おやつの時間
頼まれたので、クッキーを焼く。ココア味とバニラ味を混ぜて、冷凍庫でしばらく寝かせる。学校の調理室は静かで、ときおり、校庭や体育館から部活中の生徒の叫び声が聞こえるくらいだ。
飛び散った粉を台ふきんでぬぐう。先にオーブンに投入したケーキがもうすぐ焼きあがるから、待つ間に、冷蔵庫に勝手に入れていたサイダーの口を開けてそのまま飲む。
「先生、またやってる」
上の図書室にいたはずの生徒たちが、調理室の扉を開けて顔を出す。今日のおやつは先生の先輩に頼まれた土産用だから、君たちの口には入らない。
仕方がないので、琥珀寒天を作ってサイダーと共に与える。
日が暮れるまでの、小さな楽しみ。
#掌編俺のグルメFES
タイトル:おやつの時間
ジャンル:現代
注意書き:調理室