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どうやら現実世界に帰ってきたようだ

「ん……ここは……?」


目が覚める。

どことなく懐かしい香りのする場所にいるようだ。

どことなく柔らかい感触に心地よさを感じながらまだ覚醒していない頭で周囲を確認する。


ーーーむにゅ。


あたりを手探りで確認していると何か柔らかいものに行きついた。

武尊はどこか心地のいい感触をもっと味わおうとさらに揉みはじめる。


「んっ……やっ……」


何か艶めかしい声が聞こえてくる。

段々と覚醒してくる頭で武尊はどこかで感じたことのある感触だと気づいてしまった。

武尊の顔から血の気が引いてくる。

恐る恐る今まで触っていた方へと顔をむけるとーーー


「た、た、タケルさんっ!?こ、こういうことはっ!夫婦になってからっ………!?」

「わ、悪いっ!!!そんなつもりじゃっ……!?」


顔を真っ赤にしたエリスがこちらを涙目で見ていた。

恐らく触られた感触で起きたのだろう。

武尊もいきなりのことで頭が真っ白になっていく。


「と、とりあえず手を離していただけませんか………?」

「そ、そうだな。ごめん、ほんとに」


2人は顔を真っ赤にしながらお互いに黙ってしまう。

気まずい空気が二人の間を包み込む。

無言の空間でしばらくそうしていると落ち着いてきたのか周りの状況が目に入ってきた。

まず目につくのは見慣れた本棚や机。一般家庭の青年の部屋と言われれば納得のいくシンプルな様相の部屋だ。一般男性としては珍しく綺麗に整えられている部屋にはこれといって珍しいものは………


「あ、あれ?ここ俺の部屋………?」


そう、武尊が目の前にいるエリスに召喚される前に過ごしていた家の一室。


「か……帰ってきたのか………?」


あたりを不思議そうに見渡していたエリスも武尊の反応を見て


「ここは……タケルさんのお部屋なのですか………?」

「ああ、なんかそうみたいだ………」


本棚に置いてあるラノベや漫画、参考書。机の上に開いてある書きかけのノートや壁に貼ってあるどこかのアイドルグループのポスターまで完璧に同じものだ。


「ど、同年代の男の人の部屋に入ったのは初めてです………」

「そ、そっか………。なんか恥ずかしいな………」


照れくさそうに二人は笑う。

どうしてかいい雰囲気になっている二人はお互いにさきほどまでの状況を思い出したのかはっとなり


「そ、そういえば魔王は………っ!?」

「そうですっ………!確か、私たちは空間に空いた穴に吸い込まれて………っ!」


お互いに周囲を警戒する。

言われてみれば魔王と一緒だったのだ。

可能性としてこの光景も魔王が武尊の記憶から読み取り作った幻影だとも限らない。

だが、2人の考えは予期せぬ闖入者によって否定される。


「おにいっ!さっきからなにっ!?ものすごくうるさいんだけど………っ!?」


扉を蹴り開け入ってきたのはーーー霧埼きりさき 愛奈あいな武尊の義妹だ。

さきほどまで部屋にいたのか髪はシュシュで再度アップにめとめ、キャミソールに短パンとラフな格好をしている。

16歳と武尊の一つ下の年齢だが年相応に発達した身体のラインは十分に男を魅了する。


「お、おにいが……っ!?綺麗な女の人連れ込んでるっ!?お、おかあさ~んっ!?」

「あ、おいっ!!ま、待てっ!これには事情が………っ!?」


愛奈は慌てて一階に走って行った。

武尊は手を伸ばした状態のままーーー


「な、なんなんだこれ………?」

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