花を枯らす
この作品は、オリジナル楽曲「あめ。 - 花を枯らす」をもとに書いた短編小説です。
歌詞に込めた感情や、その裏側にある物語を少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
花には花言葉というものがある。
希望。幸福。永遠の愛。祝福。
誰かが勝手に意味を与え、誰かがそれを信じている。
花が何を思って咲いているのかなんて、誰にも分からない。
そもそも、花に意味など必要なのだろうか。
それでも人は花を贈る。
大切な人の幸せや、明るい未来、いつか報われる日を願って。
そうやって、救われた気になっている。
馬鹿らしいよな。
僕は昔、希望を信じていた。
何かを頑張れば報われる。苦しいことにも意味がある。いつか笑える日が来る。
そう信じていた。
誰かの言葉も、自分の可能性も信じようとした。
けれど、何も変わらなかった。
頑張っても報われるとは限らない。正しく生きても幸せになれるわけじゃない。
そんな当たり前のことを知るまでに、随分と時間がかかった。
残ったのは、煩わしい涙だけだった。
何度も泣いて、考えて、自分を責めた。
どうして自分だけ。何がいけなかった。何を間違えた。
考えれば考えるほど、涙さえ出なくなった。
いつからだろう。
誰かの幸せを素直に喜べなくなったのは。
誰かが夢を語るたび、心のどこかが冷たくなるようになったのは。
「きっと大丈夫」
そんな言葉を聞くたびに、吐き気がした。
何を根拠に大丈夫だと言えるのだろう。
その言葉で救われなかった人間がいることを、どうして考えないのだろう。
それでも世界は、今日も希望を語っている。
綺麗な言葉を並べて、誰かの明日を祝福している。
僕には、それがひどく残酷に見えた。
だから、誰かがその花を咲かし続けるのなら、僕はその花を枯らし続けてやる。
世界が君を肯定しても、僕が君を否定する。
花言葉なんて忘れてしまえ。
希望なんて捨ててしまえ。
誰かが決めた幸福を、自分の人生の答えにするな。
そんなものに縋らず、自分で考えろ。
自分で選べ。
自分の足で立て。
僕には、それができなかった。
だからせめて、誰かには同じ道を歩んでほしくない。
そんなことを考える自分が、また嫌いになった。
窓辺に置かれた花は、いつの間にか枯れていた。
水を与えなかったからだろう。
花びらは落ち、茎は細く折れ曲がり、かつての色はもう残っていない。
僕はそれを眺めていた。
枯れてしまえば、もう希望など必要ない。
そう思った。
けれど、花瓶を片付けることはできなかった。
枯れた花を見つめながら、僕は何度も同じことを考える。
こんなことを願ってしまう自分を、僕は最後まで認められなかった。
「もし、もう一度だけ咲くことができたなら。」
さいごまで読んでいただき、ありがとうございます。
この物語の元になった楽曲「花を枯らす」は、YouTubeにて公開しています。
文章とはまた違った形で、この物語の感情を感じてもらえたら嬉しいです。
▼YouTube
(楽曲URL)
https://youtu.be/c2MYzpeeFoQ?si=DqP39v5jAYbJi0MU




