6話 運命の出会い
工房の中には、様々な剣が並んでいた。
どれも一目で分かるほど質が高く、見れば見るほど「いい剣」ばかりだ。
「……腕がいいんだな」
「ふんっ、生意気な小僧じゃ」
ドワーフはそう言いながらも、口元をわずかに緩め、新聞を広げて自分の世界に戻る。
工房内には、ざっと四人ほどのドワーフ職人が作業を続けていた。
「おっちゃん、名前は?」
「ワシはリュウジン。この街一番の鍛冶職人じゃ」
「俺はイブ・リメン。こっちはリリィ・リメン」
一瞬迷ったが、リリィの存在を隠す理由はなかった。
この子は、俺の隣にいるべき存在だ。
背中を軽く叩くと、リリィは少し緊張した様子で、それでも元気よく頭を下げる。
「よろしくお願いします!」
リュウジンは、ひらひらと手を振って応えた。
さて……そろそろ、相棒探しといくか。
俺は、壁に掛けられた剣を一本ずつ手に取っていく。
耐久、重量、バランス。
どれも高水準だ。
だが。
「……違う」
どれもしっくりこない。
その時だった。
ゾクッ、と背筋を撫でる感覚。
「……なんだ?」
胸の奥が、微かにざわつく。
何かに“呼ばれている”――そんな感覚。
視線の先。
工房の奥に、ひとつだけ閉ざされた扉があった。
「……あっちだ」
リリィが不安そうに、俺の服を掴む。
「イブ……?」
「大丈夫。ちょっと見てくるだけだ」
俺はリュウジンに向き直る。
「なあ、その奥の部屋、見せてもらってもいいか?」
一瞬、リュウジンの目が見開かれる。
驚き、そして……警戒。
「……奥は失敗作置き場じゃ。売り物なんぞ、一振りも無い」
「それでもいい。どうしても、見たいんだ」
真っ直ぐに見つめると、リュウジンは数秒沈黙し、やがて深く息を吐いた。
「……分かった。好きにしな」
礼を言い、扉を開ける。
ひんやりとした空気。
埃の匂い。
その奥、壁際に。
「……あ」
自然と、足が止まった。
一本の剣。
埃にまみれ、装飾もない、くすんだ刃。
正直、見た目だけなら、ここにある武器の中で一番地味だ。
なのに。
胸の奥が、確かに騒いでいる。
「……これだ」
無意識に、手が伸びた。
その瞬間。
カチリ。
頭の奥で、何かが噛み合う音。
視界に、半透明のウィンドウが浮かび上がる。
【認証開始】
【個体識別:成功】
【適合率:測定不能】
【条件達成:封印解除・第一段階】
「……は?」
剣が、淡い青白い光を放ち始める。
炉の炎が揺らぎ。
金属音が止み。
工房全体が、静寂に包まれた。
「……な……」
背後で、リュウジンの息を呑む音。
「……嘘じゃろ……」
震える声。
「それは……王剣じゃ……」
「王剣?」
「王にのみ応える剣。
選ばれし者が触れねば、ただの鉄屑と変わらぬ存在……」
リュウジンは、ゆっくりと俺を見る。
「……お前、一体何者じゃ」
分からない。
俺自身、その答えを持っていなかった。
だが、一つだけ確かなことがある。
この世界は、俺を“特別”として認識し始めている。
「……これ、もらうよ。おいくら?」
「……ガッハッハ!」
リュウジンは、腹を抱えて豪快に笑った。
「そんな手入れもしておらん剣に、金など取れるか!
その剣が、お前を選んだんじゃ!」
「いいのか?」
「そのままじゃ使えん。研ぎ直してやる。代金はその分だけでええ」
――数十分後。
渡された剣は、牡丹の花が描かれた美しい鞘に収められていた。
「研磨代、300マルじゃ」
「……安くない?」
「言ったじゃろ。研磨代だけじゃ」
「……ありがとう」
リュウジンは、満足そうに頷いた。
「また来な。いつでも研いでやる」
2人でリュウジンに手を振り工房を後にした。
大分時間を食ってしまったけど,領主に会いに行くのは明日にするか?リリィの疲労も考えて。
「イブ! 剣も買えたし,りょうしゅ様に会いに行くんでしょ?」
「え……ああ…疲れてないか?」
「大丈夫! いこういこう!」
昨日ぐっすり寝たリリィはまるで一大イベントの様にウキウキとしていた。
「よし! じゃあ行こうか!」
俺たち2人は領主の元へと向かう。




