第8話 期限
妊娠検査薬をした翌日に、いやになるぐらいに大量の生理がきた。生理がくるということは妊娠に必要なものが不要になり体外に流れていくこと。トイレの便座に腰をおろしながら、汚れたパンツを見て、どうしようしんどって思った。
トイレからお母さんを呼ぶ。しばらくしたらやってきた。ドアを閉めたままわたしは話す。
「生理きたから、パンツ新しいの取ってきてくれへん?」
履き替えて、ナプキンを当てる。トイレから出ると、お母さんがいて料理をしていた。
「洗っとくから洗面台置いといて」
「ありがとう」
わたしは簡単にゆすいでから、洗面所に置く。はあ、1週間ぐらいえっちできひんやん。でもチャットなら大丈夫か。今日は朝から授業があったのに、なんかだるいなって思って休んだら生理がきたのだ。昼からの授業に出ようと思ったけど、それもパスした。
お母さんは料理をしながら、よくラジオを流している。ラジオからはほどよいバラード調のメロディーが流れている。そして一気にロックに変わる。
「だれこれ? めっちゃかっこいいやん!」
「あんた知らんの? ラーやん。まあ、アイドルちゃうからなあ」
「ラー?」
「高校生バンドやん」
「へー」
「イケメンみたいやで。テレビには出てないみたいやけど、DJのひとがえらい騒いではったから」
バンドかあ。わたしはもっぱらアイドルが好きで、ライブにも行きたくてファンクラブに入るぐらいだ。そんなわたしでもかっこいいと思った。ラーか、あとで検索してみようかな、と思いながら食卓に座る。今日は、肉じゃがのようだ。
「そうそう、実はあんたの卒業辺りにさ、また地元に戻ろうかって話になってんねん」
「え? なに?」
じゃがいもを箸でつまんだまま、わたしは手が止まる。
「お父さんの会社から転勤お願いされてて。だけどさ、あんた置いていかれへんやん。まあ、単身赴任もいいかもしれへんけど。だけど、こんな田舎よりもあっちの方が仕事もあるやろ? ちょっと就活も大変やろうけど、どうかなって思ってて」
わたしは頭が真っ白になる。じゃあ、ほんまに結婚しやな離れ離れになるってこと? しかも卒業って来年やん。
大学の飲み会サークルで出会った、チャラい奴を思い出す。顔はまあ悪くはない分類。飲み会終わりに、えっちを誘われた。だけど、イケるんじゃない? わたしはケータイでメールを送る。名前は恵吾。学部は違うし、年下の彼女もいる。後腐れなくできるかも。排卵期を狙って、会おう。




