第1話 仲良し夫婦
私の夫、類斗からラインが届いたのは少し前のことだった。子供の明斗をあやして、なんとか夕食の準備をしている時だ。まだ泣きやまない明斗を見てちょっとイラっとしていた。出産してからイライラがすぐに頭までのぼってくる。冷蔵庫に入れておいたケーキを箱ごと出して、台所で食べる。油っぽい安物のクリームの味がした。スーパーで20%オフだった。
昨日は幼馴染の奏也くんたちと飲みに行き、その後カラオケに行って、ごめんだけど朝までなるわってラインが夜中にきて、わたしはそれをホーム画面で確認して画面を閉じた。だけど、昼過ぎても戻ってこなくて「ごめん、奏也の家で寝てた。昼飯食ってのんびりしてから帰るわ」って連絡も入っていた。
1歳過ぎて、ようやくリズムが出来てきたけど、夜中に泣くこともある。なにやっても泣き止まない時は、気が狂いそうになる。イライラするわたしを見て、類斗がそっと代わってくれる。類斗は抱っこもあやすのも上手だ。類斗の兄の透くんの子供の世話もしているからかもしれない。いつでも冷静で、落ち着いていて、大人っぽくて。すごく優しくて。だけどたまに……呼びかけてもここにいないみたいな時がある。
家事も育児もわたしよりできる。そんな夫だから、たまには友達と遊んだり羽を伸ばして欲しいと思っていた。そんな風に夫を想いやる妻こそ出来る妻なんだから。類斗にはずっと好かれていたい。妻っていうよりも女として見ていて欲しい。だから家にいる時も化粧に抜かりない。化粧水も高いものつけてる。
わたしに一途すぎるぐらい一途で、たまに怖くなるぐらいだ。出会った時から、ずっとわたしだけを見てくれていた。
友達にも自慢するぐらいだし、友達からも羨ましがられる。よくグループでも遊んでいる。奏也くんとのサッカーチームの試合も見に行って、飲みにも行った。家族ぐるみで遊んでいるひとたちもいる。
絶対の絶対に類斗だけは手放さない。そして、子供の明斗も。だからわたしは明るくてちょっとおっちょこちょいのママじゃないと。完璧なピリピリのママはだめ。
保育園が決まったので、今年の4月から働くのだ。ワーママってなんか、かっこいいし。電動ママチャリも新調したし、園で必要な道具は家族で仲良く買いに行った。
それを保育園の冊子を見ながら「これでいいんかな?」「名前書いて」なんて類斗やり取りしながら、たまに明斗に邪魔されながら準備を進めた。裁縫もできる夫は完璧すぎる、たまに幸せで怖くなる。
幸せな、愛されママは、夫ともラブラブなはず。それなのに、類斗とエッチは久しくしてない。まあ、出産したら母親に見えるようになるっていうのも聞いたことあるし、気にしないふりを続けている。だけど、時間があれば明斗の世話もやめて、「レス夫婦原因」って検索している。




