる。


ーーー馬鹿な……雷と同じスピードの弾丸を斬っただと……?


的は只でさえ小さいのだ。

面で捉える攻撃ならまだ佳介にも理解できた。

あれだけ小さく、視認すら困難なスピードで迫る弾丸を線の動きで対応する。

神業に等しいその動きにかなりの動揺を誘われた佳介に武尊の行動を予測する術はなかった。


武尊はあからさまな隙に誘ってんのか?と疑問符を立てながらも、自らの間合いへと一足で接近した。

反応すらできていない佳介へと自ら持つ直剣を袈裟斬りで振るう。

当たる直前ですら佳介からの反応はない。


ーーーこの世界の実力派この程度なのか………?


たかが雷速を斬った(・・・・・)ぐらいで動揺されても困る。

異世界では雷と同化し常に雷速で動く魔物や、術者がいるのだ。

これくらいできなければ、魔王と戦う前に何度も死んでいる。


「なっ……がっ!?」


頭に強烈な一振りを喰らう佳介。

そのまま地面へと頭を叩きつけられ、意識を失うのだった。


「………Sクラスってのもこんなもんか」


周囲に視線を配ると、明日香、加奈、智樹となかなかいい勝負をしているようだ。

一進一退の攻防というべきか、お互いの実力が拮抗しているようだ。


「なんでこんな実力があるお前らがEクラスにっ!?」

「文句があるなら学園の採点基準に言ってねっ!私たちは別に実力を隠してたわけじゃないからっ!」


明日香の大振りの一撃が男子生徒を吹き飛ばす。

追撃とばかりにさらに一振りすると、空気を切り裂いて鎌鼬が飛んでいく。


「があぁぁぁっ!?」


斜めに切り裂く一撃を受けた男子生徒はそのまま地面に倒れ、動かなくなった。


「よっし!勝ったっ!」


明日香はそのままガッツポーズ。

どうやら周りに加勢する気はあまりないようだ。


「なんだ、アンタたちも倒したのね。」

「みんな早いね。僕は結構ボロボロだよ。」


茜と智樹が明日香の元へやってくる。

明日香と茜はほぼ攻撃を喰らっていないのか、制服にもあまり汚れは見られない。

智樹は言葉通り制服のあちこちに切れた跡が見られ、ボロボロの状態だ。だが、顔には疲労の色はあまり見られない。


ーーーなんでこいつらEクラスにいるんだ?


そこが武尊には疑問だった。

五段階でクラス分けされる底辺がEクラスだ。

Dクラスに勝つこともあるだろうが、それより上は完全に格上の領域だ。

それに余裕を持ってかつ明日香達がなぜ………。


「まあ、そのうち分かるか。」


武尊は考えるのをやめた。

考えることは自分の仕事ではないと割り切り、明日香達へと近づいて行った。



「実技試験はこれにて終了します。各グループごとに固まり、転送に備えてください。」

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