プロローグ
お久しぶりです。
少し思いついたものを書いてみます。
長く続くかは時間次第です
キィンッ!
剣戟の音が大広間に鳴り響く。
対峙するのは革鎧に赤いロングコートを着た一人の青年と禍々しい鎧に身を包んだ異形の存在だった。
目でとらえれる限界以上の速さで高速移動する二人。常人なら確実に視認することは不可能だろう。
2人の剣がぶつかりあうたびに地面にひび割れがおき、大気が震える。
「少しスピードが落ちたか…?疲れが見えるようだな」
異形の存在が不敵に笑いながら大剣を大ぶりに振るう。
「笑わせるなよっ…!まだまだこれからだっ!」
青年は叫びながら一度距離を取る。
青年が剣を掲げると光がそこに集まり出す。
「これでも…くらいやがれっ!!!」
極太の光の極光が一直線に異形の存在へと突き進む。
部屋一面を眩く照らす極光に対し異形の存在は…
「甘いっ!甘すぎるぞ勇者よっ!!!」
大剣を横薙ぎにすることで打ち消した。
しかし、勇者ーーー霧崎 武尊は極光を目くらましに異形の存在の目前へと迫っていた。
「甘いのはお前だよーーー魔王っ!」
「っ!?」
心臓へと高速の突きが迫る。
勇者の放った極光は囮。本命は接近してからの一撃だった。
長い時間勇者と全力で戦っていた魔王に咄嗟に避ける体力は残っていない。
「ぐっ……!」
魔王は目を見開き、すぐに笑みへと変わっていく。
武尊は笑みを浮かべる魔王に突き刺した剣を横薙ぎに振るい、トドメを差すべく上段へと剣を構え油断なく見据える。
「貴様は…なぜ、そんなに関係のない人間の為に戦う……?」
魔王が床に血だまりを作りながら問いかける。
心底不思議そうな顔をする魔王に武尊は訝しんだ顔をしながら
「確かに関係ねぇな…。むかつくやつもいたし、それこそ助ける価値の無いやつもいた。」
「ならば、なぜだ……?貴様に助ける義理もない……そうだろう?」
「あるさ……今まだ戦っている仲間がいる。助けてくれたやつがいる。理由なんてそんなもんで十分だ。」
振り上げた剣に光が集まるーーー。
この一撃は先ほどの囮と違い今度こそとどめを刺すべく今残っているすべての力を一点に凝縮したものだ。さすがの魔王とてこの一撃は食らえばただではすまないと理解している。
「なるほどな……。だが、我にも負けられない理由があるっ!!!貴様を滅ぼしっ!!!人間どもは世界から排除するっ!!!!!」
魔王の体から闇色のオーラが立ち昇る。
それは今までの攻撃とは訳が違う…。避ければ外で戦っている仲間達も一緒に消し飛ばされる。魔王も今残っているすべての力を凝縮しているのだ。
「させねぇよ…。俺は俺と今まで戦ってきた仲間の命を背負ってんだ。てめぇを倒してそれで終わりだっ!!!!」
剣から極光が放たれるーーー。
魔王の手から極大の闇が放たれるーーー。
二つの力がぶつかり合い、空間が軋む。
負けられない理由が二人には存在する。
1人は仲間の為………1人は種族の為ーーー二人の全力がぶつかり合う攻撃はいつしか空間に罅を入れた。
罅は徐々に大きくなり、大きな穴となる。
「ッ!?」
「なにっ!?」
2人の体は穴から生まれる謎の引力に吸い込まれていく。二人はその強靭な身体能力で耐えているが、いまだ穴から生まれる引力は二人を掴んで離さない。
「タケルさんっ!!!」
大広間のドアが勢いよく開かれ、そこから一人の女性が現れる。
神官装束に身を包む彼女は今にも引き込まれそうになっている武尊に抱き着く。
「エリスっ!?なんでここにっ!?」
「武尊さんっ!そんなことより踏ん張って下さいっ!このままじゃっ!?」
「っ!?」
穴の引力は強まり、等々床が耐えきれなかった。
武尊は咄嗟にエリスの体を抱きしめ、魔王へと手を伸ばす。
「お前も掴まれっ!!!」
魔王はその声にーーー