第8話:永禄十二年(1569年)―― 九州の「十字架」と「鬼」
日本の中央部が聡明の「幕府DX」によって急速に平和になっていく中、九州は依然として火種が燻っていた。 特に、キリシタン大名として海外と独自のパイプを持つ大友宗麟と、圧倒的な戦闘力を誇る島津四兄弟。
聡明は、千代姫と「お守り役」の謙信を連れて、完成したばかりの超弩級蒸気鉄甲船『将軍丸』で九州へと向かう。
1. 大友宗麟と「宗教チート」の衝突
豊後(大分)に到着した聡明を迎えたのは、最新の南蛮文化に染まった大友宗麟だった。
「聡明殿、わざわざ京からご苦労。だが、我が家にはデウスの加護と、南蛮から仕入れた『国崩し』がある。幕府の軍門に降る必要など……」
ドォォォォォン!!
宗麟が言い終わる前に、遥か沖合の『将軍丸』から、聡明が設計した「46センチ三連装砲」が試射された。放たれた砲弾は、大友軍が自慢していた旧式の「国崩し」をピンポイントで粉砕する。
「……上様、あ、いや、聡明殿。今のはデウスの奇跡でしょうか?」
「いえ、計算された弾道学です。宗麟公、海外との貿易を独占したいなら、幕府の**『通商産業大臣』**になってくれませんか? あなたのキリスト教ネットワーク、世界進出に必要なんです」
「大臣……? よく分かりませぬが、その凄まじい大砲、ぜひ我が軍にも!」
こうして、物欲と好奇心の強い宗麟は、あっさりと「幕府貿易部」に就職が決まった。
2. 島津の「釣り野伏せ」vs「衛星(気球)偵察」
最大の問題は、薩摩の島津家だった。 島津義久・義弘ら兄弟は、幕府の使者に対しても「戦って勝った方が正義」と、一歩も引かない。
「島津に退き口なし! 釣り野伏せで、神童とやらを地獄へ送ってくれるわ!」
島津軍は山間に伏兵を配し、聡明の軍を誘い込もうとする。本来なら多くの名将が嵌まったこの戦術だが、聡明には通用しない。
「千代、気球の準備はいい?」 「はい、さとあきさま! 上空から丸見えだよ!」
聡明は、熱気球を打ち上げ、上空から島津の伏兵の位置をリアルタイムで把握。さらに、千代姫が無線(もどき。鏡の反射信号)で地上部隊に指示を送る。
「右の茂みに三千。左の崖上に五百。……謙信さん、お願いします」
「承知。……『毘沙門天・神速の理(物理)』、見せてあげましょう」
謙信が率いる、全身に軽量チタン合金の鎧を纏った「越後特殊騎馬隊」が、伏兵の裏をかく。 島津義弘は、自慢の伏兵が次々と背後から無力化されるのを見て、絶句した。
「……これが、天の目か。釣り野伏せが、釣る前に網を張られておる……」
3. 島津、幕府の「最強の盾」へ
捕らえられた島津義弘の前に、聡明は歩み寄った。
「義弘公。あなたの勇猛さは、国内で浪費するには惜しすぎる。幕府はこれから、琉球を経由して世界へ進出します。島津家には、その**『幕府海兵隊・司令官』**を任せたい」
「……海兵隊? 異国と戦えるのか?」
「ええ。世界にはもっと広い海と、まだ見ぬ強敵がいます。島津の『捨て奸』、世界相手に試してみませんか?」
「……ハッハッハ! 面白い! その大仕事、島津が引き受けた!」
4. 千代姫の嫉妬は、海を越える
九州平定のお祝いとして、聡明は千代姫に、現地の真珠で作った特製のネックレスを贈った。
「さとあきさま……素敵。でも、大友のところにいた南蛮の女の人たち、みんなさとあきさまのこと熱い目で見てたわよね?」
「えっ、そうだったかな?」
「謙信さんも『海の夜は冷えますね、聡明殿……』とか言って部屋に来ようとしてたし! もう、日本中を平定したら、ライバルが増えすぎてちよの身が持たないわ!」
千代姫は、聡明の首をギュッと絞めるように抱きついた。 その様子を、横で見ていた島津義弘が笑う。
「ガッハッハ! 聡明殿、天下を治めるより、嫁御を治めるほうが難儀そうですな!」
永禄十三年(1570年)
元号が「元亀」に変わる頃。 聡明の活躍により、日ノ本から「戦」の文字が消え、幕府による中央集権国家が完成した。 しかし、聡明の視線はすでに、海の向こうにある「世界」へと向いていた。




