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come read・・・0004 栞と歩いた道
防波堤の道端に、古びた文庫本が落ちていた。
海風にさらされ、ぺーじ端は波のように膨らんでいる。
「今日は大物や・・・」
雪乃が笑うその手には濡れた本と一枚の"しおり"。
「これは?」
「本の間に挟まっていたこの手作りの押し花のしおり」
夏海は受け取って目を凝らした。
紫の小さな花が色あせながら形は保っている。
「きれい、誰かが大事にしていたんですね」
「きっと誰かと一緒に読んだ本だった、だろう」
しおりの端には、鉛筆で文字が、書かれてあった。
"ここまで一緒に読んだね、次はあたなと"
夏海は思わず息を呑んだ。
「これ・・・」
「たぶん、友達か、恋人か、家族かもしれないね・・・」
夏海の胸に過去の景色が浮かんだ。
かつて親友と一緒に図書館で、読み漁った本。
けれど転校の時、何も言えずに離れてしまった。
「・・・私も誰かと途中で終わったままの本があるかも」
「じゃ、今から続きを探せばいいじゃないの?」
雪乃はにっこり笑って、濡れた本の背を軽く撫でた。
「物語の続きって、自分で書いてもいいんだよ」
夏海は黙って頷いた。
防波堤の風がページを優しくめくっていく瞬間だった。




