第一章 始まりは日曜日
その日も、別段いつもと変わらない一日だった。
高校二年生。華の女子高生。青春真っ盛り。人生のボーナスステージ。
世間でそんな風に騒がれる十七歳の十月を、私はその日も無為に浪費していた。
日曜日だったけど、特に変わらない。友達がいない私は休日だからといって遠出するようなことも無いし、趣味が無いから学校に登校しなくていい事実に喜んだりもしない。ただ漫然と機械的に勉強をするか、ただ漫然と機械的にボーっとするかの違いくらいである。
そんな感じで、だいぶ涼しくなった秋空を見上げつつ一日を終え、六畳一間の窓を全開にして布団に寝転がった時だった。
――――コンコン。
ドアがノックされている。
珍しい。私のマンションは学園(高校)指定のもので、レディースタイプだ。防犯もそこそこしっかりしている。なので当然、モニター付きインターホンなんて洒落たものもあるのだが、それを完全にスルーしてノックをされるなんて初めてだ。……あ、訂正。そもそも、私のマンションに来客があること自体、初めてだった。
「…………はい」
なんか、久しぶりに喋った気がする。
声が出るか不安だったけど、なんとか私の声帯は生存してくれていたようだ。
「こんにちはー!」
ドア越しに、無駄なほど明るい挨拶が返ってくる。
声の感じからして男性。年齢は私と同じ頃だと思われる。
「……どちら様ですか?」
「うーん。それを説明するのはちょっと長くなりそうだから、とりあえず開けてくれないかな?」
怪しい。怪しすぎる。
新手の宗教の勧誘か?
「いやいや。宗教じゃないよ、淡居ちゃん」
「……私は私をちゃん付けで呼ぶ人間に心当たりがないのですが」
「そうかもねー。だって僕、初対面だしー」
なんか、疲れる。
これだから他人とコミュニケーションをとるのは嫌なんだ。
「……申し訳ありませんが、どちら様か分からない以上、開けるわけにはいきません」
「ええー。じゃあ、とりあえず職業だけ名乗ろうかな。僕は、死神です!」
わかった。コイツ、危ないヤツだ。
私はそれ以上会話するのをやめ、布団に入ってさっさと寝た。