誕生日会!
魔歴1544年
今日は誕生日・・・1月10日、俺はこれで3歳になった訳だ
兄弟達もずいぶんと利口になってきた、言葉も発達してかなり表現力が豊かなになってきているし、何より俺に迷惑かけていた事が減ってより良くなってきた
今日は家のテーブルにケーキが置かれてパーティーだ
親父は・・・やはり人間との戦いに備えての訓練だ、王たる者仕方ない・・・
兄弟たちはペドラ母さんに「ねーねーパパは?」「パパ居ないの?」
ペドラ少しだけジェリクの事を思ったのだろうか、少し物を思う顔で笑った後
ジェラルトとガルキオをよしよし・・・と撫でて「パパは私達を守る為に忙しいの・・・だから!ママが誕生日祝うからね!」
俺は自分でフォークをもって食べる事ができるが、ジェラルトとガルキオは相変わらずペドラに食べさせてもらっている
そして・・・誕生日と言えば・・・
ペドラが綺麗な水玉模様の入った包装紙を持ってくる
誕生日プレゼントだ
懐かしいな、俺も小さいころこうやってプレゼントが嬉しかったっけ、前世の事を思い出してシンミリしていると
ジェラルトが受け取って夢中で箱を開けると、ジェラルトには剣のオモチャ、ガルキオにはボウガンのオモチャだ
俺も思わず苦笑いして思う『これまたチョイスが親父が好みそうな物だな・・・』
そう思っていると俺のにもプレゼントが渡された
開けてみると入っていたのは、本だった
ペドラ母さんも中身が何だった知らなかったらしく、俺が取り出すとペドラ母さんが
「ごめんねレギオンちょっといい・・・?」
申し訳なさそうに俺から取ってページを開いて中身を確認するとペドラが「これって・・・」
ペドラがため息を吐いて「ジェリク・・・これ7歳用の本じゃない・・・」
「母さん?本ちょっといい?」
俺が聞いて、本を受け取り見てみる
今までよりワンランク上の本だ、書いてある字が少しだけ難しいが読めない事は無い
どうやら魔術に関する本のようだ、簡易的な魔法についての基礎が書かれている
これは面白い
前世は勉強になんてこの歳だと興味はなかったが、成人してから興味がある事を見つけると、とことん調べてしまう癖が出てきて本を黙って見続けてしまう
ペドラは俺に確認するように聞いてくる「レギオン?これ読めるの?」
頷いて「うん、少しなら、ペドラ母さん、ここなんて意味?」
ペドラは解説しようと「ここはね、この文字は複数って意味なの・・・って違うわ、あなたこれが理解できるの?」
俺が頭をかしげて「難しいけど・・・好きだよ!」
俺は素直に答えるとペドラは困った顔で「はぁ~」と軽くため息を吐いた
何か悪い事をしてしまっただろうか?
俺の顔がよほど不思議そうにしていたのかペドラが言う「レギオン・・・この本はいずれ私がちゃんと然るべき時に渡すわ、しばらくの間これはダメよ」
なんでだ?魔術に関して触れるのはマズイのか?
俺は怒るというよりも『なぜそうなのか』そう考えてしまい
ペドラが俯いて「レギオン・・・ここは普通怒る所じゃないの?普通の子だったらここは激しく怒るものだと思うのだけれど・・・」
「あっ・・・う、うん・・・」
確かにな普通の子供ならな
ペドラはやはり俺が普通じゃない事に察し始めているようだ
俺が利口過ぎて困っているのだろう
俺が下を向いて俯くとペドラは首を振り「ごめんなさい・・・レギオンはレギオンよね・・・でもレギオン・・・私からのお願いは・・・もう少しゆっくり大人になって・・・急がないで・・・ゆっくり」
ペドラ母さんは心配しているのだろう、ジェリクがこのプレゼントを贈ってきたって事は英才教育を始める気でいる父親・・・
だけどペドラ母さんは俺が普通の子供として成長できるようにステップを踏んで行ってほしいのだろう
その時俺は静かに頷いた
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誕生日翌日、兄弟達は飽きずオモチャの剣でチャンバラして遊んでいる
俺は・・・暇だ
椅子を引っ張ってきて、窓から街を見下ろす毎日、馬車が行ったり来たりして物流の様子を窓から見ている
広場で親父が兵士達を指揮して訓練する様子も見えている
『親父頑張ってるなぁ、俺も何かしたいなぁ』
そんな事ばっかり考えている
考えていると後ろから
ジェラルトとガルキオが剣で突いてきて「あそぼ!」「あそぼ!」と二人で言ってくる
仕方ないペドラ母さんの意見も了解したし、付き合ってやるか
俺はガルキオから剣を借りてジェラルトは向き合う
ジェラルトも筋がいいのか、意外と素早く剣を振り降ろしてくる
俺もすかさず剣で応戦して弾いて、相手もそこそこの力で殴ろうとしてくるので
俺も本気を出してしまい、相手の剣のグリップを掴んで攻撃を遮り、腹部に思いっきり当ててやった
ジェラルトが文句を言ってくる「兄ちゃんずるーい!」
確かにこの攻撃は大人げなかったな・・・
今度はワザと負けてやってジェラルト達を喜ばしてやる
だけど・・・やっぱり俺は勉強の方が性に合ってるな・・・
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皆が寝静まった夜
俺達子供は成長する為に早寝早起きを心がけている・・・だけど今日は騒がしくて眠れなかった
「ジェリク・・・いくらなんでも魔法の初期教本はレギオンには早すぎるわ」
「あのなペドラ・・・レギオンは次期魔王になるやもしれぬ、それに本人も本を望んでいるのだろう?さっきお前も言ってただろう・・・レギオンから勉学を取り上げたら暇そうにしていると・・・」
俺はドアを少しだけ開けてこっそり様子をうかがう事にした
ペドラ母さんが困った顔で下を向き
「そ、それは・・・そうだけど・・・」
ジェリクは父親らしい顔つきで語る
「レギオンが望む物が勉学であるならばそれを与えるのだって親の義務だろう・・・」
どうやら昨日のプレゼントの事で揉めているようだ
ジェリクが教本を見て「ペドラ、レギオンはオルベガの話では特別な子だ・・・魔法検査の結果子供では考えられない知力だと結果が出ている、レギオンは生まれ持った特性がある、その素質を伸ばすも殺すも俺達次第だ、ペドラ、自由にさせてやれ」
ペドラは拳を握って「ジェリク・・・私達って家族よね・・・私一人で子育てする事だって戦争に備えなきゃならない事だってわかってる・・・だけど・・・私はこんなガチガチな家族は嫌だわ・・・もっと家族らしくしたい・・・」
ジェリクが困った顔でペドラを見て「ペドラ・・・分かった・・・それじゃ明日は外出許可を出して城の外でも歩くといい」
ペドラが嬉しそうに「本当!?」
ジェリクがため息をついて「原則として一人に警備一人が担当させる、この間の誘拐事件の事も考えてな」
「分かったわ・・・それに万が一は・・・」
ペドラが手から魔力のような物を発して弓を召喚した「私だって魔王の嫁よ、戦えるわ」
ジェリクが笑い「フッ・・・そうだったな、サポートマスター」
どうやら明日は外出か、思えばここの部屋から三年も出てなかったな、城の中ですらまだ見た事がない、これは楽しみだ