第3話 同じ地元
退院してもリハビリ生活の毎日だったようだ。病院から出てくる姿をたまに街で見かけたけれど、まるでここにいないみたいに別人のようになっていた。頬はこけて、ずっと俯き気味。
わたしはバイトへ向かう途中だった。夫の後ろに近づく。信号で並んで止まった。
「類斗くん?」
「こんにちは」
たぶん初めて、会話したけど優しいおっとりとした話し方に驚く。
「福本さんの姪っ子さんですよね?」
なに、このひと。こんなしんどそうなのに、気つかってんの? こんなわたしに。優しく微笑んでくれる。
「この度は本当に申し訳ありませんでした。ご迷惑をおかけしてしまいました」
綺麗に頭をさげる。パーカーのフードが前にバサって落ちる。
「なになに! そんなんやめてーや。わたしはなんも……」
「バイトに入ってもらってるって聞きました。ぼくはほんまにあほです」
「いやいや、そんなことよりさ、言葉が見つからへんわ。大変なおもいしたね」
「いやいや、自分がいけないんす。でも、でもあの子が生きてるから、ぼくはいいんです」
「車に轢かれそうになった子?」
「はい、自分でも驚きました。やば俺轢かれるってなったときに、よかった俺でって。守れたって思ったんです」
「そんな……お母さんびっくりしたんちゃう?」
「まあ、あほやなって。笑ってました」
それから短い沈黙になる。そういえば、類斗くんも地元がここじゃないと聞いたことがある。わたしも生まれて中学生までは、ここに住んでいなかった。親の仕事の都合で引っ越してきたのだ。
「そういえば類斗くんってO県のなに市出身なん?」
「ぼくは、A市ですけど。どこですか?」
「え、ほんまに? わたしA市の第一中学やったで」
「えーほんまですか。ぼくは三中です、まじすか」
それから地元トークに花が咲いて、気づくと30分ほどたっていた。わたしは慌てて居酒屋に向かう。類斗くんは申し訳なさそうにしていた。
なんだ、もっと話しずらい子なのかと思ってたのに、そんなことないやん。しかも地元一緒とかやばい。こんなチャンスないわ。弱ってる今しかない。このままわたしと同じ土俵でいてほしい。
絶対に彼氏にする! あんなイケメンで性格いいってもう自慢じゃん! って、でもどうやって? まあ、とにかく可愛くなるんや! わたしは気合い十分で居酒屋の仕事をこなす。バイト代で化粧品を買おう。あ、マツエクとかしてみたいかも。聞いてみよ、友達に。




