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なんか無理やり異世界へ行くことになったんだけど  作者: 玉本綜
第一章  いざ、異世界へ
2/2

いざ大空へ

 気がついた時には、もうそこは俺の部屋ではなかった。

「ここは……?」

 地面に尻をついて座った状態で、辺りを見回してみる。すると、俺を見下ろす何人もの人間達と目が合った。その中には、やはり無表情のラゴンの姿もある。

 ラゴンは俺と目が合うと、無言ですっと手を差しだしてきた。

「自分で起き上がることもできないのか。地球の人間は貧弱で横着なんだな」

「……い、いや、別にそんなんじゃねぇよ」

 強がるものの、素直にラゴンの手をとって立ち上がる。すると周りにいた人達は、俺の動きに合わせて視線を動かした。

「ラゴンとか言ったっけ。お前これ、どうなってんの?」

「どうなってんのとは、どういう意味だ?」

「だから、ここはどこだってことと、周りにいる奴らは誰だってことだよ」

 俺はぶっきらぼうにそう言ったのだが、ラゴンは今度は呆れることもなく、

「ここはストウミィに隣接する国の一つ、クローク国だ。そして彼らは、クロークの住民だ」

 当たり前だと言わんばかりの表情で言った。いや、そんなこと言われても、全然ピンとこないんだが……。むしろ余計にこんがらがってしまう。

「ま、まぁ、隣町ってとこか?」

「そう理解してくれてもいい。……そろそろ行くぞ」

「へ? 行くってお前、どこに――」

 俺が言いかけた、その瞬間だった。

 吹き飛ばされるかと思うほどの強風が俺を襲い、周りにいた住民達も同じく襲われていた。頭上からは、何かが羽ばたく様な羽音が近づいてくる。

 その羽音は虫のものなんかとは比べ物にならないぐらい勇ましく、例えればドラゴンのもののようだった。ま、ドラゴンなんて伝説上の生き物であって、実際には存在しないんだけどな。

 ……でも待てよ、ここは俺が住んでいる地球ではなく、世に言う異世界という場所だ。それにラゴンは、能力がどうとか言っていたな……。

 嫌な予感が俺の頭をよぎる頃には、もう時すでに遅しだった。

「こっちだ、ホス、ピトル」

 ラゴンが空に向かって、大きく手を振っている。俺は彼女の視線の先を、反射的に目で追ってしまう。

 そして、俺は見た。

 俺とラゴン、加えて住民達の方へと真っ直ぐ飛んでくる、二匹のドラゴンの姿を。

 そのドラゴンは両方ともほぼ同じ外見をしており、体の表面は全体的に青く、目は赤く輝き、包丁の代わりにもなりそうな鋭い翼の裏側が黄色になっている。腹はクリーム色で、何本か横線がはいっているのが薄らと確認できた。

 なんだよコイツら……。本物のドラゴンなんて見たことがない俺は、その姿に恐怖をおぼえる。

 ドラゴン達はゆっくりとラゴンに近付くと、クロークの住民達が開けた場所へと静かに着地した。

「今日も宜しく頼むぞ」

 ラゴンが、ドラゴンの鼻先を撫でる。するとドラゴンは、嬉しそうに目を細めた。

「す、すげぇ……」

「何をぼさっとしてるんだ、早く行くぞ」

 俺が二匹のドラゴンを交互に眺めていると、ラゴンに厳しい視線を向けられた。だから、行くってどこへだよ?

「どこへ行くっていうんだ?」

「話しただろう、ブワックへ乗り込みに行くと」

 あぁ、お前の国を乗っ取るって宣言した大統領がいる国ね、はいはい。

「それは分かったけど、どうしてドラゴンなんか呼んだんだよ」

 俺はもう一つ、気になっていたことを口にした。するとラゴンは、今までずっと無表情だった表情を怪訝そうに崩し、

「何も分かっていないんだな。こいつらに乗ってブワックまで行くからに決まってるだろう」

 俺をめんどくさい人間だと言うように、やや乱暴にそう言った。

 乗って行くって言われても、俺はコイツらとは初対面だし、そう上手くいくのか? 途中で機嫌を損ねられて、振り落とされるなんて絶対に嫌だぞ。

 とは思うものの、そんなことをラゴンに言うことはできない。言ったらまた、「私が信用できないというのか」などと言い返されてしまうからな。

 仕方ない……。俺は覚悟を決めて、ラゴンへと頷いた。

「分かった、俺も行くぜ」

「当たり前だ。ではお前は、ピトルの方へ乗れ。私はホスに乗る」

 『ホス』と『ピトル』というのは、どうやらドラゴンの名前らしいが、俺にはどっちがホスでどっちがピトルかなんて全く分からない。

 見ただけならどっちも同じに見えるし、何か目に見える違いでもあるのか?

 ラゴンに聞こうかと思ったが、言い返されるのが嫌で聞くことができない。よし、ここは一か八か、感に頼ろう。

 俺は向かって右にいたドラゴンに近付き、背中側へと回った。そして、興奮させないようにゆっくりと、背中を上っていく。幸い、ドラゴンが暴れ出すことも、俺が足を滑らせて転落することもなかった。

 それを見ていたラゴンが一言。

「……感だけはいいようだな。それとも運か?」

 やはり、俺がどっちがピトルか分かっていないことなんて、お見通しのようだった。鋭そうだもんな、ラゴンって。

 ラゴンはもう一匹のドラゴンである、ホスの背中に軽々と飛び乗る。よくまあそんな動きができるなぁと、異世界初体験の俺からすれば驚きだ。

「準備はいいか、文月」

「あ、あぁ……いいぜ」

 返事はしたものの、ちゃんと空を飛べるかが心配だ。しかし、ラゴンはそんな俺の思いには気づかずに、

「飛べと言えば飛ぶ。では行くぞ」

 それだけ言い残すと、自分は先に空へと飛び立った。飛べって言えば飛ぶとラゴンは言うが、本当に大丈夫だろうか? いや、それ以前に、アイツはそのなこと言ってないのにホスを飛ばしたな。

 ドラゴンの扱いには慣れているのだろうか?

「ま、まぁいいか。……よし、ピトル、飛べっ!」

 俺が命令すると、ピトルは一瞬にして空へと飛び上がった。飛び上がった、のはいいが……。

「う、うおっ?」

 肝心の俺が、早速地へと落ちようとしていた。

 ピトルはホスとは違い、体を九十度傾けて……つまり縦にして、空へと向かっていったのだ。ちなみにホスは、体制はそのまま、浮くようにして飛び立ったんだけどな。

 てか、なんでこんな奴を俺に寄こすんだ! なぁ、ラゴン!

 俺は必死にピトルの背中に這いつくばり、落ちないように耐えた。しかし、それもつかの間。すぐにホスとラゴンと並んで、大空へと浮くように飛んでいた。た、助かった……。

 横を見ると、同じく俺へと顔を向けていたラゴンと目が合った。

「お前がドラゴンの扱いに慣れていないのは当然だ。だが、いつも一緒にいれば必ず心が通じ合うようになる」

「それは、お前だからできることなんじゃないのか?」

 俺がそう言い返すと、ラゴンは視線を少しだけ下に向けた。……あれ? 何か変なこと言ったかな?

 ラゴンは視線を俺に寄こさずに、若干悲しそうに答える。

「確かに私は、惑星アースの人間であり、ドラゴンと友達になれる能力を持っているから、お前よりはハンデがある。だがな……」

「だけど?」

「最終的には、努力も必要なんだ。努力なしでは、才能があったとしても、それを開花させることは不可能だからな」

 ラゴンは言い切ると、ホスの背中に当てていた手に力を込めた。何か、ラゴンには思うことがあったのだろうか? 俺はそんなことを無神経に聞いたりはしないが、機会があったら少しずつ聞き出してみるのもいいかもと思った。

「努力、か……」

 確かに、努力は大切だな。努力が嫌いだという人はたくさんいるだろうけど、やっぱり努力なしで立派な人間になろうなんて、考えが甘いんだよな。

 俺はそんなことを考えながら、視線をラゴンから前方へと向けた。

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