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マウントリバージャスティスメン  作者: ぱんぶどう
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直立二足の白い犬が俺の前に立っている。周りの景色は輝いていてその犬以外はピントが合わない。スヌーピーだ。俺はどういうわけかスヌーピーの前にいる。スヌーピーが言った。「配られたカードで勝負するっきゃないのさ、それがどうゆう意味であれ。」

 はっと現実に戻る。なんだ今のは。走馬灯か?目に飛び込んできたのは複雑な配置のパイプ管であった。ドームの天井だ。状況を思い出す。俺はエリックの方向に歩いている途中だったはずだ。そうしたらいきなり体が沈んで景色が変わって。いや違う。俺がのけぞって宙に浮いているのだ。さっきまでの方向にはバナナの皮が一緒に浮かんでいる。ちくしょう。こいつのせいか。こいつのせいで俺は転倒しようとしているのか。浮き上がった自分の体が万有の引力の見えざる手に襟を掴まれて身動きをとることができない。地面に叩きつけられるまであと1秒か2秒だろうか。ちくしょう。ここまでか。いや、俺にしてはよくやったじゃないか。義人。そうだ。頑張った。ここまで。一人で。なにも持たないお前が。嘘とハッタリだけでよくここまであいつらを追い詰めた。そもそも俺にこの任務を完遂する義務も義理も本当はないのだ。俺は巻き込まれた側の人間だ。もしあの時USBを拾わなかったら。もしあの時寅さんに全て洗いざらい話してしまっていたら。もし…。仮定の過去は無限に存在する。しかし現に今俺はここにいる。そうだ。“もしも”なんてものは存在しない。カッコつけてバナナの皮で滑って転んでいるのが俺じゃないか。そうだ俺だ。俺は今ここにいる。山河義人。マウントリバージャスティスメン。過去はどうにもならない。未来はわからない。ただし今はここにある。俺の手の中に。過去で勝負をするな!やるなら今!ここでだ!前を向け!策は無い!だけれどもあきらめるな!いやあきらめろ!受け入れるんだ!どんな結果になろうとも!あがけ!どこかでスヌーピーがにんまりと笑った気がした。長かった一瞬の空中旅行が今、終わった。

 

 鈍い音が上がり地面に一人の男が叩きつけられた。

「終わ…ったのか?」エリックが膝をついた。口角が上がりかけている。半ば信じられない逆転を、自らの勝利を告げようとしているところに男の声が彼の耳に飛び込んできた。

滑ってきている。あの男が。殺人ゴリラを吹っ飛ばしたというあの男が。大量のバナナの皮に乗っかりながら。高速で一直線にこちらに滑ってきている。

「うわわあわあああ」男が叫んでいる。

「うわああああああ」エリックも叫んだ。


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