event2:記憶のカケラ
俺は剣を振るう
ただ 己の利己心の為に
俺は剣を振るう
ただ 己の大切モノを護る為に
その為なら 俺はどんな相手にも牙を向けよう
―――例え 憧憬する親族の一人だとしても──…
「っらぁ!!」
俺は剣を横に凪ぐ。
空を裂くばかりに鋭い剣圧が相手を切り刻んだ。
その剣を返す流れでもう一刀。
手ごたえを感じたが、警戒は緩めてはいけない。
いつの間にか相手が消えていたからだ。
俺はただ、無言で剣を握り締める。
──刹那、空気が動いた。
「そこかっ!!」
地を思い切り蹴り、更に体重を乗せた一撃。
それはそのまま、相手の首筋に向かって吸い込まれ…
「そこまで…レイの勝ち、だ」
「っしゃー!」「な…!?」
審判をしていた兄貴の声に拳を握り締め喜ぶ俺と愕然とする弟。
それもその筈、今まで一度たりとも勝った事がなかったんだ。
そんな相手に、初めて、しかも完封したのだから喜びは半端じゃない。
「ず、ズルしたんじゃないのか?レイ…」
「してねーよ!今までだって一度たりともしてないぞ…全部正当法だ!」
「…むむむぅ」
負けたのが悔しかったのか口をへの字に曲げて唸る弟。
正直言うと、"弟に負け続けていた兄"というのはどうかとは思うが…しょうがないといえばしょうがない。
全知全能すぎるんだ…弟は。
「■■■、確かにお前は何でも出来る。ソレに対してレイは…平均以下だ」
「うぐっ」
兄貴の贔屓も情もない痛烈な言葉が胸に突き刺さる。
兄貴自体も万能であるだけに…余計に精神への損傷は大きかった。
「だが、レイには直感と努力がある。それにまだ開花していない潜在能力もある筈だ。今回ので良く分かっただろう?"努力"は時に"天才"にも勝る。力を過信して修練を怠ると…差を付けられるぞ?」
珍しく饒舌な兄貴は口元を緩めながら俺の頭をポンポンと撫でる。
照れくさいと感じながらも…心地よい感覚に俺は肩から力を抜いた。
弟はそんな俺と兄貴を見た後…掌をじっと見つめた。
そこに何が見えたのかはわからないが、暫く微動だにしなかった弟は手をグッと握り締め、顔を上げる。
「…そう、だな。俺は自分の力を過信していただけなのかもな」
前髪で見え隠れする双眸には…決意の色が見え隠れしていた。
「レイ…次からは俺の全勝だ!今回はサービスなだけだ!」
「んな訳ねーよ!こっから先は俺が勝つ!」
「いや、俺の勝ちに決まってる!脳筋!」
「んだと!?別に俺は脳筋じゃねーし!知ってるぜ?時たま部下に無視されてるの」
「な…!?」
弟と痴話喧嘩を始めてしまった俺。
俺も弟も…精神年齢は同じぐらいらしい。
「………はぁ」
視界の隅で溜息を吐いている兄貴が見えた…。
'・:*:.。.:*:・'゜'・:*:.。.:*:・'゜'・:*:.。.:*:・'゜'・:*:.。.:*:・'
『ん…』
見慣れない天井が視界に映る。
…あのまま気絶でもしちゃったのか…?
それにしても今の夢…いや、あれは記憶だ。
今でもハッキリと思い出せるし、気絶(?)する前と感覚が似てた。
夢と片付けるには…風や地面の感覚がリアル過ぎるし。
だけど、何故かあの場にいた人物の顔だけ思い出せない…。
弟と兄らしいし…俺は一人っ子だから前世の兄弟はどんな奴か知りたい。
が、どんなに頭を捻っても、髪色とか目の色とか…そういうのしか出てこない。
あぁぁ、くっそぉお…何で肝心なの思い出せないんだよ…気になるじゃねーか…。
「レインティア様…起き上がってはいけません。まだ安静にしていて下さい」
声をかけられて顔を見上げると…ベッドの脇に姿勢良く立ってるウィンダーク。
いつの間に…と驚いている間もなく背と肩に手を置かれた。
突然の行動に驚いた俺はなす術もなくそのままゆっくりとベッドに寝かされる。
『何す…』
せめて講義しようとしたが、相手の瞳の奥が心配そうに光っていたのを見た為に何も言えなくなる。
ソレを見たら…一瞬だけ、記憶の一部を垣間見た。
前にも同じシチュがあった…らしい。
その時の俺も同じ行動をして、ウィンダークも同じ行動をした。
それを思い出した俺は…弾かれた様にウィンダークを見上げる。
…そう、コイツは…
コイツは、いつも俺の事を優先して、何かを言う前に行動する…そういう癖があった。
そして…
「断りもなく触れてしまい、失礼しました」
後で謝る。
申し訳なさそうに、でも、自分の行動に後悔はなく。
端から見ても…というか、俺から見ても過保護過ぎだけど…俺の事を考えての行動だからきつく言えない。
『いや、良い…気にすんな』
『とんだ曲者じゃねーか…しかも無自覚…』と思いつつも、気づかない内に自然と笑みが零れた。
確かに、普通に学生をやっていた俺が突然訳の分からない状況に巻き込まれ…その原因を作ったウィンダーク達には少し怒りを覚える。
けど…それと同時に会えた事に対して嬉しいと感じるのも確かだ。
多分…前世の影響?だろーな。
それに…
『ありがとう』
「…?」
『俺…もしかしたら死んでたかもしんない。…だから助けてくれてありがとう』
起き上がるとまた寝かされそうだから目礼する。
そう。
確かに異世界に召喚された事に関しては怒ってはいるけど、もし召喚されてなかったら俺は死んでいた。
こっちに来る前のあの光景…視界一杯のトラックとかどう考えても死んでるし…。
ソレよりかは召喚された方が多少マシに決まってる。
もしかしたら帰れるかもしれないし。
「いえ、それは違います」
『え?』
思わぬ返答に瞼を開くと、心底不思議そうな双眸があった。
「貴方様が人間の身体から離れて霊体になるのを待ち、召喚したので、恐らく手遅れです」
んーそうか…って事は俺の身体は…
身体は死んでる?
あれ?良く見たら俺の身体透けてんなー。道理で声が何か違う様に聞こえるのかー。
……。
…………ハハハッ…
さっきの気持ち返せッ!!!んでもって一発殴らせろぉお!!!
俺は即座に部活で鍛えた腹筋を使って起き上がった。
拳を握って、自己最高記録並みの速さで突き──
「落ち着いて下さい」
…ソレよりも先に肩を押さえ込まれて寝かされました…まる
…今に始まったものじゃないですが、厨二病が…w
サブタイですが、英語にしたら何か他のものと被っちゃったので普通に日本語にしてみました。
…テスト週間だが大丈夫か?───大丈夫、問題だ(ヲィ




