表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/134

第46話 どんな聖君も…

 スウ…。寝息を立てた聖君の横顔を見た。ああ、かっこいい。

 初めて会った時よりも、男らしくなったなあ。あの頃もかっこよかったけど、もっとかっこよくなっちゃった気がする。


 いいなあ。聖君の眉毛。なんにもしなくったって、形いいし。それからまつ毛、けっこう長いんだよね。下のまつ毛も長いの。

 鼻筋はすうっとしている。唇は…、ちょっと色っぽいかも。

 うず。キスしたくなってきちゃった。寝てるし…、しちゃおうかな。


 チュ。

「ん?」

 あれ?キスしたのわかっちゃったかな。

「う~~ん。でへへ」

 あ、夢見てるのか。でへへって、どんな夢?それにしても、今、にやけたけど、そんな顔も可愛いって思えるんだから、私ってやっぱり変態かも。


 ビト…。聖君に思い切り抱きついて目を閉じた。

 ああ…、聖君の匂い、安心するなあ……。


 だから、ラブレターをもらっても安心だ。

 安心…。


「先輩、ラブレター読んでくれましたか?」 

 あれ?ここどこ?大学?

「ああ、読んだよ」

 聖君?誰と一緒にいるの?


「聖先輩が結婚していても、関係ないです。私、聖先輩の全部が好きなんです」

 え?全部?でも、全部を知ってるわけないじゃん!

「じゃあ、たとえば俺のどこが好き?」

 なんでそんなこと、聖君聞いてるの?


「えっと~~、眉毛の形や、まつ毛や、鼻、それから色っぽい唇」

 え?!!!

「ふうん、あとは?」

「筋肉質な腕や、意外と厚い胸板。それに髪をかきあげる時の手も色っぽくて好きです」


 なんで、そんなことを知ってるの?なんで?なんで?なんで?

「それだけ?」

「いいえ。時々見せる最高の笑顔も大好きです」

「へえ、そんなに俺のこと好きなんだ」


 やめて!聖君もそんなこと言わないで!

「はい、全部好きです」

 あ!聖君の胸に抱きついちゃ駄目!駄目ったら駄目!

「じゃあさ、俺がスケベでも、にやけていても、甘えん坊でも好き?」


 え~~~!そんなことなんで聞いちゃうの?それに、その子から早く離れてよ~~~!

「え?」

「駄々っ子で、意地悪で、笑い上戸で、医者嫌いで、血とか見たらすぐに卒倒するけど、そんな俺でも好き?」

 聖君。なんでそんなことをその子に言うの?


 あれ?

 なんか、相手の子、ひいてない?

「そんなかっこ悪い聖先輩は嫌です」

 へ?


「かっこいい先輩が好きになったんです」

「俺、かっこ悪いところもいっぱいあるけど?」

「嫌です~~~!!」

 あ…。

 嫌ですと言いながら、思い切り去って行っちゃった。


「…」

 なんだ。あの子…。どんな聖君だって、可愛いしかっこいいし、素敵なのに。

「ね?」

 え?いきなり、聖君が抱きしめてきた。いつ、私のところに来てたの?


「だから、俺、言ったでしょ?かっこ悪い俺を好きなのって、桃子ちゃんぐらいだよ」

「…」

「そんな変態、他にいないから」

「うん」


「桃子ちゃんは、どんな俺でも好き?」

「うん。大好き」

「にやけてても?」

「うん、にやけてても可愛いもん」


「すけべでも?」

「うん、すけべでも可愛いもん」

「情けなくても?」

「うん、情けなくても可愛いよ。どんな聖君も大好き!」

 ギュウ。聖君を思い切り抱きしめた。


「グエッ」

 グエ?

「く、苦しい。桃子ちゃん、苦しい」

 パチ。

 あ!


 目の前で私にギュウって抱きしめられ、苦しがっている聖君がいる。

「ごめん…」

 思い切り抱きつきすぎたかな。あれ?でもなんでここ部屋?なんで布団の中?

「もう、なんの夢見てたんだよ」

 夢?あ、夢だったのか。


「まあ、想像はつくけど」

 聖君はじっと私を見てそう言ってきた。

「え?な、なんで?私、寝言言ってた?」

「言ってた。普通に話すから、寝言だって一瞬わかんないよね、いつも」

「ど、どんな寝言だった?」


「…え?」

 あ、聖君の顔、赤くなった。

「どんな寝言?」

 私、夢の中でなんて聖君に言ってたっけ?


「にやけても、すけべでも、情けなくても、どんな俺も可愛くて大好きって…。で、思い切り抱きしめてきた」

「ええ?」

 きゃ~~。夢の中とはいえ、寝言とはいえ、なんだか恥ずかしい。

「夢の中でも桃子ちゃん、俺にベタ惚れなんだね」


「う、うん」

「あ、でも成長したね」

「何が?」

「夢が」


「?」

「前は片思いしていじけてたり、苦しんだりしてる夢見てたじゃん」

 そうだった。そういえば。

「もしかして、夢の中で俺に抱きついてた?」

「うん」


「それ、やっぱり布団の中で、裸だった?」

「ち、違うよ。そんなシチュエーションじゃないもん」

「ほんと?」

「ほ、本当」

「俺のこと襲ったりしてない?」


「してないよ~~」

「な~~んだ」

 もう、聖君、なんで残念がってるの?

「思い切り抱きしめてきたから、俺のこと襲ってるのかと思った」


「ち、ち、違うってば」

「あはは」

 もうなんで、爽やかに笑ってるの?

「寝込み、襲ってきてもいいからね?」


「襲わないってば」

「俺、いつでもOKだからね?」

「だから、襲わないってば」

「桃子ちゃんから、迫ってきたもいいからね?」

「しつこいよ、もう~~~」


「桃子ちゅわん」

 聖君から抱きついてきたぞ?

「なあに?」

「俺も夢見てた」

「どんな?」


「でへへ」

 あ、さっき確か、寝ながら聖君、でへへって言ってたっけ。

「桃子ちゃんに襲われる夢」

 え?!

「あんなの、現実にも起きたらいいよな~~」


 ええっ?

「ど、どんな夢?」

「だから桃子ちゃんから迫ってくる夢」

「ど、どんなふうに?」

「……。きゃ、言えない」


 もう~~~~!なんでそこで、はじらっちゃうの?時々聖君はこうやって、私をからかって遊ぶからなあ。

「いいよ、じゃあ、教えてくれなくても」

「え?聞きたくない?」

 やっぱり、わざと恥らって見せたのね。

「恥ずかしいことなら聞きたくない」

「……桃子ちゃんがね?」

「いいよ、教えてくれないで」


 本当に恥ずかしくなってきた。

「俺が駄目だって言ってんのに、服を脱がせるんだ」

 で~~~?!

「そ、そんなことしないよ、私っ」


「で、俺が桃子ちゃん、今日は無理だよって言ってるのに、聖君の唇が色っぽいって言ったりして」

 え?!

 ドキ~~、そ、それは思ってたけど。

「それで、キスしてくるんだ」

 はっ!もしや、さっき、寝ている聖君にキスした時だったりして。


「俺、そのキスでとろけちゃって」

「へ?」

「結局、桃子ちゃんに襲われちゃうんだ」

 ま、待って待って。なんで私が襲うことになってるの?そのパターンは、いつも立場が逆!


「そんなのも、いいなって夢の中で思っちゃった」

 え?

「いつも俺から、誘ってるけどさ。たまには、桃子ちゃんから誘ってくれてもいいのに」

 ええ?

「あ、そうか!俺がいつも先に誘っちゃうからか!」


 う…。

「今度、思い切りじらしたらいいのか」

「そ、そんなことされても、私からなんて絶対に誘えないから」

「なんで?」


「…前に、聖君が凪ばっかり可愛がっていた時だって、私、寂しかったけど、誘ったりできなかったし」

「……」

 聖君は私の顔を思いっきり覗き込んだ。

「な、なあに?」


「誘いたかった?」

「え?」

「俺のこと襲いたかった?」

「ち、違うよ。ただ…、こっちを見てほしかっただけで」


「…やべ!」

 何が?

「も、桃子ちゃん」

「なあに?」


「可愛すぎ」

 え?

「今、思い切り、射抜かれた」

 へ?

「可愛い~~~~!ムギュウ」

 うわ。思い切り抱きしめてきた。


「な、なんでそうなるの?」

「なんでって、だって、桃子ちゃん、可愛いから!」

 ええ?

「もう、これだから俺、あれなんだよな」

 ?


「桃子ちゃんのこと、襲いたくなるんだよな。しょうがないよな。桃子ちゃんから襲って来るの待ってる前に、俺から襲っちゃうのも」

「…でも、今は駄目だよ?」

「うん。大丈夫。さっき、思い切り愛しちゃったから、そんなにムラッてこないから」

「…」

 ムラって、何?ムラって。もう、やっぱりスケベ親父だ。


「桃子ちゃん、愛してるよ」

「うん」

「桃子ちゃんは?」

「私も愛してるよ」

「ほんと?」


「うん。大好き」

「でへへ」

 あ~~~。また聖君がにやけた。でも、可愛い~~~~。

 スウ…。

 スウ?聖君の寝息?もう寝ちゃった?


 と思ったら、後ろから聞こえた凪の寝息だった。

「スウ、スウ…」

「凪、良く寝てるね」

 私がそう言うと、聖君は上半身を起こして凪を見た。


「うん、寝てる。桃子ちゃんと同じ、可愛い寝顔で。ほんと似てるよね」

「そうかな」

「桃子ちゃんも、赤ちゃんみたいな寝顔なんだもん。めちゃ可愛い」

「…」

 て、照れる。


「桃子ちゅわん」

 あ、また抱きついてきた。

「可愛い」

「聖君だって、可愛いよ」

「うん。夢の中で言っちゃうくらい、俺のこと好きなんだもんね?」


「う、うん」

 恥ずかしいな。それ。

 それに…、実はその前に女の子が、聖君に抱きついていたりもしたんだけど、それは内緒にしておこうかな。きっと呆れられちゃうよね。


 私は聖君に抱きしめられながら、いつの間にかまた眠っていたようだ。


 朝、起きてからふと思った。

 大学生の聖君を生で見たい。大学ではどんななの?

 見たい。うず…。なんだか、絶対に見たくなってきた。


 なんとか、大学に行く用事はないものかなあ。

「聖君」

「ん?」

「もうサークル活動してる?」

 私は、おっぱいを凪に飲ませながら聖君に聞いてみた。


「うん、してるよ。なんで?」

 聖君はパンツを履いて、Tシャツの袖に手を通すところだった。

「大学生以外も、サークルって入れるんだっけ?」

「…入りたいの?」


「ううん。見学とかもできるのかなって思って」

「え?サークルの見学?」

「うん」

「う~~ん、できるけど、でも、大学でのサークル活動はたいして面白くないよ?」

「そうなの?」


「あ!そうだ。部長が春休みに沖縄の海潜ってきたんだって。その時撮ったビデオを今日見せるって言ってた。来る?」

「え?」

「見に来る?それだったら、面白いかもよ?」

「見に行っていいの?いきなり」


「ああ、いいよ。部長も菊ちゃんも大歓迎だと思うけどな」

「…ほんと?」

「うん。麦ちゃんも来るって言ってたし。桃子ちゃん、麦ちゃんにも会ってないよね?きっと向こうは会いたがってると思うよ」


「麦さんが?」

「うん。桃子ちゃんのこと大好きみたいだから」

 え?」

「多分、今は俺のことより、桃子ちゃんが好きなんじゃないの?」 

「まさか~~」


「そうかな?私が男だったら、絶対に桃子ちゃんを彼女にするって、この前言ってたけど」

「え~~?」

「そうしたら、俺はライバルだねって笑ってた…。あれ?でもなんか、まじで桃子ちゃんを好きなわけじゃないよね?」


「まさか~~」

「でも、桐太のこともあるし」

「ま、まさか~~~」

「あそこのカップルちょっと変だし」


「…え?どんなふうに?」

「それより、もう凪、おっぱい飲み終わってるよ?」

「あ」

 いけない、慌てて私は凪を布団に寝かせた。それからブラジャーをしようとすると、

「全部、凪、飲んじゃった?残ってない?」

と聖君が私の横に座って聞いてきた。


「うん。多分。…なんで?」

「俺の分残ってない?」

「…え?」

「……」

「な、なななに?」

 なんで胸をじいっと見てるの?


「う~~ん、凪のよだれつきかあ。そのあとにしゃぶりつくのもな」

「え?!」

「やっぱり、俺は夜だけにするかなあ」

 何を~~?!


「じゃ、俺、先に下に行ってるね」

 聖君はにっこりと爽やかに言うと、颯爽と部屋を出て行った。

「…も、もう。本当にスケベ親父のくせして、爽やかなんだからっ!」

 そんなことをぶつくさ言ってると、凪が私を見て、

「あ~~~、う~~~」

と話してきた。


「…凪、パパがスケベだってことは、やっぱりみんなには内緒にね?」

「あ~~~~~」

 にっこりと笑ったぞ。まさか、言ってることわかっていたりする?まさかね。


 それにしても。そうか。聖君の大学生姿、生で見れちゃうんだ。やった~~!!!

 あ!ってことは、ラブレターを書いた人にも、会っちゃうってこと?

 そ、それはなんだか、かなりドキドキだったりして。


「凪も、大学行く?」

「う~~~」

「パパの大学生姿、見たい?」

「あ~~~~」

 見たいのかな?凪も連れて行っていいのかなあ。

 

 でも、キャンパスを2人で歩いてみるのも、なんだかいいかも。なんて!

「ごめん、凪はおじいちゃんもおばあちゃんもいるんだし、家でお留守番しててね?」

「う、う~~~」

 あ、怒った?やっぱり、私の言ってること、理解してたりする?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ