第3話:ライバル襲来!千代姫の「正妻の座」が危ない?
聡明が六歳になった頃。 二条御所に、ある一家が訪れた。近江(滋賀県)の有力大名・六角家の重臣の娘であり、「京で一番の才女」と噂される六角 結衣である。
彼女は聡明と同じ六歳。しかし、その知能は大人顔負けで、周囲からは「神童の対抗馬」と目されていた。
「あなたが細川聡明様? 噂ほどの方には見えませんわね。ただの可愛い坊やではありませんか」
結衣は扇子で口元を隠し、高飛車に言い放った。 彼女の目的は、将軍・義輝から「聡明を自分の家の養子、あるいは婿養子に」という内諾を得ること。聡明のチート能力(未来知識)を、自分の家に取り込もうという政略的な動きだ。
「……えっと、誰? 六角さんのところの娘さん?」 「失礼な! 結衣と呼びなさい。私は、あなたに知恵比べを挑みに来たのですわ!」
1. 千代姫、戦闘モード突入
これに激怒したのが、隣で聡明の袖を掴んでいた千代姫だった。
「……さとあきさまを『ぼうや』って言った? それに、さとあきさまの隣は、ちよの場所なのに!」
千代の背後に、ゴゴゴ……と幻のオーラが立ち昇る。 将軍の娘としての威厳か、あるいは女の執念か。五歳児とは思えないプレッシャーに、周囲の侍たちが「ひいっ」と震え上がる。
「結衣、と言ったかしら。さとあきさまは、もうパパと『将来』のお約束をしてるの。あなたみたいな『後出し』はお断りよ!」
「お、お約束!? 証拠はあるんですの!?」
2. 異次元の知恵比べ
結衣は聡明に対し、当時最難関と言われた「和算(数学)」の問題を突きつけた。 「この複雑な図形の面積、あなたに解けますこと?」
聡明は一秒もかけずに答えた。 「あ、それ積分……いや、円周率を3.14として計算するとこうだね。あ、ついでに言うと、君の家の領地の年貢収支、この計算式を使えば30%は改善できるよ」
「な……!? なんですのその計算式!? 呪文ですの!?」
結衣のプライドは粉々に砕け散った。 しかし、才女のライバルはここからが本番である。
「……すごい。こんなに頭の良い殿方、初めて見ましたわ。決めました、結衣はあなたの二番目の妻(側室)でも構いませんわ!」
「ちょっと待ちなさいよ!! 二番目もダメ!!」
千代姫の叫びが御所に響き渡る。
3. 義輝おじさんの苦笑い
その様子を、壁の影から義輝と卜伝が眺めていた。
「……聡明のやつ、剣の修行より大変そうだな」 「はっはっは、上様。女の戦いには『一之太刀』も通用しませぬ。あれこそが真の乱世にございますな」
聡明本人は、 (……なんで計算の答えを教えただけなのに、修羅場になってるんだ? 早くガトリング砲の設計図の続きを書きたいんだけど) と、相変わらずの無自覚チートっぷりを発揮していた。




