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come read・・・0006 通の足跡
その日、防波堤の端にひとつの人影があった。
「やっぱり来たんだ」
雪乃がつぶやいた。
彼の名は霜柳 通。
"もう一人の落し物拾い"と雪乃は呼んでいる。
通は波打ち際にしゃがみこんでひとつのスニーカーを拾い上げた。片方だけのそれは砂にまみれていたが、どこか大切にも見えた。
「通くん、それ・・・」
「十年前の弟の靴なんだ ここに置いてったんだよ、黙っていなくなったから・・・」
夏海はその声に耳を傾けた。
「ずっと探してた、でももう、見つからなくてもいいかなぁって、思ってたところなんだ・・・」
「なのに来たんですね」
「うん、夢見た 弟がこの防波堤を歩いている夢 だから、来たんだ、靴があった」
通の手は少し震えていた。雪乃は彼の肩にそっと手を置いて
「落とし物って、忘れたくないもの、忘れたいもの、どちらも混ざっているのよ」
夏海は雪乃と通が、なぜ,ここで落とし物を拾いを続けているのか、分かった気がした。
それは誰かのためであり、自分自身のためでもあった。
「私も誰かに会いに行こうかな・・・」
ぽつりと、つぶやいたその声は潮風に溶けていた。




