脱皮
昨日の城の集会でだいぶ疲れてしまって翌日は爆睡してしまった・・・
目が覚めて起き上がると鱗の表面が白い
兄弟達も目覚めて「うわぁぁぁん!!ママ!!ママ!!」
リビングでテーブルに座りコーヒーのような香りのする飲料を飲みながら本を読んでいる
そこにジェラルトとガルキオが飛びついて「この白いの何!?」「怖いよぅ!」
ペドラが嬉しそうに答えた「それはねジェラルト、ガルキオ成長したって証なの、大人に一歩近づいたって事!」
笑顔で言う
ジェラルトが頭をかしげて「大人に・・・なった?」
ペドラ母さんは続けて言う「これはね脱皮って言って大きなる為に欠かせない事なの、だからちゃんとこれでゴシゴシして玄関で落とすのよ」
玄関にジェラルトとガルキオをペドラ母さんが押し込み、やすりのような物でゴシゴシとして皮を落としている
皮がボリボリと落とされて、新しいキレイな鱗に変わる
ジェラルトはより赤身のあるキレイな鱗に、ガルキオも綺麗に鱗になっている
ペドラ母さんが手招きして、俺も読んでいる
自分でできるんだけどな・・・尻尾の裏とかやってもらおうかな・・・
俺もやってもらい、鏡で自分の姿を見ると「おぉ~・・・」
純度の高い青色、鱗一枚一枚がキレイなガラス工芸品のようにキラキラしている
それと腕の鱗をよーく見ると、若干、奥にパールをプラスさせた塗料のように鱗の奥でキラキラしている
ペドラ母さんが鱗を見て「レギオン・・・これはね鱗に魔力を帯びている証拠なの・・・ガルキオやジェラルトにも数枚、この魔力を帯びた鱗が現れるのだけれど・・・レギオン・・・貴方にはこの鱗が多くみられる・・・これはね魔術師としての素質があるって事なの・・・」
そうなのか、って事はこのキラキラしているのは魔力だったりマナだったりするって事か
それにしても魔術師か・・・あの雪山で見た大図書館グラルフ・・・行ってみたいな・・・
ペドラが嬉しそうに笑い「それじゃ、レギオン、今日も体を動かしましょうか!」
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今日は城のメイド達が集う食堂エリアに来た
ペドラはいつもの台車で俺達を動かしてメイドたちがワタワタ働く現場へと来る
ペドラがメイドたちを見て「よく見て、これが私達の生活やお城を管理してくれている、メイドさん達」
メイド達の種族は竜人族が多いが、中にはサキュバスだったり、エルフも多い
竜人メイドがペドラと俺達を見つけてビクッ!!と動いて「メイド長!!大変ですっ!!王妃様が~!!」
食堂の向こう側の控室からガシャガシャン!!と大きな物音がして
澄ました顔でエルフ族のメイド長が現れる金髪のストレートに緑色の瞳とかなりエルフの印象を良く出しているメイド長だった
「ご、ごほん!ペドラ様!こんな無粋な所に何用で?」
だいぶ恐縮していのか少し口も手足も震えている
ペドラは笑顔で「いつもメイドさん達はせっせと働くから、我が子達にとって良いかな!って」
メイド長は深々と頭をさげて「まことに恐縮ですが・・・私共はごく普通に作業しているだけでして・・・王子様方に良いとは到底・・・」
ペドラが笑って「ご謙遜しないで!城を維持する立派な仕事をしているのですから・・・それにジェリクも最近は感謝が足りないって小耳に挟みましたから・・・」
台車のすぐそばにあったケーキにガルキオが手を伸ばしている、ジェラルトも
俺がペドラのズボンを引っ張り知らせると「っあ!こらっ!」
ジェラルトとガルキオに注意して、ペドラはいつものアイコンタクトで俺に『ありがとう』と伝えてくれる
メイド長は手をごしごしさせて「そ、それでは何を見ますか?」
ペドラが辺りを見渡してメイド達がガチガチになって作業している様子を見て「今日はこのぐらいにしておきます!それではまた!」
ペドラが振り向いた瞬間、メイド長が安堵の息を吐いている様子が見えた
なんか申し訳ない事したな
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今度訪れた場所はジェリクがいつも訓練している決闘場だ
城から外に出れば、要塞と化している為、兵士達があちこちに見える
そしてジェリクがいつもの赤い槍を振り回して「どうした!?その程度か!?」
「いえまだです!!ハァァァ!!」
若い竜人の兵士が突撃してジェリクのパンチに吹っ飛ばされる
「がはっ!?」
ジェリクが叫ぶ「次ぃ!!」
次に現れた兵士はゴーレム族という、文字通り岩で形成された生き物、どうゆう構造なのだろうか気になる
ゴーレムは無言で手合わせしてジェリクと飛び掛かる
ジェリクは赤い槍ですべてのパンチを軽く受け流して目にも留まらぬ早さでゴーレムの手足をスパスパ切っていく
その姿はまるで武人
ジェラルトの目はまるでヒーローを見ているような眼だ
そしてゴーレムが飛び掛かった瞬間ジェリクがこちらに気づいて「おぉぉぉ!!レギオンにジェラルト、ガルキオ!!」その瞬間周囲にドバァァァン!と衝撃波のような物が放たれてゴーレムが崩れる
そしてその場に居た兵士全員が倒れる
ペドラがため息を吐いてやってしまったという顔で「あぁ~・・・ジェリク!あれほど魔力は控えなさいって・・・」
ジェリクが駆け足でやってきて、俺を抱っこして「いや~すまんなぁ、こうして起きている我が子達を眺めるのは結構久しいからな・・・ほーれレギオン」
高い高い~!って奴をされているが、あ、あんまし嬉しくないな・・・
「父さん、周りの人達どうしたの?」
ジェリクが辺りを見回して「あぁ~私の魔力が高すぎるせいで自分で制御せず解放してしまうとこうなってしまうんだ、と言っても分からないか」
いえ十分分かりました・・・
俺を下して次はジェラルトを持ち上げる
そうするとジェラルトは目を輝かせて「パパ!僕騎士になる!!パパみたいな強い騎士!」
ジェリクは嬉しそうに笑い「そうかそうか!!このジェリクその言葉に感激したぞ!!」
なんだか肌がピリピリしてきた・・・親父・・・嬉しいと周囲に魔力をぶっ放すのか?
向こうに退避していた兵士達も次第に倒れている
俺はジェリクの息子だからこの魔力に平気で耐えられるのだろうけど・・・普通の竜人達からすれば大変な事なんだろうな・・・
ガルキオはジェリクの鼻を握り「パパ~!!大好き~!!」
ますます周囲に魔力が広がる
ペドラもフラフラしている
俺がジェリクの足の鎧を揺さぶり「父さん・・・周り・・・」
ジェリクが周りを見ると「いかんいかん・・・今日の訓練は中止だな・・・ペドラも大丈夫か?」
「え、えぇ・・・まったく・・・テンションが上がると魔力濃度が濃くなるのは昔以来ね・・・」
ジェリクは大笑いしてペドラに「ガハハハ!すまんすまん!息子たちを連れて先に帰っていてくれ、俺はここの後片付けしたら戻る」
「えぇ、また後で」
こうして今日の探検は終わった・・・しかし親父・・・魔王は本当にすごい・・・戦闘時となったらあの魔力だけで敵が倒せそうだ・・・親父・・・本気だしたらどうなるんだろ・・・世界が滅ぶとか?
底知れない親父の力に興味を示すレギオンだった・・・