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第48話 思考回路が止まる

 安心していた。夢の中でだって、安心できた。さっきいた女の人も、聖君は奥さんを大事にしてるし、目の保養でいいかなって言ってたし。かなり安心しちゃったのに、いきなり不安が…。


「郁枝ちゃん。今日の昼に、ビデオ上映会するでしょ?」

「あ、部長さんの?」

「そう、それを見に来たんだって」

「え?じゃ、もしかしてこの大学じゃない人ですか?」


「あ、忘れてた。こちら、榎本桃子ちゃん。聖君の奥さんだよ」

 麦さんがそう紹介してくれた。そしてその途端、郁枝さんの顔が真っ青になったのが、きっと麦さんでもわかったと思う。

「せ、先輩の奥さん…」


 どうしよう。思い切り、引きつってるし、今にも泣きそうな顔になってる。

「あ、あ、あの。私、用事がありました」

 そう言うと、郁枝さんはダッシュでその場を立ち去った。


「あちゃ。やっぱり、ショックを受けちゃったか」

「え?」

 麦さんは、ゴクンとコーヒーを飲むと、

「郁枝ちゃん、聖君にあこがれてたからねえ」

とぼそっと言った。


 ラブレターのことは、麦さんも知らないんだ。そりゃそうか。勝手にカバンに入っていたみたいだし。

「あの子、泳ぐの得意だし、ダイビングに思い切り興味があるらしいんだ。聖君のことも全く知らずに、サークルに入ってきたみたいで」

「そうなんですか」


「そういう子じゃないと、部長入れさせなし」

「…」

 でも、だったらカッキーさんは?思い切り聖君目当てだって、わかんなかったのかな。

「それで、サークル入ってから、聖君を見て、一目ぼれしたらしいよ」

 一目ぼれ?私と同じ?


「でも安心して、桃子ちゃん。聖君、あんまりあの子とは話もしていないし」

「わざとですか?」

「ううん。そう言うわけじゃないと思うけど。新入生に対しても、男子とばっかりからんでる。もともと、女性に話しかけるタイプじゃないじゃない?聖君って。私の時もそうだったし、カッキーの時なんて、もっと無視してたし」


 それは、まだトラウマがあった時なんだけどな。

「カッキーとは今はもう、壁を隔ててる感じなくなったけどね。あれは、カッキーが木暮君と付き合いだしたからじゃないかな」

「そうなんですか…」


「聖君、無意識でそういうところ、注意してるよ」

「そういうところって?」

「彼氏がいたりすると、ちょっと安心して話すけど、独り身の子には、距離をちゃんとおくの」

「…苦手だから?」


「ううん。多分、桃子ちゃんのために」

「え?」

「桃子ちゃんを、悲しませたくないって、前にちらっと言ってたし」

 え?


「なんだかね。奥さんのことをすごく大事にしていて、可愛らしい奥さんなんだって、噂も広まったしね」

「それ、なんでそんな噂が」

「ああ、出どころはこのサークルなんだけど」

「え?」


「聖には可愛い奥さんがいて、すんごく大事にしてるからって、部長が入部希望の子にかたっぱしから言ったみたい。で、ほとんどが諦めて帰って行ったの」

「郁枝さんは?」

「ああ、郁枝ちゃんは本当に、入部するまで聖君の名前すら知らなかったから」

「そうなんですか」


 そうか。噂の出どころは、サークルからだったのか。

「……」

 ラブレターのこと、麦さんに相談してみようかな。

「桃子ちゃん、今、江の島にいるの?それとも」

「あ、江の島です」


「そう。じゃ、今度遊びに行こうかな」

「でも、もう少ししたら帰りますけど」

「なんだ~~~。なかなか会えないから、寂しかったよ、いろんな話したかったし」

「…どんな?」


「桐太のこととか」

「…たとえば?」

「桐太って、聖君を好きだったってほんと?」

 え?なんでそれ!

「本人が言ってたけど、あれって、ジョーク?それとも、まじ?」


「……」

 どう答えたら…。

「あ、いいの、いいの。本当でも。私、そういうのあまり気にしないし」

「へ?」


「桐太がもし、その…。男の人のことも好きになれる人だったとしても、別にいいんだ」

 すご~~い。愛だ。愛!

「私も、女の子のこと、結構好きだし」

 ………。

「へ?」


「高校の頃、ちょっと気になる女の子いたし。その頃はね。まさか私が女の子を好きになるなんて、信じられなかったけど、だから、自分でその思いを打ち消したけど」

「…はあ」

「だから、桐太のことも、責められないし、ちょっと気持ちもわかるなって」


「…はあ。あ、でも、麦さんは桐太が好きなんですよね?」

「もちろん。桐太だって、私を好きだって知ってるよ。でも、まだ聖君に対する気持ちも残ってるみたいだなって、なんとなくそんな気もする」


「……」 

 そうか。それでも、麦さんはいいんだね。じゃあ、ちゃんと話しても大丈夫だよね。

「えっと、はい。桐太、聖君にもちゃんと告白していたし…。その気持ちを知ったうえで、ちゃんと聖君は桐太を友達として受け入れてるし」


「やっぱり、そうなんだね。じゃ、桐太と桃子ちゃんが仲いいのって」

「はい。いつも、聖君の話で盛り上がったから、それで」

「…好きな人が同じだから、盛り上がったの?」

「…はい」


「面白いね。それで桐太はやけに、桃子ちゃんのこと、同志みたいに思ってるんだ」

「同志?」

「同じ人を好きなものどうし…」

「はあ…」


「そっか。じゃ、私はもしかして、聖君と仲良く話せるかな」

「え?桐太のことで?でも、聖君は、恋愛感情を桐太に持ってるわけじゃ」

「ああ、違うわよ。桐太じゃなくって」

「え?」

 麦さんはなぜか、私のことをじっと見ている。


「桐太のことは、本当に好きだし、これからも付き合っていくよ。でも、会えないと寂しくなったり、会えると嬉しくて笑顔を見るとすごく癒されるのは、恋の一種なのかなって思うし、悲しんだりしたら、私がなんとか守ってあげたいなんて、そんな気もわいてくるんだよねえ」


「……え?それって?」

「桃子ちゃんに対して」

 ……。

 え~~~~~~!!!!????!!!!????今、なんて?!!!


「カッキーのことは、どうにか無事解決したみたいだし、今度はあの子だね」

「え?」

「郁枝ちゃん。郁枝ちゃんが聖君に手を出さないよう、見張っておくから、桃子ちゃんは安心してね?」

「………」

 なんて言ったらいいのか、ちょっと今、思考回路停止中…。


「あ、聖君、来た」

 麦さんがそう言って、立ち上がった。でも、私は思考回路停止中です。まだ…。

「ごめん。麦ちゃん。桃子ちゃんに付き合わせちゃって」

「ううん。大丈夫。楽しかった」


「桃子ちゃんもごめんね?さて、サークルのほうに行こうか」

「………」

「桃子ちゃん?」

 カッチン。なんだか、初めてのことなので、体が固まっちゃってるんですけど。


「どうかした?緊張してんの?」

「あ。そうか。さっきのが原因か~~」

 麦さんがそう言った。うわ。まさか、聖君にも言っちゃうの?

「さっきって?」

 聖君も、聞いちゃうの?!


「うん。ここに郁枝ちゃんが来たんだよね」

 ……そ、そっちの話か~~~。ああ、ほっとした。って、落ち着いてる場合じゃ…。そっちはそっちで、大変なんだった。忘れてた。

「郁枝って、東海林さん?」


「そうなの。それで桃子ちゃんのこと紹介したら、真っ青になって逃げて行っちゃって。あの子も大丈夫かなあ。ちゃんとサークル来れるのかしら」

「…そっかあ。手紙を渡した翌日に奥さんが現れたら、さすがに罪悪感でもでちゃうのかな」

 聖君がぽつりとそう言うと、

「え?手紙って何?」

と麦さんが聞き返した。


「あ、桃子ちゃん、言ってないのか。昨日帰ったら、鞄から出てきたんだよね。あの子からの手紙が」

「ラブレター?」

「うん、多分」

「多分って、なによ、それ。結婚もしてるのに、何でラブレター?」

 麦さん、怒りだしちゃった。


「なんでだろうね」

「なんで、受け取っちゃうの?」

「だから、それ、みんなに責められるけど、勝手に鞄に入ってたんだって」

「え~~!信じられない」

「麦ちゃん、怒りすぎ。ちょい怖い」

 聖君が怖がっている。めずらしいかも。


「もう!聖君、ちゃんとガツンって言わないと駄目だよ。カッキーの時みたいに、宙ぶらりんにしないでよね」

「…なんで、麦ちゃんにそこまで俺、言われないとならないわけ?」

 あれ?反撃に出た?

「桃子ちゃんが一番、傷つくでしょ?」


「あ、うん。そうだね。うん」

「もう、しっかりしてよ。桃子ちゃん!大丈夫だからね。私が、守ってあげるから!」

「……」

 かっち~~~ん。あ、また、思考回路が…。


「なんで、麦ちゃんが桃子ちゃんを守るんだよ」

「好きだからでしょ?」

「俺の奥さんだよ?俺が守るよ」

「頼りにならないじゃない」

「ひで~。守るし、大事にしてるよ、俺は」


「いいから。私も桃子ちゃんは大事だから、守るの!」

「…まあ、いいけど」

 聖君がひるんじゃった。じゃなくって、私はいったいどうしたらいいの?


 

 思考回路がゼロのまま、私は聖君にくっついて、スキューバダイニングの部室までやってきた。

「ちわ~~っす」

 聖君はそう言ってドアを開け、それから、私の手を引いて中に入った。

「今日、奥さんも連れてきちゃったんだけど、一緒にいいっすよね?」


 そう言うと、中にいた人たちが、いっせいに声をあげた。

「桃子ちゃんだ」

「聖の奥さん!久しぶり~~~」

「元気だった?赤ちゃん、生まれたんだろ?おめでとう~~~」


 ああ、すごく歓迎されて嬉しいけど、圧倒されちゃう。

「ほら、みんな座って。桃子ちゃんがびっくりしてるだろ?静かに!」

 ほ…。さすがだ。やっぱり大木戸さん。部長をしているだけのことはある。


「さて、みんなで今日はパンを食べたりジュースでも飲みながら、ビデオ観賞をするとしようか」

 大木戸さんは、表情を和らげそう言った。

 テーブルの上には、サンドイッチや、パンやピザ、それからお菓子が並んでいた。

「桃子ちゃん、こっちに座って。はい、ジュース」

 そう言ってくれたのは、菊ちゃんだ。

「ありがとうございます」


「桃子ちゃんは女性陣の中にいましょ。むさくるしい男の中は嫌でしょ?」

「え?」

「あと、いっつも旦那とくっついてるんだから、たまには離れてもいいわよね?」

「え?」

 菊ちゃんとカッキーさんにそう言われた。う、聖君と離れちゃうの?


 あ、でも、ここからだと、聖君が良く見える。それはそれで、いいかも。

「すみません、遅くなって」

 そこに郁枝さんがやってきた。

「あ、郁枝ちゃん。女性陣はこっちよ」

 菊ちゃんがそう言って、郁枝さんを呼んでしまった。


 ああ、やばい。こっちに来ちゃうのか。

「郁枝ちゃんは、最後だったし、一番奥ね。菊ちゃんのそのまた奥の席、空いてるから」

 そう麦さんが言って、私との席を離して郁枝さんを座らせた。ほ…。ありがたいかも。

 でも、そういう麦さんがしっかりと私の隣をキープしていて、それはちょっと困ってしまうかも。


 聖君は桐太から好きだって言われて、意識したことはないの?困ったり、話しづらかったりはしなかったのかな。やっぱり、聖君に相談してみようかな。


 ああ、郁枝さんのことといい、麦さんのことといい、なんだか一気にのほほんとした生活の中に、悩み事がやってきちゃったよ。


 スクリーンに映った海は見事に綺麗だった。聖君はそれを、目を輝かせて見て、部長の話を羨ましそうに聞いていた。

 そうだ。私と出会わなかったら、聖君は今頃この沖縄の海を毎日のように見てるのだろう。

 私と…、出会わなかったら。


「以上。どうだった?そのうち、みんなも行ったらどうだ?」

「そうっすね。お金があれば行くんだけどなあ。バイト頑張ろうかな」

 木暮さんがそう言うと、

「そうよ、カッキーと行って来たらいいわよ。バイト頑張って」

とそう菊ちゃんが言った。


「え?いや、あの…」

 木暮さんは思い切り、照れてしまったが、みんなが木暮さんとカッキーさんをひやかしてしまい、もっと木暮さんは赤くなった。でも、カッキーさんは照れていなかった。


「菊ちゃんも2人で、行ってきたんですよね?」

 カッキーさんが菊ちゃんに聞いた。

「今回?2人きりじゃないわよ。他の大学の人も一緒だったし」

「そうか。2人じゃないんですね」

「まあ、部屋は一緒だったけどね?」

 菊ちゃんは、平然とそう答えた。でも、誰も部長と菊ちゃんをひやかす人はいなかった。

 

 この二人はすっかり、皆公認のカップルと言うか、まるで長年連れ添った夫婦みたいと言うか、落ち着いてるもんなあ。

「カッキー、本当に行って来たら?行きたがってたじゃない」

「バイト、頑張らないと。行けても来年かなあ」

 カッキーさんは菊ちゃんにそう言われ、ぼそっとつぶやいた。


「みんなで今年頑張って金ためて、来年行くか」

 誰かがそう言うと、みんなが「いいね」と言い出した。

「そんときは、俺らはもういないからな。サークルに顔を出せるのも今日までだから」

 部長がそう言った。

「あ、そうだった。もう就活ですよね?」

「もう始まってるからな」


 そうか。部長さんも菊ちゃんも4年生なのか。

「聖は?沖縄どうする?」

「俺?」

 聖君は木暮さんにそう聞かれ、一瞬黙り込んだ。


「う~~ん、来年はパス」

「なんで?」

「そんな金、たまらないかもしれないし」

「赤ちゃん育てるのって、金かかるのか」

 木暮さんがぽつりとそう言った。


 ドキン。そっか。聖君、行きたがっているのに、まだまだ行けないのか。

「そうだなあ。結婚式もあるしなあ」

 聖君はまたぽつりとそう言うと、周りが「え?いつ?」と、また騒ぎ出した。

「あ、まだ。具体的には」

「俺らは呼んでくれるの?」

「多分、式は身内だけだから」

「じゃ、2次会は?」


「ああ、2次会も考えてるから、そっちには」

「やった~~。盛り上がろうぜ。誰が司会する?部長?」

「俺、歌っちゃおうかな。これでも、カラオケ得意だよ」

 そんなことをみんなが勝手に言いだすと、聖君は、

「ああ、生のバンドも来ると思うから、カラオケじゃなくて歌えるよ」

とそんなことをぽつりと言った。


「生のバンド?すげえ。何それ?」

「っていっても、最近デビューしたばかりの、日の浅いバンドだけど、いい?」

「デ…ビュー?」

 みんながきょとんとして、静まり返った。

「うん。ウィストリアってバンド。絶対に俺らの式の2次会には来いって言ってあるから」


「きゃ~~。うっそ~~~!ウィストリアって、籐也のいるバンドでしょ?」

「カッキー、知ってるの?」

 聖君がカッキーさんのすごい声にびっくりしながら、聞き返した。

「知ってる。最近よくテレビ出てるよね。かっこいいもん。聖君の友達なの?」


「あ、あの籐也?私も知ってる」

 そう郁枝さんも、言葉を発したが、聖君と目が合って、ぱっと視線を下に向けた。

「籐也に惚れても、駄目だよ?カッキー」

 聖君はそう言いながらも、視線は郁枝さんのほうに向いている。

「なんで?」

 カッキーさんが聞き返した。


「だって、桃子ちゃんの親友が、籐也の彼女だからさ」

「え~~。そうなんだ。なんだ~~。がっかり」

 カッキーさんがそう言うと、木暮君が、

「おいおい、そんなにあきらさまにがっかりしないでくれよ」

と情けさなそうにそうつぶやいた。


 うん。ちょっと私も思ったんだ。カッキーさんって、木暮さんのこと本当に好きなのかな。

「じゃ、沖縄は無理か。聖は」

 木暮さんは気を取り直したように、聖君に向かって言うと、

「うん、悪い。そのうち、桃子ちゃんと凪を連れて、新婚旅行で行くよ」

と、またものすごい発言をしてくれた。


「新婚旅行~~?」

「そうか、そうだよな。結婚してるんだもんな」

「でも、式を挙げたらすぐに行くもんじゃないのか」

「く~~、いいなあ、お前。こんな可愛い子と結婚式だの、旅行だの…」

 ほら、みんなが騒ぎ出しちゃった。それもみんな勝手気ままに、言いたいことを言ってますけど…。


「じゃ、沖縄、来年行けるやつは?」

 木暮さんはまた、気を取り直したようにそう言うと、一気にみんなが静まり返り、

「そうだなあ。俺はバイク買いたいから、お金ないなあ」

「俺は車買うために今、金ためてるんだよね」

と、一人ずつ答え始めた。


「なんだよ、じゃ、結局誰も…」

 木暮さんがそう言おうとすると、いきなりカッキーさんが、

「木暮君は行けるんだよね?」

と聞いてきた。

「え?俺?もちろん。それまでにバイトで金ためて」


「なんだ。じゃ、私たちも2人で行こうよ」

「え?」

 カッキーさんの言葉で、木暮さんが真赤になった。

「なんだよ、じゃ、俺らが行ったら邪魔なんじゃん」

 ひゅーひゅー。


 またみんなが2人をひやかした。

「もう、うるさいなあ。外野は。いちいちひやかさないでいいよ」

 カッキーさんは、本当にうるさそうにそう言うと、隣にいた菊ちゃんになにやら話しかけ、みんなのひやかしをほっておいた。


「…クールだね」

 麦さんがそう言ってから、もっと小声で私に、

「カッキーね、あれでも、木暮君にすんごく甘えてるんだよ」

と教えてくれた。


「え?」

「2人でいると、べったべた。木暮君が一見、カッキーに惚れてるように見えて、実はカッキーのほうが惚れちゃってるかも」

 ええ?そうなの?


「そこ、聞えてるから!余計なこと言わないで、麦ちゃん」

「あれ?聞こえちゃってた?」

「もう~~~」

 あ!カッキーさんの顔、赤い。なんだ。なんだ~~~。

 ちゃんと木暮さんのこと好きなんだ。ちょっとほっとした。


 と思って、カッキーさんを見ていたら、その奥にいた郁枝さんと目が合ってしまった。

 うわ。暗い?郁枝さんの顔、死んでる?

 ああ、もしかして、私が現れたからかなあ。

 い、いや。私のほうが、聖君の奥さんなわけだし、堂々としてていいんだよね?でも…、なんだろう、この罪悪感みたいなやつ。


 ああ、ちょっと気が重くなってきた。

 聖君を見ると、なんだ。木暮さんや他の男子とふざけちゃってるや。ああいうところを見ると、高校生のころの聖君と変わりないかも。


 大学生の聖君は、普通に聖君だった。女性とはあまり話もしない。でも、仲のいい男の人とは、ああやってふざける。

 私がひっつくと、恥ずかしいからと言って離れる。高校の頃とあまり、変わってない。


 ちょとほっとしたような気もするけど、もうちょっと違う聖君も見てみたかったって、残念な気もする。でも、午後もある。まだいつも見れない聖君を見れるかもしれないな。

 


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