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come read・・・0005 潮騒の手紙

 「今日はこれを拾ったよ」


雪乃が差し出したのは波に濡れた封筒だった。

髪の端はフニャフニャになっていて、封は開いていた。


 「手紙?」

 「うん、中身もある」


 差し出された便せんにはゆるやかな筆跡で書かれた言葉が並んでいた。


 "あなたに会ってからの私の季節がかわりました でもきっともう会えない気がするから、この海に流します さよならを言う代わりに、ありがとうを"


夏海は、唇をぎゅっとした。

 「これ誰に届くはずだったんでしょうね」

 「届かないつもりで書いたんじゃないのかなぁ・・・」

雪乃は防波堤の先を指さした。


 「潮騒(しおさい)が読んでるよ、この手紙ちゃんと誰かの心に届く」

 「誰か、か・・・」


 「うん、例えば夏海ちゃんとか」

夏海は驚いた様子で雪乃を見た。


 「私?」

 「そう、『誰かに会えない』って思うたび、誰かは君の事を思い出しているかもしれんから」


 夏海の胸の奥に遠くの記憶が静かに針を刻んだ名前を呼べなかった誰か。送れなかったメッセージ、渡せなかった何か・・・。確かに掌の中にひとつの『想い』があった。


 「雪乃さんって、不思議な人ですね」

 「よく言われる」


二人は笑って防波堤の上、潮騒が彼女たちを包んでいた。








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